はじめに


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 北海道・別海町の創価学会北海道研修道場内にあるフィールドを創価大学付属自然植物園、創価学園付属野鳥研究所のフィールドとして活用する設置構想が発表されたのは、1987年(昭和62年)8月のことであった。 次いで11月に鹿児島県・牧園町の創価学会九州研修道場内にも同主旨の研究所の設置が発表された。 さらに翌年(昭和63年)8月には沖縄児の八重山諸島・石垣島に創価学園野鳥植物研究所の設置も発表された。
 創立者池田先生の「環境問題は全人類的な課題」との提言や、「豊かな自然のリズムを維持し、増進することこそ永劫なる人類繁栄への最大の鍵」との言及を踏まえ、その具体化を目指すものであった。
 これらの構想が聖教新聞紙上に報道されるや、有識者の賛同とその反響は大きく、調査研究の一助にとの声も多数寄せられ、地元研究員の体制も整えられた。
 時あたかも1988年(昭和63年)釧路湿原が国立公園に指定され、翌1989年(平成元年)雑誌タイムが新年号で地球環境問題を特集した。 さらに同年7月のパリサミットでも環境問題が取り上げられ、9月の東京会議では日本の貢献に大きな期待が寄せられるなど、人々はようやく地球の環境破壊の深刻さに気づき始め、その事態を自分の目と頭で捕える様になってきた。
 そして創価大学ではさらに1990年(平成2年)3月、地球環境の保全に学術的貢献をとの主旨で、ブラジル・サンパウロに自然環境研究センターを開設する構想が発表された。 世界の動きに呼応して、地球環境問題に真っ向から取り組むネットワーク作りが大きく動き始めた。
 こうした動きの背景の一つとして、創立者池田先生が、既に10数年前から、ローマクラブのペッチェイ博士やロックフェラー研究所のルネ・デュボス博士等と地球環境の将来的課題を鋭く論じ合っている事実に思い致った時、私達は、池田先生の先見性とその取組みのダイナミックさに、感嘆の声を挙げたものである。
 私達準備委員会は、地元の方々の大きな助けを得ながら直ちに調査活動を開始した。 初めての調査では、両フィールドとも手付かずのまま原生の自然が残されていたことに驚いた。 別海でのエピソードだが、1978年(昭和53年)池田先生の別海訪問の折り、「これは素晴らしい。手をつけずにそのままにしておくべきだ。10年20年後にその意味が判る時がくるよ」と木の一本一本に名前をつけられた、との地元の方々のお話を伺って、「なるほど、これ程までの自然が残っていたのは……」と一同得心がいったものだった。
 これまで別海フィールドでは、植生調査を5回、野鳥調査を16回実施。 一方霧島フィールドでは、植生調査を2回、標本採集等を3回、野鳥調査を13回行った。 この報告書は、こうした3年間の調査結果をまとめたものである。 そこで明らかになった両フィールドの価値の大きさについては、後述の諸先生方の報告からおくみ取り頂ければ幸いである。
 別海・霧島両フィールドでの調査活動と並行して、創価学園では、構想発表の翌年(1988年)よりサマーセミナーを実施し、より良い自然教育の場としての利用の在り方を探り始めた。 既に今年で3回を数えるが、最も多感な青少年期に豊かな大自然の中で伸び伸びと人間性を陶冶することの必要性を実感するばかりである。 創価大学では、学生サークルの一つである蛍桜保存会などを中心に合宿等を行い、学術研究の場としての将来の在るべき姿とその取組みを模索している。 さらに昨年より生命科学研究所がスタートし、また、本年4月には工学部生物工学科が開設(予定)されるに及び、今後一段と地球環境への具体的な取組みが進展するものと期待している。
 調査が進むにしたがって、豊かさを求め続けてきた人類の在り方に対して、地球から逆に問いかけられているとの感を強くするばかりであった。 わずかに残されたこの豊かな原生の自然の価値が大きければ大きいほど、なんとしても後世に残し伝えたいというのが私達の率直な願いである。 両フィールドともに周辺における開発の波をどう防ぐかが絶対条件であることに変りはない。 その上で将来構想に係わる主な論点を示しておきたい。
  1. 両フィールドが原生の自然として価値をもつだけに、保護と活用の上から研究機関の設置を急ぐべきである。
  2. 保護を大前提とした上で、学術研究と自然数育の視点を踏まえ、有効に活用していくことが望しい。
  3. 教育的利用としては、地域に開いたものとして自然教育園構想が考えられる。 そのために、野鳥観察および植物観察のための自然観察路(Nature trails)や工夫した標識の設置を検討していかねばならない。
  4. 水源の保護と保全についての対策は急がねばならない。 特に別海の湿原は、環境汚染の緩衝地帯としての役割も大きく、タンチョウなどの野生動物保護のためにもこれ以上の乾燥化は避けたい。
  5. 人を入れない保護地区を指定し、可能な限り原生の自然をそのまま残すべきである。 生態系保護のためには人為的圧力は避けたい。従って管理道路も最小限とすべきである。
 これらの調査結果と私達の討議の報告が、学術研究そして自然教育に役立ち両フィールドの将来構想(保護と活用)への一助となればこれにすぎる喜びはない。
 最後に、この調査活動を実施するにあたり創立者池田先生の数々のご配慮には、衷心より感謝申し上げる次第である。 そして多数の関係諸機関の方々および特別研究員の方々のご協力があってこそ、この報告書をまとめることができたものと厚くお礼を申し上げる次第である。 特に別海フィールドでは、伊藤浩司、牛沢信人、三清二郎の各先生方、霧島フィールドでは、初島住彦、杉本正流、石井久夫の各先生方には、ご多忙の中を長期間にわたりお力添えをいただいた。 ここに深々の謝意を表する次第である。


1991年(平成3年)6月6日

創価大学付属自然植物園準備委員会委員長 土井 健司
創価学園付属野鳥研究所準備委員会委員長 松田 茂行

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