霧島フイールド内の鳥類の生息概要について

(財)日本野鳥の会 宮崎支部 石井 久夫

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 1989年5月から1990年6月までの1年間に亘って霧島フィールド(創価学会九州研修道場)の野鳥調査を実施したが、野鳥フィールドとしては申し分のない地域だということが第一の印象である。
 本フィールドは霧島屋久国立公園内に位置し、生態系としてはすべて霧島山系のそれと全く同じレベルである。
 標高700mから1100mで、牧園町の東部にあり、石坂川流域の原生林に囲まれている。面積は、2,145,000m2の規模で、森林の生態としては、低地でヤブツバキクラス《常緑広葉樹林》、高地でミズナラ−ブナクラス《夏緑広葉樹林》に属している。植生は高木層でアカガシ、シイ、アカマツ、亜高木層にヤブツバキ、ユズリハ、モチノキ、ハイノキ、低木層にアオキ、ヒサカキなどの耐陰性の常緑樹が多い。
 また草本類としてはシュンラン、エビネや常緑シダ類も特徴的でベニシダ、イノデなどが多数生育し、近くのえびの高原と環境的には全く同じ植生である。四季を通じて自然のすばらしい生物の営みが観察できる。

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ishii-1  春になるとミヤマキリシマがピンクの可憐な花をつけ、ススキが秋を描き、冬は霧氷の花が樹々を彩り白銀の世界を楽しませてくれる。
 野鳥にとっても、霧島フィールドは豊富な昆虫や木の実に支えられ、多数の留鳥や渡り鳥が見られ、絶好の生息場所となっている。フィールド内にはノリウツギが多く、いくつもの噴気があり温泉が自然に湧出している。またシカやイノシシなどの動物にもよく出逢うことがある。
 本フィールドは自然が一ぱいで、遠くに霧島の連山である韓国岳、新燃岳、高千穂の峰の火山群が眺望できるすばらしい環境である。  年間の観察をとおして感ずることは、鳥種よりも種毎の生息密度が非常に高いフィールドであるということである。
 また四季を通じて豊富な数の野鳥たちが森林内にその姿をみせ、原生林が昔のまま残っているので、採餌営巣にはたいへん良い環境となっている。
 周年生息しているものとして主なものは、ウグイス、ヒヨドリ、メジロ、カケス、ヤマドリ、カラ類、キツツキ類でその数も多く非常な賑わいをみせる。
ishii-2  霧島に春が訪れると、ウグイスの早春の歌がきこえ、フィールド内のあちこちからホウホケキョウのさえずりを耳にする。夏もたけなわになると一段とその美声に磨きがかかり、8月下旬までその声を楽しむことができる。高木の梢には濃いルリ色をした、オオルリの、玉をころがすような美声がきこえ、薄暗い潅木の繁みでは、渡ってきたばかりのキビタキの連続した心地よい歌がきかれる。
 フィールド内を流れる石坂川の渓流ではキャララ、キャララと白黒まだら模様のヤマセミが鳴きながら優雅な姿をみせてくれる。
 初夏になると、いまにもふり出しそうな鉛色の空模様の中で、キョロロー、キョロローと哀愁を帯びたアカショウビンの声がきこえてくる。夏鳥として日本に渡ってくる赤い鳥の代表格で、こんもりと繁った林に生息する。
 またこの頃はホトトギスやカツコウが託卵先を探してやかましく鳴きたてる。
 やがて秋ともなると訪れる野鳥が一変する。
 旅の途中のエゾヒタキが梢にとまり、近くにとんでくる昆虫類をねらい見事なフライングキャッチを披露するし、紅葉を迎えるとカケスがせわしく鳴きたてながらドングリ探しに夢中になる。林内の落葉をカサコソとならしながら、コシジロヤマドリが道を横切っていく。
ishii-3  川原では黒い色をしたカワガラスが水にもぐって水生昆虫を探し、岩の上ではルリビタキが小昆虫を追いまわす。フィールド内の建物附近の樹林にはカラ類の群が餌を求めてせわしげに通りすぎ、やがてくる春の営巣場所を探すことも忘れていない。近頃は沢山の巣箱が掛けてあるので住宅にはこと欠かないようだ。
 冬はときどき霧氷や白一色の雪におおわれることがあり、林道にキジやコシジロヤマドリが足跡を点々と残し、この時期のフィールドは意外と賑わいをみせる。夏の間ペアで暮していたカラ類が群れをつくりはじめる。
 フィフィ・・と連続した大きな声をきかせるゴジュウカラ、ツツピーツツピーのシジュウカラやヤマガラ、ジュリジュリッとなくエナガが主なもので、これに少しのコゲラが入り混群が形成され仲よく遊んでいる。
 樹林帯に行くと、このカラ類のほかにチョウネクタイのコガラやヒガラがまじり多士済々の感がしてくる。

 今回の調査では確認できなかったものの、沢山の野鳥の生息が予想され、確実視されるものをあげれば、ワシタカの類ではハチクマ、ハイタカ、チョウゲンボウ、クマタカで、特にクマタカはフィールド内に古い巣が残っており生息の可能性が高い。セキレイ類のハクセキレイ、レンジャク類、センダイムシクイ、キクイタダキ、旅鳥であるコサメビタキ、サメビタキ、そのほかカシラダカ、コムクドリ、クロジなど枚挙にいとまがなく、最終的には、100種ぐらいの野鳥が観察できるものと思っている。
 それに大木等も各所に点在するのでブッポウソウも観察できるのではと期待している。  限られた時間内での観察であったために、目にふれない野鳥もいただろうし、また完全に調査が終ったわけではないので、機会をふやして観察をすれば種類もふえるのではないかと思う。ちなみに霧島山系では約120種の観察記録があるので、本フィールドではそれを上回る観察記録ができるのではと考えている。
 1990年9月7日に、すぐ近くのえびの高原で、ホオジロに託卵されたカツコウの雛が巣立っていくのが観察された。本フィールドでも同じ環境条件だから必ず観察の機会があるものと確信している。
 特に今回観察をしたキバシリは、資料によると九州では非常に数が少なく稀産種とされており、南九州では初めての記録ではないかと思われる。通常冬に観察されることが多く、5月24日に確認したので繁殖の可能性もある。
 豊かな森林資源に恵まれ、野鳥の生息に適した環境をもつ霧島フィールドは、益々その存在価値が高まり、学園生の野鳥観察の南方拠点としてその役割が一層高まるものと思う。  人間を育む貴重な森林や原生林を、長く"緑の遺産"として後世へ残すことができるならば、このフィールドが「野鳥の楽園」となるのも夢ではない。


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