title

パチリ! 寸描
別海フィールドの四季

<聖教新聞北海道版 1989年4月7日〜8月11日 掲載> より引用 (写真を含む)

Bar

 野生の楽園、別海町尾岱沼は早春を迎えている。 今回から北海道研修道場を中心とした地域(別海フィールド)で出あった動植物を写真で紹介していきたい。


1.タンチョウ 2.オオハクチョウ 3.シマリス 4.アカゲラとコゲラ
5.ミズバショウ 6.エゾユキウサギ 7.エゾシカ 8.コムクドリ
9.淡水ガモ 10.キタキツネ 11.エゾゼンテイカ 12.カラマツソウ
13.カワセミ 14.アカアシシギ 15.コウリンタンポポ 16.ノゴマ
17.ヤナギラン

タンチョウ−鳴き合う夫婦
 野付半島は今、渡り鳥が“交差”する季節。 冬鳥のオオハクチョウが水面に浮かぶ傍らでヒバリが歌う。 そんな光景の中、海岸線を闊歩する5組のタンチョウの“夫婦”に巡りあった。 ちょうど配偶行動(交尾)から営巣に入る時期。 「クォー(雄)、カッカッ(雌)」。 天を仰ぐようにして盛んに鳴き合うタンチョウの声が辺り一面に広がる。
 きっと夏にはぬいぐるみのようにかわいいヒナ達にあえるに違いない。

メモ  昨年の生息調査で過去最高の485羽が確認された。 大正時代に絶滅寸前となったが、1952年、特別天然記念物に指定され、給餌等でほぼ順調に生息数が増加。 最近は湿原の開発等が進み、営巣地は飽和状態になりつつある。

タンチョウ

Top


オオハクチョウ−越冬を終えシベリアへ
オオハクチョウ  尾岱沼はオオハクチョウの絶好の観察ゾーンだ。 この冬も白鳥台や野付半島の湾内にオオハクチョウの“白い大群”が渡来し、観光客の目を楽しませていた。 純白の大きな体にあどけない顔。 そして、「コォー、コォー」とよく響く声で鳴きながら、懸命に羽ばたくその姿が“人気”の理由かも知れない。
 家族単位で飛行する場合は、親鳥が灰色の幼鳥をかばうようにして飛翔する。 その親子愛の姿は、見る人に深い感動を与える。 暖冬のためか、今年はいつもより早く故郷・シベリアへと旅立ち始めている。

メモ  全長約145cm、翼開長約240cmの大型の水鳥。 今シーズン、ガンカモ科の渡り鳥の飛来数が過去最高を記録。 日本に渡来したオオハクチョウは約25,000羽で、そのうち北海道では約4,000羽が観察された(環境庁調査)。

Top


シマリス−野鳥の餌台が指定席
 残雪がようやく消え、愛らしいシマリスがまた姿を見せ始めた。 長かった冬眠から目覚めたばかりで、おなかがすいているのだろう。 野鳥用の餌台に座り、ヒマワリの種を黙々とほおばっていた。
 昨年末、冬眠前にも餌台を占領しているシマリスにあった。 近くでハシブトガラスなどが怒ってもまったく気にしない様子。 餌台をすっかり自分の“指定席”と思い込んでいるようだ。

メモ  北海道には、エゾリス、シマリス、エゾモモンガの3種類のリス科の動物が生息する。 そのうちエゾリスは森林性で冬眠しないのに対し、シマリスは地下に巣をつくり、樹上、地上両方で活動する。 一方、エゾモモンガは最近、森林伐採等による生活環境の減少が心配されている。

シマリス

Top


アカゲラとコゲラ−キツツキが住む森
コゲラ

アカゲラ

 北海道研修道場(別海町尾岱沼)内では、四季折々に多様な野鳥に出あうことができる。
 なかでも鮮やかな赤、白、黒の衣装をまとった鳥がアカゲラ(写真下)だ。 このキツツキは時々、カラ類の数が少なくなった頃、餌台にやってきてヒマワリの種を食べている。 キョロキョロとたえず頭を動かす仕草は、なんとも周りに気兼ねをしているように感じられ、思わずほほえんでしまった。
 また、牧口森林公園もキツツキを観察できる地域。 昨夏、巣穴からピイピイとコアカゲラの雛が鳴く声を聞くことができたが、今年はコゲラ(写真上)が営巣の準備に余念がない。
 スズメ大のこのキツツキが巣穴を作るために樹幹をつつく音は、想像以上でその大きな反響音に驚かされた。

メモ  アカゲラの体長は約23.5cm。 コゲラは約15cmで日本のキツツキ科では最小。 キツツキ科の餌は昆虫が主で、枯れ木や老木が含まれる森でないと生活ができない。 また、昨年8月の野鳥調査では同じキツツキ科のアリスイも確認されている。

Top


ミズバショウ−“女王”の気品を漂わす
 北海道研修道場は今、春を告げる花々が姿を見せ始めている。 フキノトウをはじめ、薄紫色のエゾエンゴサク、黄色のエンコウソウ、セイヨウタンポポなどが可憐な花びらを披露している。
 なかでも研修道場の境界を流れる当幌川の流域では、いつもより半月以上も早くミズバショウの群落が咲き誇っている。
 静寂な湿地帯一面に広がる白色と黄色のコントラストの美。 見る人はその清楚な雰囲気に心が洗われるに違いない。 水面に映ったその姿に“女王”の気品が漂っているようだ。

メモ  花に見える白い部分は葉が変形した苞(ほう)で、花は黄色の棒のような部分。 苞の長さは握り拳大。 同じサトイモ科のザゼンソウも研修道場内で観察することができる。

ミズバショウ

Top


エゾユキウサギ−すっかり夏毛に衣替え
エゾユキウサギ  冬の北海道研修道場を訪ねると驚かされることがある。 白銀の世界に動物の足跡が無数に広がっているのに、昼間、足跡の主を見かけないから不思議だ。
 その動物の正体がこのエゾユキウサギである。 ピンと立った長い耳の後ろをよく見るとふちに白い模様が走っている。 このウサギの特徴の一つである。
 夜行性で警戒心が強く、人前に姿を現すことは珍しい、という。 が、人間になれてきたのだろうか。 今春、研修棟の側で、ピョンピョン跳ねたり、おいしそうに下草を食べる場面を見かけるようになった。 冬毛は純白だが、今はもうすっかり夏毛の茶灰色に衣替えを済ませている。

メモ  北海道にはナキウサギとエゾユキウサギの2種のウサギが生息する。 前者は日高山脈と大雪山系に生息し、後者は森林帯でポピュラー。 しかし、最近はキタキツネの増加にともない、エゾユキウサギの減少が指摘されている。

Top


エゾシカ−道場内にシカの通り道が
 広大な別海町の原野で車を走らせていると、時折、牧草地でのんびりと採食するエゾシカに出あうことがある。
 この写真も、夕暮れ時に北海道研修道場付近の牧場をゆっくりと移動するエゾシカたちの光景である。
 しかし、森林の中でのエゾシカの行動はそれと対照的で機敏だ。 研修道場内の原生林を分け入っていくと、“いま通ったばかり”と思われるエゾシカの足跡を発見する。
 エゾミヤコザサが密生する中を音を立てずに歩く妙技に思わず感心させられてしまう。
 間もなく出産期に入るエゾシカ。 研修道場にも子ジカ連れのファミリーが遊びに来るかもしれない。

メモ  エゾシカは近年、2度にわたり、絶滅の危機に瀕した。 最近は人里で目につくまでに個体数が増加。 だが、正確な生息数がはっきりしないうえ、大量密猟や列車との衝突事故など、未解決の問題が残されている。

エゾシカ

Top


コムクドリ−あどけない表情ふりまく
コムクドリ  別海フィールドは今、春まっ盛りを告げる野鳥たちでにぎわっている。 北海道研修道場内ではすでに夏鳥の“常連”であるカワラヒワやシメをはじめ、小柄な“名歌手”のミソサザイや、らせん状に樹幹を登るキバシリなどを見る。
 コムクドリも先月ごろから、こうしたフィールドの仲間たちの一員に。 白い頭に愛らしい目。 そのあどけない表情をふりまきながら遊ぶ様子は、いかにも楽しそう。
 研修道場の入り口近くの松の枝に止まり、気持ちよさそうに日光浴をしている場面が、この写真である。

メモ  コムクドリは夏鳥として日本に飛来し、北海道では低地の明るい林などで生息。 キュルキュルリとさえずる。 橙色のくちばしをもった、同じムクドリ科のムクドリも研修道場内で観察することができる。

Top


淡水ガモ−尾岱沼は水鳥の楽園
 明け方、北海道研修道場の境界を流れる当幌川をカヌーで下ると、太古のロマン漂う秘境に入り込んだ気がする。 淡い朝焼け。 水面に映った木々の影。 聞こえるのは野鳥のさえずりだけ。
 尾岱沼に近づくにつれ、楽しそうに泳ぐ水鳥の姿が目につく。 何気なく岸に上がると、その奥に広がる湿原一帯は水鳥の楽園だった。 北帰行に備えて羽を休めていた何千羽というカモが予期せぬ人間の出現に驚き、一斉に羽ばたいた。 写真はその一部でオナガガモ、ヒドリガモ、コガモ等の淡水ガモ達である。

メモ  ガンカモ科の多くはシベリアに帰るが、少数は北海道で繁殖。 先月下旬、くしばしが細く先がかぎ形に曲がっているのが特徴のカワアイサ(アイサ類)の親子が当幌川で確認されたほか、道場内の池にはマガモ等が飛来している。

淡水ガモ

Top


キタキツネ−兄弟が仲良く遊ぶ
キタキツネ  別海フィールドは今、野生動物の繁殖期を迎えている。 キタキツネも今年、北海道研修道場内で繁殖し、3匹の子ギツネが巣穴のそばで楽しそうに飛び回っている。
 あくびをしたり、背中を伸ばしたり、じゃれあったり。 人間の気配を感じると時折、困った表情でお座りをする。 その愛らしいしぐさは、この動物がイヌ科であることを納得させるのに十分だ。
 この時期、親ギツネは毛並みをボロボロにしながら、子育てに専念する。 この兄弟はあまり手が掛からなくなったのか、親が姿を見せるのは食事の時くらい。 だが、常に子供の安否を案じており、危険を感じたら鋭い警戒の声を発する。 そんな親の苦労を知らずに子ギツネ達はとにかく遊ぶことに夢中だ。

メモ  キタキツネは本来、森林と草原の接点である林縁部で生息する。 最近は農村地帯や都市近郊まで生活圏が拡大しているため、森林の開発がキタキツネの個体数の急増に結びついていると指摘されている。

Top


エゾゼンテイカ−原野に際立つ橙黄色の花
 オホーツク海高気圧の影響を受ける別海フィールドは、夏でも摂氏10度に満たない日が続く。 四季を通じ、寒冷な気候が続く厳しい自然環境に耐えてきた様々な植物が、今、短い新緑の季節を惜しむかのように、かれんな花弁を次々と披露している。
 なかでも、ひと際、彩りを添えているのがこのエゾゼンテイカだ。
 北海道研修道場内を散策すると、湿原と森林部の隣接地域でよく、この花を目にする。 林床に密生するエゾミヤコザサや湿地帯のヨシ原の中にあって、あまりにも鮮やかな橙黄色の花を満開にしている。 その孤高を誇る姿に思わず胸を打たれてしまう。

メモ  別名はエゾカンゾウ。 草たけは60〜80cm。 現在、道場内では同じユリ科のクロユリ、エゾスカシユリ、スズラン、オオアマドコロ、オオバナノエンレイソウ等が咲き乱れている。

エゾゼンテイカ

Top


カラマツソウ−森林内に咲く“白い花火”
カラマツソウ  別海フィールド内に広がる落葉広葉樹の森林を歩いていると、あたかも真っ白い花火が大空に舞い上がったような花が目につく。 この花は、カラマツ(落葉松)の葉の付き方に似ていることからカラマツソウと名づけられている。
 多数の細い花の一本一本をよく見ると、先端は薄黄色で、マッチ棒の頭状に似ている。
 また、つぼみの外側は、ほのかに薄紫がかっており、こうした微妙なアクセントが、花の特徴を一層、引き立てている。

メモ  キンポウゲ科で通常、山地の森林下に生える。 草たけは50cmから120cm。 開花時期は6月から9月。 別海フィールドでは、南側の沼沢地付近の森林の中などで見られる。

Top


カワセミ−高速で飛ぶ青い鳥
 北海道研修道場の境界を流れる当幌川の流域を歩いていると「チーッ」と鳴きながら直線的に飛ぶ鳥を見かけることがある。 川沿いの土手で生息しているカワセミである。 大きな頭と長いくちばし。 コバルトブルーの背中とオレンジ色の胸部。 この派手な色彩は、いかにも南方系を思わせる。
 カワセミの飛行は速い。 以前、近くの河川で調査をしていた人のゴムボートにカワセミが衝突。 穴を開けたというエピソードがある。 水辺の横枝や杭(くい)、岩石に止まる習性を利用し、撮影位置を決めて待つこと3時間。 幸いにシャッターが切れたのが、この写真である。

メモ  ブッポウソウ目カワセミ科。 全長約17cmで体はスズメ大。 北海道には夏鳥として渡来。 寒冷な根室地方にあって、研修道場は生息限界線上に位置するといわれている。

カワセミ

Top


アカアシシギ−湿原に映える赤色の足
アカアシシギ  道東には、希少鳥類との多くの出あいがある。 その一つがアカアシシギだ。
 名前の通り、赤い足がこのシギの特徴。
 日本で初めて繁殖が確認されたのが野付半島で、今から17年前のことである。
 「ピーチョイチョイ」と澄んだ声で鳴き、湿原上を旋回する。 下背と腰が白いため、飛翔時は白っぽい鳥に見えるが、湿原内の水たまりに降りると、全体に黒い縦斑が目立つ。 そして、見事な“赤足”をすばやく動かし、小走りに歩く。
 道内の鳥は、地味な色彩が多いが、このシギは湿原に彩りを添えていた。

メモ  チドリ目シギ科。 全長27.5cm。 ユーラシア大陸に繁殖し、アフリカ、インド、東南アジア等で越冬。 日本では道東の湿原で営巣する。

Top


コウリンタンポポ−広がる赤色のカーペット
 タンポポといえば、一様に黄色を連想する。 ヨーロッパ原産で渡来植物のコウリンタンポポは、茎の先に鮮やかな暗赤色の花が集まって咲く。 その光景は、まるで野原に赤いカーペットを広げたようだ。
 この美しい群落の中でハチが飛び交い、「ゼゼッポー」と鳴くキジバトのつがいが気持ち良さそうに羽を休めていた。 そんなのどかな情景に、どこか異国情緒があふれていた。

メモ  キク科。 コウリンは紅輪の意味。 別名はエフデギク。 夏から秋にかけて咲き、草たけは20〜50cm。 北海道研修道場内には、セイヨウタンポポをはじめ、最近、減少が著しいネムロタンポポも観察することができる。

コウリンタンポポ

Top


ノゴマ−のどに鮮やかなルビー色
ノゴマ  遅い夏を迎え、グリーン一色にすっかり様変わりした別海フィールドの湿原。 その灌木やヨシの上をノビタキ、シマアオジ、ノゴマ等が楽しそうに飛び交っている。
 この小鳥たちの色彩は、とても個性的だ。 なかでもノゴマは、白い眉とオリーブ色の体、そして雄は鮮やかなルビー色の喉(のど)が特徴。
 その自慢の喉を膨らませ、「キョロキリ」と美しい声でさえずる。
 ふだんはやぶの中に隠れ、姿を見つけるのは困難といわれる。 繁殖期には雄が高い草や低木等に止まり、縄張りを宣言する。 そんなひとコマがこの写真である。

メモ  ヒタキ科ツグミ亜科。 全長約15cm。 渡りの時期には、本州以南でも見られるが、日本では、北海道だけに繁殖する。

Top


ヤナギラン−ササ原に異彩を放つ
 ミズナラの葉が空を覆い、エゾミヤコザサが林床に密生する別海フィールドの原野を歩くと、紅紫色の美しい花が目にとまる。 ヤナギランである。
 タテ長に並んだ多数の花びらが、陽光をいっぱいに浴びながら、華麗な競演を繰り広げていた。 その姿は、うっそうと広がるササ原に、文字通り彩りを添えている。 フィールド内には、こうした“楽しい出あい”が満ちている。

メモ  アカバナ科。 葉の形がヤナギの葉に似ていることから、この名がついた。 だが、ランの仲間ではない。 草たけは80〜150cmに達する。

ヤナギラン
Top

Bar

Home Back