創価大学付属植物園、創価学園付属野鳥研究所

開設へ向け第1次調査

タンチョウ
このページの写真は、委嘱研究員・福原幸昭氏 撮影

道東に残る原生の大自然

野鳥が憩うオアシス

湿原や森林など、多様な植生

特別天然記念物・タンチョウの姿も


<聖教新聞 1987年9月19日> より引用

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 創価大学の付属植物園と創価学園の付属野鳥研究所が北海道・別海町の北海道研修道場に開設されることになり、準備のための第1回視察調査が13日から3日間にわたって行われた。 豊かな自然が残り、野鳥にとってはオアシスともいうべき地で、自然を未来に残し、学術的な研究を進めていく意義は大きい。 道東にはそうした機関がないだけに、周囲からも「知的活性化につながる」と熱い期待が寄せられている。



平野部に高山の景観

エゾシカ  本州では、1000m以上の高山に登らなければ見られないような亜寒帯の山ろくの景観が、そのまま平地に広がっていた−−。
 北海道でも急速に自然が失われつつあるが、北海道研修道場には貴重な大自然が保たれている。 湿原、草原、森林……。サケの遡行が始まった当幌川もそばを流れる。東には、ハクチョウが飛来する尾岱沼(おだいとう)も。
 今回の視察・調査には、創大から土井健司助教授、創価学園から松田茂行関西校主席副校長の両準備委員長が訪問。 準備委員でもある高間孝三副会長、植物や野鳥の研究に携わっている第3北海道のメンバー8人とともに、道場周辺を丹念に調査して回った。
 道場の敷地の半分は湿原地帯。足を踏み入れるとグッと沈む。 そこには、可憐な草花が花を咲かせていた。 ピンクの花をつけるエゾノサワアザミ、紫色をしたサワギキョウ、ツリガネニンジン、ミヤマセンキュウもあった。 厳しい生育条件のなかを、ひっそりと息づく湿原植物の鼓動が伝わってくる。
 この湿原は、寒冷な気候のため枯れた草木が腐らないまま堆積し、泥炭になることからできるもの。 泥炭が水を通さないため、その層の上に雨や雪どけ水がたまり、湿原になっていくのである。 この付近の湿原は、3000年以上の昔から徐々に形づくられてきたという。
 続いて森林に足を運ぶと、ササなどの下草がびっしり。樹木は、大部分がミズナラで、シラカバやニレ、カシワなどの広葉樹の林だった。 千島列島に生育するチシマザクラも海を越えて根を張っていた。
 スコップで土を掘れば表土は65cmまで黒い腐葉土が続く。
 その下が赤茶色の火山灰。 腐葉土は1cmの層になるまで10年から15年かかるといわれるから、65cmというと相当の年数である。 ここにも、長い自然の年月が刻まれていた。
 土井助教授も「貴重な植物群に驚きました。 この自然を保存することの重要さを実感します。いろいろな方の協力を得ながら、努力していきたい」と語る。


北方への渡りのコース

オオハクチョウ  植物ばかりか、野鳥も豊富だった。
 川あり湿原あり森林あり。その多様な自然環境が野鳥をはぐくむ。 それに加え、研修道場付近はちょうど"渡りのコース"に当たっている。 北の渡り鳥は稚内から樺太のコースと、道東を通って千島に向かうコースとがあるが、ここは千島コースに当たる。
 15年にわたって野鳥をカメラに納めてきた福原幸昭さんは「200種以上観察できるはず」という。 これまで日本で記録された野鳥は536種。このうち定期的に観察できるのは350種だから、実に多くの野鳥を見ることができる。
 今回の調査でも、真っ青な空をオホーツクからの風にのって飛んでいたトビやハイタカが見られたほか、アオジやキジバト、カッコウなども観察された。 また、森の木には、コノハズクの巣やタカの巣、キツツキの仲間が空けた食痕などもあった。
 更に、早朝の尾岱沼の干潟には、餌を求めるタンチョウの姿も。 「コロローッ」と鳴く悠然としたその姿は美しい。 かつては絶滅寸前まで追いこまれながら、手厚い保護で300羽にまで増えた特別天然記念物。 そのうち1つがいが、研修道場近くに営巣している。日本一大きいこの鳥も安心して生息できる環境がここにあるからだろう。
 松田主席副校長は「1年、春夏秋冬それぞれの季節に計画性をもった観察を行っていこうと思います。 十分準備して、全校生徒が野鳥に関心をもち、何らかの形で研究活動に参加できるよう広がりのあるものにしたいですね。 同時に、社会にどう還元していくか、積極的に貢献していきたい」と話す。


南千島の文化圏

カッコー  道東の地は、歴史的に千島とさまざまな交流がなされている。 約2万年前の氷河期末期の時代。気温は現在より10度近く低く、海も凍って海面が下がり、道東と千島とは陸続きになって、寒さから逃れるため、北方の人々が南下してきたという。
 その後、現在の地形となった縄文時代以後も交流が続けられ、オホーツク文化、アイヌ文化など独自の文化を花開かせている。 本州とつながってきた北海道中西部とは文化圏を異にし、南千島文化圏に入るといわれる。
 こうした豊かな歴史と自然をもちながらも、これまで道東には学術的な光があまり当てられなかったといえる。 それだけに、自然植物園、野鳥研究所の開設に対して地元の人々の期待は大きい。
 準備委員でもある高間副会長は言う。 「風蓮湖から別海までの湿原には、研究すべき課題が山積しています。 それを研究する意義は大きい。 深く広く地道に進め、きちんとしたものをつくることが大切だと実感しています」
 今回の調査成果を踏まえ、大学、学園の各準備委員会で今後の方向性が煮つめられていく。 大きな期待のなかでの第一歩が踏み出されたわけだ。




「知的活性化になる」と反響も大きく

期待の声

釧路市立博物館館長 沢 四郎氏

 道東の知的活性化のためにもなり、すばらしい計画です。
 この夏、釧路湿原が国立公園になりましたが、実は、風蓮湖から別海に至る湿原地帯も大変重要なところで、国立公園になればいいと思っている地域です。考古学的にみても、南千島文化圏に組み込まれていて、先住民は千島の人々と行ききしあっていました。たぶん、北海道研修道場の丘にはそうした人々の遺跡もあると思います。
 そうした情報も掘り起こしながら、自然に関する道東の知的ネットワークをつくってもらいたいと思います。


標津(しべつ)町長 小田桐 四郎氏

 貴重な自然が残っている地域なのですが、ここに住んでいると、なかなかそれに気付かない。それに、どんな意味をもっているのか研究する機関もありません。
 創価大学ならびに創価学園が研究機関をつくられ、実態を調査・研究していただければ、町民も「こんなにすばらしい地域に住んでいたのか」と、郷土に対する誇りも持てるようになると思います。また、自然への関心も高まります。
 地域文化のためになることであり、期待しております。


中標津(なかしべつ)町長 進藤 松吉氏

 北海道も開発が進んで、自然が失われています。しかし、この地域にはまだ残っている。自然との触れ合いのなかで人間性豊かな人が育つのであり、自然植物園、野鳥研究所を開設されようとされているのは、大変意義あることです。
 また、充実した研究機関ができればこの地域が脚光を浴びることになり、世界各国の人々にもきていただけるようになる。それは、地域の活性化にもつながり、大変ありがたいことです。


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