別海フィールド 第3回植生調査


6月22日記事 及び 北海道版6月23日記事

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北海道総支局発

=創大付属植物園・別海フィールドで第3回の植生調査=

後世に残そう“大自然の博物館”


<聖教新聞 1989年6月22日> より引用 (写真・地図を含む)



 さる17日から19日にかけ、創価大学付属自然植物園の開設が予定されている北海道・別海フィールドにおいて、第3回の植生調査が実施された。 今回の調査には牛沢信人北海道大学名誉教授、創価大学付属植物園準備委員長の土井健司同大教授、鈴木利博創価高校副校長らが参加。 地形・地質、及び植生調査、更に今回の目的の一つであった植物の標本作成に全力をあげた。 ここでは、調査団の様子と貴重な動植物を紹介する。




植生調査

地形・地質を踏査

フィールド全体を把握する手掛かりに

 午前9時。 うっすらと霧が立ちこめるなか、第3回植生調査が開始された。 この時期、道東を覆うオホーツク海高気圧の影響で最高気温が摂氏10度に満たない日々が続く。 そのせいか太陽が顔をのぞかせても、いまだ冷やりとした空気が伝わってくる。
 まず今回の目的の一つである地形・地質の踏査を牛沢名誉教授(工学博士)を中心に行った。 そのポイントは、現在の別海フィールドがどのような過程を経て形成されたか、という「地史的」な視点。 その手掛かりをつかむため、フィールドの境界を流れる当幌川にそった丘陵地の周辺を全員で歩いた。
 その一面には道東の典型的な植生である落葉広葉樹林の自然林がうっそうと広がっている。 ミズナラ・カシワをはじめ、シラカンバ、ハルニレ、ヤマハンノキ、キハダ等の高木やエゾニワトコ、ツリバナ、ハシドイ等の低木が黄緑色の鮮やかな若葉を伸ばし、今、新緑の真っ盛り。
 林床には、人間の腰の高さもあるエゾミヤコザサが密生。 「ザ、ザ、ザ……」。 ササ原をわけるにぶい音が周囲に響く。
 30分も歩くと巨大なフキの群落が現れ、調査団を驚かせた。 ひと抱えもありそうな大きな葉の“フキ畑”は、フィールドの豊かな自然環境を象徴する光景だ。
 更に奥地へ進むと幾筋も小川がある。 フィールド内には湧水地が数カ所点在していて、そこから流れ出したものだ。 南側に位置する沼沢地もその一つで、その一帯は葉を大きく生長させたミズバショウの群落や湿地性植物たちの憩いの場だ。
 丘陵地から川の沿岸地域に広がる湿原に目をやると、森林と湿原の植生の区別が肉眼ではっきりとわかる。 こうした植生の“土台”となっている地形・地質の形成は、地史的な見地からとらえることができる(別掲インタビュー)。
 今回、このように地形・地質の視点から調査を行ったことにより、一段とフィールドの全体像を把握するキッカケができた。


標本作製

植物標本の作製

約100種類のサンプルを採集、鑑定も

 今回の調査のもう一つの目的が植物標本の作製。 今、ようやく短い新緑の季節を迎え、多くの植物が美しい花弁を開いている。
 湿原と森林との隣接部付近を中心に鮮やかな橙黄色のエゾカンゾウが見え、林内では白色の花をもつオオアマドコロ、マイヅルソウ、オオバナノエンレイソウ等が群落を形成している。 また、真っ白で花火のような花のカラマツソウ、燃えるような紅紫色のハクサンチドリ等が彩りを添えている。 当幌川のほとりでは、クロユリが咲き誇っている。
 一方、湿原ではヨシ、ワタスゲをはじめ、ツルコケモモ、ヒメシャクナゲ、ワレモコウ、モウセンゴケ、ミズゴケ類などが見える。
 樹木では特にエゾサンザシとシロザクラが満開期を迎えており、その純白の可れんな花に思わず見とれてしまう。 調査団は、あちこちで観察できた約100種類の植物のサンプルを採集。 その一つ一つを慎重に鑑定し、さっそく標本づくりに取りかかった。
 こうした植物標本は、将来開設される自然植物園の植生を知る上で重要な手掛かりとなるだけでなく、貴重な資料として自然教育等に活用されることになる。
 今後、準備委員会では昨年、湿原に設置した方形区調査地並びに水位調査地での追跡調査を積み重ねる一方、季節に応じた植物標本の作製を継続していくことになる。


野鳥観察

野鳥センサスも実施

33種類の鳥類を確認

 一方、18日未明から、久米宗男関西創価中学校・高校教諭と動物写真家の福原幸昭氏を中心に野鳥センサス(調査)も実施された。
 創価学園では昭和62年から別海フィールドで野鳥研究を進めてきたが、今春、湿原にタンチョウが飛来したことが確認され、話題を呼んだ。 そして、年を重ねるごとに、その豊かな鳥相が注目されている。
 今回の調査は、敷地内でも野鳥の生息環境として最も理想的と考えられる当幌川流域を中心に行われた。
 静寂な空気の中でさえずる小鳥たち。 今、繁殖期の真っただ中で、“縄張り宣言”をする声が盛んに聞こえる。
 確認できた野鳥は、今年も営巣したと思われるカワセミをはじめ、ミソサザイ、キビタキ、キバシリ、センダイムシクイ、カッコウなど、33種類。 また、今年誕生したトビの幼鳥が間もなく巣立ちを待っている。
 このほか動物では、キタキツネがフィールド内で繁殖し、かわいらしい3匹の子ギツネが巣穴の側で仲良く遊んでいた。
 久米教諭は「希少鳥類の保護のためにもフィールド内での調査・研究を一段と充実させていきたい」と意欲満々だ。


ハクサンチドリ
燃えるような紅紫色のハクサンチドリ
クロユリ
黒っぽい紫色のクロユリ
オオバナノエンレイソウ
まっ白な花弁を開いたオオバナノエンレイソウ
シロザクラ
白色の可れんな花が満開のシロザクラ
キタキツネ
フィールド内で楽しそうに遊ぶキタキツネ
トビ
当幌川の近くで誕生したトビの幼鳥



地図

メモ

 昭和62年8月、北海道・別海フィールドに創価大学付属自然植物園、創価学園付属野鳥研究所の開設構想が発表された。
 以来、準備委員会では、現地調査を踏まえた上で、翌63年8月に第1回植生・野鳥総合調査を行い、フィールド内の植生の概観等を調査。
 さらに同年10月には第2回の植生調査。 ここでは湿原で方形区法(1m四方)による植生調査を実施した。 その他、創価学園のサマー・セミナーでは、大自然を教室にした現地学習を体験。 こうした別海フィールドの調査が進むにつれ、学術的な意義の深さが確認されている。





牛沢名誉教授

牛沢信人北大名誉教授に聞く

湿原の形成は約3千年前から

――別海フィールドの自然の特徴の一つである湿原はどのような過程を経て形成されたと考えられますか。

牛沢 それには、まず今から1万数千年前まで時間をさかのぼって考えなければなりません。 その時代は氷河期末で、現在より海面高度が100m以上も低下し、千島列島の国後島と陸続きであったようです。 そのことから、当時、別海フィールドに隣接する当幌川は現在のように下流ではなく中流であり、その沿岸部が流水で浸食されたと思われます。 その形跡は、現在、当幌川を見下ろす高台(丘陵地)の地形に顕著に現れています。
 その後、次第に海面高度が上昇し、縄文時代早期(7、8千年前)には、逆に現在より数mも上昇しています。 更に下降に転じ、現在の状態に近い約3千年前頃から冷涼な気候条件もともなって当幌川流域の低地部分に湿原の形成が始まったものと推察されます。

――近くの野付半島の形成も同時期なのでしょうか。

牛沢 野付崎の砂州及び砂嘴の形成もほぼ同時期からと考えられています。

――フィールド内の地質に関しては、どのようなことが言えますか。

牛沢 フィールド内の海抜十数mの台地は平坦で、その地質は最上部の数mが火山灰性の沖積層、その下位の洪積層も火山灰、火山砂、火山礫及びローム層、並びにそれに由来した粘土層等が繰り返し厚く、しかもほぼ水平に堆積しているようですね。




土井教授

第3回調査に参加して

自然植物園準備委員長
土井健司創価大学教授

 参加した調査がそれぞれ季節が異なっていることもあり、来るたびに動植物との新鮮な出会いがあります。 このすばらしい自然をできるかぎり50年後、100年後の世代のために残していかなければならないと感じます。 自然植物園は、できるだけ人為的な手を加えず、自然のままで観察できるフィールドにできたらと思っています。


創価大学3年
毛利 康さん

 初めて別海に来ることができ、感動です。 調査に参加し、幅広い視野に立って自然を研究し、保護していくことが大切であることを学びました。


創価大学2年
小川 信明さん

 別海フィールドは3度目ですが、思っていた以上に広大でした。
 自然植物園開設の背景にあるすばらしい自然環境を垣間見て、心から納得することができました。



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創価大学付属自然植物園
別海フィールド 第3回植生調査

地形・地質の踏査と植物標本の作成を行う


<聖教新聞北海道版 1989年6月23日> より引用



 創価大学付属自然植物園の開設が予定されている別海フィールドで、17日から19日にかけて第3回植生調査が実施された。 これには準備委員長の土井健司創価大学教授をはじめ牛沢信人北海道大学名誉教授、鈴木利博創価高校副校長らが参加。 なかでも今回は、地学の専門家である牛沢北海道大学名誉教授(工学博士)を中心にフィールド内の踏査を行い、現在の地形・地質がどのような過程を経て形成されたかを調べた。
 それによると、敷地内に広がる湿原は、海面高度が現在より100m以上低下し、国後島と陸続きだった氷河期末(1万数千年前)に、当幌川の流域が流水によって浸食され、その後、海面高度が逆に今より数m上昇した縄文時代(7、8千年前)を経て、およそ現在の海面高度に近づいた約3千年前ころから、その当幌川の流域の低地に冷涼な気候条件もともない、形成されはじめたものであると考えられる。
 また、この時節、多くの美しい花々が咲き誇っており、こうした短い春・夏を飾る植物の本格的な標本づくりが行われた。 調査団は森林と湿原から約100種類の植物を採集し、一つ一つを慎重に鑑定した。 このほか、関西創価中学校・高校の久米宗男教諭と動物写真家の福原幸昭氏を中心に野鳥センサス(調査)を実施し、カワセミ、ミソサザイ、キビタキ等、33種類の鳥類を確認した。 団長の土井創価大学教授は「手つかずの素晴らしい自然をできるだけ、そのまま残し、自然教育と学術研究に活用していきたい」と語っている。


記念撮影


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