創価学園

各地の付属研究所で充実のサマーセミナー

大自然の教室で未来への英知を磨く


<聖教新聞 1989年7月31日> より引用


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 北海道・別海、九州・霧島、沖縄・八重山の大自然のなかで、24日から28日まで、創価学園の付属研究所で「サマーセミナー」が行われた。 これには、学園の東京・関西の中学・高校生が参加。 教室から飛び出し、肌で接した大自然の素晴らしさに生徒たちは、感動と充実の5日間を過ごした。 ここでは、有意義だったそれぞれの研修の様子などを紹介しよう。



沖縄・八重山

“生物の宝庫”で有意義に

石垣、西表島 天然記念物など豊富な教材


 八重山の野鳥・植物研究所でのセミナーは、今回が初めて。 24日夜、沖縄大学の大嶺哲雄教授の「八重山の自然」の講座でスタートした。
 石垣島、西表島には、天然記念物のイリオモテヤマネコ、キシノウエノトカゲ、カンムリワシなどが生息している。
 日本本土や沖縄では見られないこれらの動物が、なぜ石垣、西表だけに生息しているのか。 大嶺教授は、中国大陸とつながっていた琉球列島が、1億5,000万年前から8,000万年にかけて、3回にわたって切れたり、つながったりした歴史を紹介。
 大陸や東南アジアでは、すでに絶滅してしまった種か、あるいは近縁種が、石垣、西表に閉じ込められ、それぞれの生活適応を行って、今日まで進化し、生息するように。 こうした八重山群島の動植物の分布の特徴について学んだ。
 翌25日には、朝6時半から、日本野鳥の会八重山支部の島袋憲一事務局長の案内で、研究所内のバードウオッチング。 研究所のすぐそばにあるデイゴの木の上で、天然記念物のリュウキュウアカショウビンが巣を作っているのを発見。 警戒心が強いアカショウビンがよくこんな所で巣を作ったもんだ、と島袋さんも新しい発見にびっくりしていた。
 研究所の裏手に広がるバンナ自然公園では、野鳥、植物の野外観察。 夜は、島袋さんの「八重山の自然と鳥」の講座。 日本に生息する野鳥は520種。 そのうち、約50%にあたる300種が八重山に生息する。 また、八重山は、北から南への渡り鳥の中継地にもなっており、日本の野鳥を守るためには、この地の自然環境を守ることが、大事であると強調。 学園生は豊かな自然のなかでの貴重な研修に目を輝かせていた。
 26、7日には、西表島に渡り、サンゴの観察、浦内川の上流に上り、マングローブなどが広がる流域の植物相を観察。 夜は、親盛長明さん=環境庁・特別保護動物検討委員=から「イリオモテヤマネコの生態」についての講座を受講。 人間と自然の深い結びつきについて研修した。


メモ

 野鳥・植物研究所のある沖縄県石垣市は、西表島などの近隣の諸島を含めて八重山諸島と呼ばれる、日本唯一の亜熱帯気候の地域に属す。 八重山諸島は、世界的にも貴重な生物の宝庫として注目され、日本本土には見られない動物、植物の固有種が数多く生息。 その特色から、進化の島・ガラパゴスにちなみ、“東洋のガラパゴス”とも呼ばれている。


講座を担当して

沖縄大学教授 大嶺 哲雄氏

 八重山の豊かな自然とじかに接することは、地元の高校生でもまれです。 そういうカリキュラムもない。 自然の生きた教材で学ばせることが真の科学教育につながります。
 その自然の中で生活している人々との触れ合い、歴史、社会、文化を知り、自然との深いつながりのなかで人間社会が成り立っていることを学ばせる、という根本的教育の基礎に立って見聞する機会を与えたことは素晴らしいことです。 特筆すべき点は、この企画を実践するにあたり、教師が綿密な計画と1年間の準備期間のなかで3回にわたり実地調査を行ったこと。 安全、健康、社会と自然との関係性の把握に重点をおいて実施された熱意とそのバックアップをした学園の教育的情熱に心から敬意を表します。


セミナーに参加して

関西高1年 伊藤 貴雄さん

 大嶺教授の石垣島、西表島の多様な動植物の生態などの講義を聞きながら、一番、感動したのは、教授がなぜ、生物学を学ぶようになったか、との体験でした。 教授は“鉄の暴風”といわれたあの沖縄戦の時、私たちと同じ年ごろだったのです。 家、食糧を焼かれ、食べものもなく、山にはえている草や根っこなどを食べてかろうじて生命を永らえることができた。 戦争が終わってから“あの時、食べた草や木はどういうものか”と生命を助けてくれた自然への恩返しから生物学を志した、という話にジーンときました。
 “自然と人間の深い結びつき”を目の前で確認でき、自分も自然と深い絆を結ぶなかで、人生を深く生ききっていきたい、と思いました。




九州・霧島

火山地域の特色を研修

野鳥、植物の観察も思い出に


 鹿児島県霧島を訪れたメンバーは、まず高千穂河原ビジターセンターで、霧島国立公園の自然や人文景観の生成をパネルや模型、写真等で学習。
 第1回の講座として、溶岩火山や成層火山、砕層火山、二重式火山などスライドで火山の形や種類を勉強。 北西から南東に約20km、幅約9kmに25の火山があり、火山地域に特有の多くの地形がみられるほか、特に火口湖が多いのが、霧島火山の特徴であることを学んだ。
 翌日早朝、野鳥研究所内の森で、探鳥会が行われ、鳥の鳴き声を通してアオゲラやヤマガラ、コゲラなどの存在を確認した。
 2日目のメーンは、えびの高原の自然観察。 えびの高原ビジターセンターで、大自然の様子や生息する動植物のスライドを見たあと、白紫池、六観音御池、不動池を回る池めぐり自然観察路を歩いた。
 ハルゼミの鳴き声の中を進むと、ピンクの花をつけたヤマシグレ、赤色の花が咲いているムラサキシキブ、夏ツバキが白い花を咲かせ、花かと見間違える白いガクを付けたヤマボウシなどの樹木がみられ、アカマツに巻き付いたツタウルシや、ミズナラに寄生したヤドリギもあって、メンバーも興味津々。
 道に小さな動物の糞。 「大きさから察するとテンではないか」と自然観察指導員の中野シゲ子さん。 更に行くと、ヤマウルシの木があったが、地表から1mほど樹皮がそっくりなくなっている。 シカが食べたのだという。
 フィールドサインはまだあった。 枯れ葉の積もった土が掘り起こされ、コケがめくり返されていた。 イノシシが、ミミズやムシを探した跡だという。 何十種類も生息する動物たちのおう盛な生活欲を見せ付けられる。
 帰途立ち寄った林野庁の保養施設では、え付けされたイノシシを見て、メンバーは大喜び。 しかも、山の斜面に、シカが首を出しているのを見付けて大騒ぎ。 研究所では、アナグマも姿を見せ、この日の自然観察は実り多いものになった。
 夜の第2回講座は「霧島の野鳥」をテーマに、日本野鳥の会会員の石井久夫氏(高校教諭)が鳥の生態と特徴を講演。 スライドを通して、留鳥、漂鳥、夏鳥、冬鳥、旅鳥に大別される野鳥の習性や鳴き声についての学習を行った。
 3日目は、鹿児島県日置郡松元町にある石谷ポニーランドへ。 メンバーは、馬屋の掃除、草取り、飼料にするトウモロコシの刈り取り作業など牧場実習に従事。 乗馬教室も開かれ、おっかなびっくりで馬の背に。 桜島も見学し、楽しい思い出を残した。
 第3回の講座は「鹿児島の植物図鑑」を発刊した植物研究家の杉本正流氏が講演。 顕花植物と隠花植物の違いや帰化植物、毒草といった種別を、ユーモアを交えて解説。
 翌日には、研究所内で植物を採取し、標本の作り方を実習。 生徒の採取したヒメイタチシダやマンネンスギ、ヒカゲノカズラ、コアカソなどを新聞紙を使って乾燥する作業を生徒と共に実地指導した。
 この後、各自がノコと金槌を使っての巣箱づくりに取り組んだ。 地元から大工さんも駆けつけ、作り方のアドバイスも。 1時間もたつと、次々と巣箱が完成。 箱に字や絵をかき込み、野鳥へのメッセージとしていた。


講座を担当して

日本野鳥の会会員 石井 久夫氏

 野鳥の声もたくさん聞けました。 ほぼ満足のいく自然観察ではなかったかと思います。
 自然を観察するなかで、自然と生き物、また自然と人間の深い関係を認識して、自然を大切にする心を育ててほしいと思います。


植物研究家 杉本 正流氏

 自然の破壊は急速に進んでいますが、いつか人間がしまったと思うときがくることは間違いない。 自然を知り、植物を知り、生き物を知っていくことは、人間と自然の関係をより深く知ることになる。 その意味でもこうして自然に触れていこうという試みは大事なことだと思います。 生徒さんも向学心があって感心しました。




北海道・別海

北の“博物館”でも貴重な勉強

希少鳥類、エゾモモンガの生息を確認


 別海の参加者のほとんどは北海道の土を踏むのが初めて。 憧憬の地で見るもの、聞くもの、触れるものすべてが新鮮だ。 一行は初日、釧路市丹頂鶴自然公園と釧路湿原国立公園を見学。 そして、一路北東へ。 バスに揺られること約2時間、野鳥研究所・別海フィールドに到着した。
 2日目、遊覧船で野付湾を渡り、景勝地・トドワラがある北海道立自然公園の野付半島を歩いた。 洋上には、打瀬舟の三角形の白い帆が紺碧の海に映えていた。 アザラシも丸い顔をのぞかせていた。
 半島の原生花園では、エゾカンゾウ、ハマナスなどが群生していた。 360度、視界をさえぎるものは何一つない。 「生まれて初めて地平線を見ることができ、胸が熱くなりました」と語るのは、創価中学2年の宮口英夫君(12)。
 湾内にタンチョウ(特別天然記念物)が生息していることを聞き、宮口君はスコープで真っ先に端麗なタンチョウの夫婦を見つけた。 ほかにもアカアシシギ等の希少鳥類を間近に観察することができた。
 町内の新酪農村で牧場作業に汗を流したのが3日目。 牛舎の中で歓声を上げながら清掃や餌(えさ)運びを行った。 創価高校1年の松島浩子さん(16)は、「生まれて間もない子牛に触れることができ、感激しました」と。
 別海フィールドに戻ると、すぐに小鳥用の巣箱づくりに取り組んだ。 昨夏に設置された巣箱の多くが、野鳥の繁殖に利用されたことが今回、明確になった。 それだけに全員が一段と作成に熱意を燃やした。
 4日目は広大な別海フィールド内の自然観察を実施した。 5班体制を組み、あらかじめ決められた観察コースを踏査した。 テーマは「動物」「野鳥」「植物」「菌類(キノコ)」「昆虫」など。 同フィールドは、“大自然の博物館”と言われるだけに、目に映るものすべてが“生きた学習材料”だ。
 午後から、班ごとの観察結果の発表会があった。 その中には、エゾモモンガ(リス科)の生息が確認されるという、うれしい報告も。 この動物は夜行性のため、昼間、人目につくことがほとんどない。 フィールド内でこれまで目撃例がないだけに、貴重な記録となった。
 また、今春、3匹の子ギツネが生まれたキタキツネの巣穴も観察。 当幌川の川岸では、カワセミの営巣地域を観察。 土手に約1mの巣穴を掘るカワセミの生態を知ると、皆、自然界で生きる動物たちの知恵に驚いていた。
 植物では、湿原に生えるモウセンゴケ、ヒオウギアヤメや原野に咲くエゾノサワアゼミ、クルマユリなど、約50種類を確認した。
連日、夜には周辺の自然に造詣が深い4人の講師による講座が開かれた。 初日は日本野鳥の会理事の三浦二郎氏が「道東の自然」と題し、周辺地域の自然環境について講演。 更に、同氏の案内で早朝探鳥会が実施され、アカハラ、エゾセンニュウ、コムクドリ、コムクドリ、カッコウ等、約20種の鳥類を確認。 また、動物写真家の福原幸昭氏、日本菌学会会員の仁和田久雄氏、日本鳥学会鳥学会会員の寺沢孝毅氏もそれぞれ野生動物の生態や自然界の仕組みについて説明した、
 尾崎孝団長(関西創価高校副校長)は「都会では体験することができない、貴重な勉強をすることができました。関係者の方々に心から感謝します」と充実した5日間を振り返り、語っていた。


講座を担当して

日本菌学会会員 仁和田 久雄氏

 講座に臨んだ生徒の皆さんの態度が立派でした。 今、自然と人間のかかわりの大切さが叫ばれていますが、このような試みで生徒が自然と接し、自然に学ぶことは、すばらしいことです。 日本の未来のためにも、また人類のためにも。


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