創大・創価学園

「別海・霧島フィールドの調査報告書」が完成


環境保護と自然教育の“生きた教科書”


<聖教新聞 1991年7月25日> より引用

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表紙

 このほど、北海道・別海と鹿児島・霧島の両フィールドに開設が予定されている創価大学付属自然植物園、創価学園付属野鳥研究所の準備委員会(委員長=土井健司創大教授、松田茂行関西創価学園長)による調査報告書が完成。 関係者の間で「学術、教育的に非常に水準が高い」「自然研究の生きた“教科書”」と高い評価が寄せられている。 ここでは、同書の内容とともに、執筆者のコメントおよび創大・学園が進める自然教育に対する専門家の期待の声を紹介する。


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豊富なデータと多彩な写真で
著名な学識者による質の高い内容

 「別海・霧島フィールドにおける植物・鳥類等の概要」(別海・霧島フィールドの調査報告書)は、昭和62年8月、創価大学付属自然植物園・創価学園付属野鳥研究所の設置構想が発表されて以来、過去4年間に実施された基礎調査の結果を両準備委員会が調査報告書として発刊したものである。
 いずれも、それぞれのフィールドで行われた植生及び野鳥の調査に携わってきた第一級の識者の調査報告であるだけに、きわめて質の高い内容となっている。
 調査報告書はB5判で230ページ。 前半は別海フィールド編、後半は霧島フィールド編となっている。 目次をめくると、まず「別海の自然」「霧島の自然」と題する美しいカラー写真が7ページにわたって紹介されている。 その冒頭を飾るのは、別海フィールドの湿原に舞いおりたタンチョウ(特別天然記念物)の写真。 更に、多彩な景観の写真が続いている。
 「別海フィールド編」は調査報告と植物・鳥・動物のカラー写真で構成されている。 調査報告は、(1)「別海フィールドの概要と特徴」(牛沢信人・北大名誉教授) (2)「生態系研究への価値あるフィールド」「自然教育・研究に最適の環境」(伊藤浩司・北大大学院環境科学研究科長) (3)「別海フィールド周辺におけるキノコの観察報告」(仁和田久雄・日本菌学会会員) (4)「次世代に残す貴重な財産」(杉本正流・植物研究家) (5)「別海フィールドの鳥類相」(三浦二郎・日本野鳥の会北海道ブロック協議会事務局長) (6)「別海フィールドとその周辺地域の鳥類相」(寺沢孝毅・羽幌町立天売小学校教諭) (7)「自然観察への一考察――別海フィールド」(鈴木利博・創価高校副校長)の7編。 併せて、植物、菌類、鳥類のリストが記載されている。
 一方、「霧島フィールド編」は、(1)「霧島フィールドの植物相」(初島住彦・鹿児島大学名誉教授、杉本正流・植物研究家) (2)「霧島フィールド内の鳥類の生息概要について」(石井久夫・日本野鳥の会会員)の調査報告と植物・鳥のカラー写真で構成されている。 植物と鳥類の目録も収録されている(執筆者の肩書は、執筆当時のもの)。
 別海・霧島両フィールドの比較研究は、今後の重要な課題であるが、これまでのところ、霧島フィールドの標高約1,000mから1,200m地帯と、別海フィールドの環境条件が類似し、共通の植物が多数あることが確認されている。 更に、別海でよく見られるミズナラ、ミヤマザクラ、サクラソウ、ヤマドリゼンマイなどの植生分布の南限が「霧島フィールド」に位置している、という興味深いことも明らかになっている。


別海フィールドに生息する動物たち
タンチョウ
タンチョウ
オジロワシ
オジロワシ
キタキツネ
キタキツネ
シマリス
シマリス

霧島フィールドに生息する動物たち
キュウシュウシカ
キュウシュウシカ
カケス
カケス
アカショウビン
アカショウビン



執筆者から


創立者の自然への認識の深さに感銘
     北海道大学教授 伊藤浩司氏

 今回、完成した調査報告書は、植物、鳥類、菌類を中心にまとめられており、今後の調査・研究への手掛かりになるものとして、内容的にもかなりのレベルに達しています。 また、この地域の生物研究へ大きく貢献することは間違いありません。
 私も3年前、別海フィールドを3度にわたり、視察・調査に歩きましたが、開発のために北海道の湿原が次第に追いつめられているなかにあって、同フィールドの湿原は、将来にわたって残されるべき、貴重な財産であると実感しました。 あれだけの“集団”としてのまとまりのある自然が守られているということは、北方植物の研究の上で大変に重要なことです。
 13年前、創立者の池田名誉会長が別海を訪問された際、別海フィールドの自然を保護していくよう指示されたと聞きました。 名誉会長のこうした先見性と、自然環境に対する認識の深さに感銘を受けています。 今後もできる限り、植生調査に参加し、調査報告書の一層の充実のために尽力していきたいと決意しています。


800種の植物―いつまでもこの環境を
     鹿児島大学名誉教授 初島住彦氏

 鹿児島県は、屋久島という魅力ある地域を抱えているため、どうしてもそちらに目が向き、霧島の調査・報告がなされてきていなかった、というのが実情です。
 今回、創価大学・学園の依頼を受けて調査に参加できたのは、私にとってもいい機会でしたし、興味をもって取りかかったわけです。
 このフィールドは、標高614mから1,136mにわたる地域で、暖帯から温帯の植物が垂直分布しているところです。 植物の種類も豊富で、野生、栽培合わせて800種類が見つかりました。 恐らく霧島全体の同じ標高範囲の植物を網羅していると思われます。
 別海と霧島という、北と南の植物を比較できることは、大変興味のあることで、霧島だけをとっても、この報告書は貴重なものだと思っています。
 霧島の報告書には、生育地を上中下の3段階にわけ、また生育の量を4段階で表示しています。 これも参考になると思います。 この自然をいつまでも守ってほしいと願っています。


“霧島”は見事な野鳥の楽園
     日本野鳥の会会員 石井久夫氏

 霧島フィールドで、私が確認した野鳥は70種類でしたが、その後、更に2種類ほど確認しており、当然いなければならない種類を考え合わせると、最終的には120種類を超えるのではないか、と思います。
 それだけ自然が残されている証拠ですし、鳥達にとっては居心地のいい環境であるわけです。 霧島は渡り鳥も多く、そうした野鳥の楽園として、このフィールドが残されていることは大きな喜びでもあります。 九州では数が少なく、貴重な鳥であるキバシリが見つかったことは、大きな収穫でしたし、高いところにしか巣を作らないクマタカの古い巣も見つかって、驚きとともに、霧島ではいかに大きな木が失われているかを知らされた思いです。




期待の声


タンチョウの営巣に大きい期待
     専修大学北海道短期大学学長 正富宏之氏

 野付半島の根元に位置している別海フィールドの一帯は、今まで詳しい調査が行われていませんでした。 この地域の自然環境を知るうえで、今回、調査報告書が完成した意味は大きい。 また、日本の南北のリストが1冊にまとめられている点も非常に興味深い。 更に、写真がよく撮れていることも評価できます。
 私は、毎春、上空からタンチョウの営巣調査を行っており、以前から別海フィールドの湿原にも注目してきました。 あの湿原は面積的にも繁殖の可能性は十分あります。 あとは「エサ」と「安全性」の確保がポイントです。 私もタンチョウが営巣して欲しい、と念願している一人です。
 とにかく、これだけの広大な自然を確保されたことに感心しています。 そのうえ、人間の利用は控えめにされている。 これは非常に正当な姿勢であると思います。 更に、残すだけではなく、今回の調査報告書のように自然に関する情報を得ようとしていることを高く評価しています。


別海はシマフクロウの繁殖の可能性も
     日本鳥類標識協会会員 高田 勝氏

 別海フィールドは、千島系の渡り鳥のルートと、山岳と平地を結ぶ移動のルートが重なる場所であり、野鳥の移動・渡りを研究するうえで、極めて価値のあるフィールドです。
 また、道東の自然を代表する湿原があり、当幌川という良好な河川が境界を流れています。 調査報告書には、こうしたフィールドの優れた自然環境が的確に把握されており、訪れる人に正確なデータを提供できる内容になっています。
 同フィールドに託したい夢は、シマフクロウの繁殖です。 現在、希少鳥類のタンチョウとシマフクロウの両方が繁殖している様子を観察できる場所はありません。 それが実現できる可能性をもっている場所です。
 その意味からも、同フィールドは、自然破壊の“防波堤”の役割を担っているように感じます。 また、日本では本物の自然を学ぶ場所が少ない。 このフィールドは、真実の自然に接し、理解を深めるという、新しいタイプの聖域として意義付けすることができる、と確信しています。


「次世代への贈り物」
      沖縄大学教授 大嶺哲雄氏

 日本の一流の先生方がかかわり、正確で豊富なデータと生態を浮き彫りにする写真を駆使した内容は、学術的にはもちろん、フィールドノートとしても実に優れた画期的なものです。
 現在、環境庁を中心に国民が参加して環境をマネジメントしようという運動を始めていますが、それを先取りし、今後のモデルともなる意義の大きい仕事だと思います。 私は、正しいもの、美しいものを見抜き、信じるに足るものを見抜く力を養うことが、自然教育の使命だと思っています。 この報告書は、その素晴らしい道標(みちしるべ)ともいえますね。
 “生命の尊厳”を守る創大、創価学園の教育に対する情熱が伝わってきます。 今後ますます研究を続け、地域との結びつきも深めながら、この見事な「次世代への贈り物」を充実させてほしいと念願しております。


このフィールドは地球全体の“宝庫”
      鹿児島大学助教授・霧島の自然を考える会会長 川平和美氏

 報告書ができてうれしかったですね。 誇り得る自然を有していることを、地元の人達があまり気付いていない。 学術的な調査資料をきちんと持って、もっともっとアピールしていくべきです。
 霧島は、国立公園に指定されているんですが、それに値する自然が守られていないんですね。 1,100、1,200m以上のところでは守られているんですが、カシ、シイ、タブといった照葉樹林主体の林がほとんど残っていない。 今、霧島で自然が残っているのはフィールド部分で、これからも、その持つ価値はどんどん素晴らしくなっていくことでしょう。 まさに“霧島の宝庫”になりつつあります。
 すべての生命には生きる権利がある。 それを自然のままに認めていく――という価値判断があって、初めて自然が守られていく。 それが後世の人達の財産になっていくと思います。



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