創価学園
霧島(九州)・八重山(沖縄)で第4回サマーセミナー


豊かな大自然を“教室”に多様な生態系を観察



<聖教新聞 1991年7月30日> より引用 (地図・写真を含む)


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 生きた自然が“教室”−−創価学園の付属野鳥(植物)研究所の開設が予定されている九州・霧島、沖縄・八重山フィールドで、22日から26日にかけて創価学園の第4回サマーセミナーが行われた。 これには、東京校、関西校の高校・中学の生徒が参加。 自然観察、実習、講義など有意義な研修が繰り広げられた。



八重山フィールド

変化に富む“亜熱帯”−−原生林を探訪

地図

貴重な生物の宝庫を未来へ

“自然保護”の在り方を学ぶ



サキシマスオウ
西表島のサキシマスオウの群落を調査。大嶺教授の説明を熱心に聴き入る学園生
 
マングローブ
浦内川流域に、うっそうと茂るマングローブ林
 
講義
興味深い講義を真剣なまなざしで受講
 
バードウオッチング
網張(あんぱる)の湿地帯でバードウオッチング。初めて見る野鳥の生態に瞳を輝かせる
 
ウラナミシジミ
ウラナミシジミ
 
キシノウエトカゲ
天然記念物のキシノウエトカゲ

石垣島−−網張湿地帯

 太古からの豊かな自然が、今なお息づく沖縄の八重山諸島−−。 抜けるような青空をバックにハイビスカスやブーゲンビレアの花々が咲き誇る、美しい自然環境の中でサマーセミナーはスタートした。
 石垣島の名蔵川河口の網張(あんぱる)湿地帯では、バードウオッチング(23日)。 「耳を澄ましてごらん。ほら、今のがイシガキヒヨドリのさえずりですよ」。 指導にあたった日本野鳥の会・八重山支部事務局長の島袋憲一氏の解説を真剣に聴き入っていた。
 潮が引いた干潟は、野鳥にとって格好の餌場(えさば)である。 コサギやキアシシギなどが小魚などをついばむ様子をプロミナ(野鳥観察用の望遠鏡)を使って観察。 都会で育った子供たちは、初めて見る光景に瞳を輝かせていた。
 続いて、沖縄大学の大嶺哲雄教授の案内で干潟の岸辺のマングローブ林へ。 沖縄のマングローブとは汽水域(海水と真水が混じり合って塩分濃度が薄くなる地域)に生育するオヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギ、マヤプシキ、ヒルギダマシ、ヒルギモドキの総称のこと。 これらの落葉、落枝が腐敗し、有機物を含んだ泥が沈殿しているマングローブ林は、まさに栄養の貯蔵庫。 樹林には、その豊かな餌を求めて集まった多くの生物たちが共存している。
 足を踏み入れると、ピョンピョンと泥の上をとびはねて逃げていくミナミトビハゼ(魚類)。 大きなハサミを持つノコギリガザミなどのカニ類。 根元の砂地をほると大人の握りこぶしほどのシレナシジミなどが−−。
 学園生らは、その一つ一つの生きた教材を熱心に観察ノートにスケッチ。 「生徒の熱意あふれる姿に驚かされます」と、大嶺教授。


西表(いりおもて)島/浦内川流域

 コバルトブルーとエメラルドグリーンのコントラストも鮮やかなサンゴ礁の海を高速船で渡って西表島へ(24日)。 周囲75kmに及ぶ西表島は沖縄本島につぐ大きな島で、その面積の90%が亜熱帯樹林に覆われている。
 島の中心から北西に流れる水量豊かな浦内川は、河口付近がマングローブ林に囲まれた、沖縄で最長(19.4km)の川だ。 快い川風を受けながら、リュウキュウマツやヒカゲヘゴなどの亜熱帯植物を観察。 約30分ほどで軍艦岩の船着き場に到着した。
 ここからはうっそうと茂った原生林の山道へ。 汗だくになりながらも、学園生たちの観察眼は周囲に向けられる。 さっそく、大きな眼がかわいいキノボリトカゲや全身が緑色のサキシマカナヘビを見つけて大喜び。
 上り続きだった山道が若干の下りにさしかかると、パッと視界が開けた。 そこは、白い飛沫(ひまつ)を舞い上げ、豪快に水が流れ落ちるマリユドの滝だった。
 「先生、この丸い穴はなんですか」。 足元の砂岩の岩床を見回すと丸い穴が所々に。 中をのぞくとカゲロウの幼虫やヤゴなどの水生昆虫が住んでいた。 「これは、ポットホールといい、水流によって削られてできたものです」と、答える大嶺教授。
 天然記念物のセマルハコガメの“見送り”を受けて帰路についた学園生ら。 大自然の中で学び、呼吸した充実感に日焼けした顔がさわやかであった。




講座から


八重山の自然/沖縄大学教授 大嶺哲雄氏

 石垣島や西表島には亜熱帯のマングローブ林などの原生林の植生が見られ、多くの貴重な昆虫や野鳥、動物たちも生息しています。しかし、現代の急速な開発の波にさらされ、ある種の生物は絶滅にひんしています。
 これを、食い止めることは、私たちに課せられた使命です。 残された大自然を、人類の大切な財産として守らなくてはなりません。 人間が自然と調和し、生活していくところに環境問題の解決のカギがあるのではないでしょうか。 太古からはぐくまれてきた、このすばらしい自然に触れて環境保護の重要性と在り方を学んでほしいと願っています。


沖縄トラフの構造/琉球大学助教授 木村政昭氏

 「沖縄トラフ」の“トラフ”とは、和舟の底のような平らなくぼみを意味し「舟状海盆」とも呼ばれます。
 近年の海底の地質構造の研究、調査の結果、琉球弧が大陸との陸橋であったことを裏付ける事実が確認されたことにより、大陸からの動植物が北上し沖縄諸島に渡ってきたと考えられます。 その後の幾多の地殻変動により陸橋が水没し、各島々に隔離された動植物が現在まで生き残ったのです。
 この八重山諸島は、生物学と地質学の接点を持った研究には格好のフィールドで、古代の地球の歴史に触れる良い機会となったことでしょう。




霧島フィールド

桜島望む雄大な景観

地図

豊富な植生と野鳥を調査

標本採集、牧場実習も




硫黄山
硫黄山で霧島火山の地形、特色の説明を受けるメンバー(えびの高原で)
 
野草
珍しい野草を見つけ、講師からその特徴を聞く(えびの高原で)
 
講座
第3回講座「霧島の植物」について学習
 一方、霧島フィールドを訪れた生徒は初日、高千穂河原ビジターセンターで、霧島屋久国立公園の自然や人文景観の生成をパネルや模型、写真等で学習。 更に夜の第1回講座では、自然観察指導員の谷山義則・寿美子氏、中野シゲ子氏の担当で「霧島の自然」をスライドを活用して勉強した。
 2日目は、えびの高原の自然観察。 えびの高原ビジターセンターで、大自然の様子や生息する動植物のスライドを見たあと、実際に白紫池などの池めぐり自然研究路を歩いた。
 耳を聾(ろう)するハルゼミの鳴き声の中を進むと、アカマツに巻き付いたツタウルシや、ミズナラに寄生したヤドリギ、樹齢500年を超えるスギの巨木もあって、生徒たちも興味津々。 途中、白鳥山北展望台から見渡す見事な景観には、思わず歓声が上がった。
 道に小さな動物の糞(ふん)。 テンの糞らしい。 更に行くと、地表から1mほど樹皮がそっくりなくなっているヤマウルシの木。 シカが食べたのだという。 イノシシが、ミミズやムシを探した跡もあり、何十種類も生息する動物たちのおう盛な生活欲を垣間見た。
 帰途、えびの高原ビジターセンター付近では、山の斜面からシカが首を出しているのを見付けて大騒ぎ。 「ほら、あそこに」と、双眼鏡を取り出して観察するなど、はじめて見る野生動物の姿に大満足。 また、花をつけた食虫植物のモウセンゴケも興味深く観察した。
 夜の第2回講座では、「霧島の野鳥」をテーマに、日本野鳥の会会員の石井久夫氏が鳥の形態と特徴について講演した。
 3日目は、鹿児島市の歴史資料センター黎明館を訪れ、歴史と文化を学習。 そして日置郡松元町にある石谷ポニーランドヘ。 厩舎(きゅうしゃ)の掃除、草取り、飼料にするトウモロコシの収穫など牧場実習を体験。 炎天下で汗を流した後、乗馬教室も。
 第3回の講座は「霧島の植物」をテーマに植物研究家の杉本正流氏が講演。 顕花植物と隠花植物の違いや帰化植物、毒草、薬草といった植物の種別を解説。 スライドを使用しながら、学名だけでなく、和名を通して、どうして名付けられたのかを分かりやすく説明した。
 翌日には、霧島フィールドの探索とともに、植物標本の作り方を実習。 新聞紙を使って、採取したノギランやキンシバイ、エゴノキ、ヤブイバラなどを乾燥させた。
 このほか23日から3日間、早朝に探鳥会が行われ、オオルリやシジュウガラ、キセキレイなどの存在を確認。 日ごろ聞けない鳥の鳴き声に感嘆することしきり。




講座から


霧島の野鳥/日本野鳥の会会員 石井久夫氏

 一般に鳥は、留鳥、漂鳥、夏鳥、冬鳥、旅鳥に大別され、留鳥以外はその時期でないと見ることは出来ません。 鳥は体温が高く、43度ぐらいを保持。 腸が短く、食べたものをすぐ排せつするようになっており、飛ぶために、体が重くならない仕組みとなっています。 だから眠る時以外は、いつも食べているのです。
 鳥の名前は、その鳴き声、色、習性などによってつけられることが多く、例えばカッコウはカッコウと鳴くことからきています。 また目の周りが白いからメジロ、八色の毛をもつのでヤイロチョウといいます。


霧島の植物/植物研究家杉本正流氏

 植物と人とのかかわりの歴史は古く、それだけに薬草、毒草、食草などその多くが研究し尽くされているといえます。 えびの高原には、ミヤマキリシマ、ノリウツギ、イソノキなどをよく目にしますが、キリシマミズキも珍しいもの。 また、世界でここだけにしかないノカイドウがあり、国の天然記念物に指定され、保護されています。
 植物の和名には、生活に密着したものがあります。 健胃薬のセンブリは、千回煎(せん)じたが、まだ効き目があったことから。 また非常に燃えにくいためナナカマド、花はきれいだが葉のにおいが臭いためヘクソカズラと呼ばれるものもあります。


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