第6回創価学園のサマーセミナーから

生きた大自然が「教室」
生態系の調和に感動!!



<聖教新聞 1993年7月26日> より引用 (写真を含む)


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 「自然は大きく、そしてもろい。この自然は、絶対に残したい」。 生きた大自然を「教室」にして、さまざまなことを学んだ東京、関西校の学園生は異口同音に語る−−。 恒例の創価学園のサマーセミナーは今年で6回目。 別海(北海道)、霧島(鹿児島)、八重山(沖縄)の各フィールドでのセミナーを紹介する。



別海

湿地に水と土と動植物が共存

ゴマフアザラシ
尾岱沼から野付半島へ向かう船上の学園生を、ゴマフアザラシが歓迎
遺跡見学
海風に揺れるエゾカンゾウ(野付半島で)
 「ほら、ここに面白い形の草が生えているよ」。 日本一といわれる砂嘴(さし=沿岸流で砂礫<されき>が海中に細長く堆積<たいせき>したもの)・野付半島へ船で渡り、降り立った学園生に、北海道教育大学の仁和田久雄講師が語りかける。
 「アッケシソウといって、泥質の海岸(塩湿地)に生える塩生植物です。 そこで小さな白い花をつけているウミミドリも同じです。 これらは、波の浸食から海岸線を守るんですよ」
 ここは、鳥類の楽園。 船上では、愛らしいゴマフアザラシにも歓迎された。 「海岸に打ち上げられたアマモが見えるでしょう。 これは海中では魚の大事なすみかになっているんです。 その魚たちは、海鳥やアザラシの大事な餌になるんです」 (日本野鳥の会・北海道ブロック協議会事務局長・三浦二郎氏)
 ハマナス、エゾカンゾウが咲き乱れる野には、小鳥たちが楽しげに遊ぶ。海岸には、タンチョウのつがいも観察できた。
遺跡見学
常呂町教育委員会の武田修氏の案内でフィールド内にある「尾岱沼(おだいとう)8遺跡」を見学。擦文文化の竪穴住居跡が、数10mで隣接している
標津湿原
標津(しべつ)湿原を歩く。見渡す限りの草原は、野鳥の楽園

コムクドリ
バンディング
三浦氏の指導で標識調査(バンディング)を。4日間で10種38羽に標識リングをつけて放鳥
遺跡見学
別海町内の酪農家で牧場作業を実地体験
 標津(しべつ)湿原を歩く。 見渡す限り緑の野原に、ボタン雪が降ったようなワタスゲの花。 よく目をこらすと、木道ぞいには、ツルコケモモの小さなピンクの花や、モウセンゴケの奇妙な形の捕虫器(葉)が見える。
 「何の変哲もない草原だと思ったら、いろんな草花が咲いていました」。 最初は何も見えなかった学園生も、次第に湿原の微妙な植生の変化を読み取る。
 「この鳥のフンをごらん。これは、ガンコウランの実を食べた鳥のものだよ」と三浦氏。 木道の上には、紫黒色の実が、ほとんどそのまま残ったフンが。 「これは、湿原にくる鳥たちのごちそうです。 この植物を人間が踏んでしまったら、まず3年は元に戻りません」 「責任重大ですね」。 学園生が真剣な目で聞く。
 「先生、平らな草原に、背の低い木が一直線に並んでいます」 「よく、ごらん。その木立の間に、溝があるでしょう。 昔、湿原を開墾しようと人間が掘った溝です。 そこから湿原の水が抜け、溝の両側が乾燥化したんです。 条件が少しでも変わると、植生は大きく変わります」
 この湿原は、厚さ約3mの泥炭に覆われる。 泥炭は、植物が、ほとんど腐らずに堆積したもので、1年に約1mmずつ成長するといわれているから、この地の泥炭は実に3,000年の歳月をかけた、水と植物の芸術作品だ。
 湿原は、その名の通り湿った地。 湿潤(しつじゅん)な土地に寒冷などの条件が加わると、土壌は貧栄養化し、そこで育つ植物は限られる。 過酷な条件で生育できるミズゴケやヨシ、ガンコウラン、ツルコケモモなどの小型の低潅木(かんぼく)が多く発達する。それぞれに、厳しい生息条件に適合できる構造をもつ。
 生物が生息しにくい条件を植物が徐々に変え、何百年、何千年の間に生物の宝庫につくり変えていく。 だが、もともと過酷な条件に生息するだけに、微妙な環境の変化に弱い。 少しでも乾燥化すると、より強い植物がたちまちはびこり、湿地はその貴重で多種多様な植物を失っていく。
 野鳥は、天敵の近付けない湿原をすみかや餌場に利用する。 タンチョウは、ヨシ原に巣を営み、そこを流れる川の中などで眠る。 厳しい条件が、かえって、傷付きやすい動物たちのゆりかごをつくるのである。 湿原がなくなれば、彼らはいなくなる。
 「自然は、本当に微妙なバランスの上に成り立っているんだな、と改めて感じました」。 フィールド内に広がる湿原を見渡しながら、ある学園生は言った。 「昨年、八重山でのセミナーに参加してから皆、ゴミを無神経に捨てられなくなったんです。 ガラスのような自然は、そんなところから傷付く気がして」




霧島

高原の植生、火山の地形を観察

 北西から南東に約20km、幅約9kmの楕(だ)円形の地域に、25の火山を擁する霧島山(総称)。 そのうち6つが火口湖。今なお噴煙を上げているものもある。 鹿児島県霧島を訪れた学園生は、大自然の景観に感動の面持ち。
 第1日の高千穂河原ビジターセンターでは、日本で初めて指定された霧島屋久国立公園の自然や人文景観の生成をパネルや模型、ビデオ、写真等で学習。
 夜の第1回講座では、自然観察指導員の谷山義則氏、中野シゲ子氏が、スライドで「霧島の自然」を紹介。 特に、溶岩火山、成層火山、砕屑(さいせつ)火山、二重式火山に分けられる火山の形や生成、動植物の生態などを学習した。
霧島連山
雄大な霧島連山に歓声をあげる学園生
池めぐりコース
池めぐりコースには樹齢500年を超える巨大スギが
天体観測
星座を見上げる生徒たち。その神秘の世界にロマンを馳(は)せていた

アカショウマ
アカショウマ
コバノクロヅル
コバノクロヅル
ヤマボウシ
ヤマボウシ
 2日目は、えびの高原の自然観察。 大自然の様子や生息する動植物のスライドを見た後、池めぐり自然研究路を歩いた。
 この日の天候は、「霧島」のごとく霧雨。 カッパを着てのフィールドワークとなったが、アカマツに巻き付いたツタウルシや、ミズナラに寄生したヤドリギなどの植生も観察。
 夜の第2回講座では、「霧島の野鳥」をテーマに、日本野鳥の会会員の石井久夫氏が鳥の形態と特徴について講義。 録音された鳥の声をテープで流しながら、野鳥の習性や鳴き声の特徴を紹介した。
 3日目は、鹿児島市の歴史資料センター黎明館を訪れ、歴史と文化を学んだ後、日置郡松元町にある石谷ポニーランドヘ。 厩(うまや)の掃除、草取り、飼料にするトウモロコシの収穫などの牧場実習を。乗馬教室も開かれ、皆、大喜び。
 第3回の講座は「霧島の植物」をテーマに植物研究家の杉本正流氏が講演。 顕花植物と隠花植物の違いや、毒草、薬草といった種別を解説。 スライドを上映し、学名だけでなく、和名を通して、どうしてそう名付けられたのかを説明した。
 続いて柿田甲子郎氏が、「霧島の地質」について講演。 シラスと呼ばれる土壌の生成、特質、分布などを説明。 乾燥した時は強度の大きいこの土壌も、水を含むともろくなり、しばしば災害を引き起こしてきたことを例に、土壌と水の関係を語った。
 翌日は、早朝に探鳥会が行われたほか、植物、野鳥、自然などのテーマ別学習を霧島フィールドで実施。 花をつけた60種類の植物を観察したほか、鳥の巣箱を作り、自分たちの手で木にとりつけるなど、野鳥への真心こもるプレゼントとした。




八重山

亜熱帯原生林は“生物の宝庫”

カンムリワシ
石垣島でカンムリワシ(特別天然記念物)を発見
コノハズク
アコウの木に巣を作ったコノハズク
 「ネーチャー・イズ・ティーチャー(自然は教師である)。 さあ、一緒に動いて汗を流しましょう」−−沖縄大学の大嶺哲雄教授のこの一言で、八重山フィールドでのサマーセミナーは幕を開(あ)けた。
 「どうしてここにだけ、ヤエヤマヤシの群落があるのか、分かるかい」。 石垣島・米原(よねはら)に着いた時、早速、大嶺教授から問い掛けが。
 ヤエヤマヤシ(ノヤシの1属1種)は、石垣島と西表島にのみに自生し、国の天然記念物に指定されており、同地域の樹高は15〜20mに。
 海岸線から道路、道路から農作物の植えてある畑、畑から山地の斜面、という3層の段丘の中で、ヤシが生えているのは3段目の段丘のみ。
 鋭い観察の目を周囲に向けながら、蒸し暑い原生林をくぐり抜け、汗びっしょりになって展望台に上った。 新鮮な空気を吸いながら、教授は「1層、2層は昔、海中に沈んでいたのではないか」との推測を披露。 考えあぐねていた生徒たちの目がパッと輝いた。
 「自分で仮説を立てて、それを証明するのが科学。皆さんもそういう経験を積んでほしい」
 道中、他の植生の分布についても説明。 「植物は何一つむだなく、互いに連関して生きている。自然の情報を変えると、森林は破壊されます」。 東南アジアの例を引きながら訴える教授の話に、生徒はぐいぐい吸い込まれる。 植物社会の成り立ちを学び、自然保護の重要性を深く心に刻んだ。
 また、この間、日本野鳥の会・八重山支部の島袋憲一事務局長が野鳥について説明。 「今、鳴いているのはメジロです。繁殖期なので、縄張りのアピールをしているんだよ」
 更に、名蔵川河口付近のアンパル湿地帯ではバードウオッチングや、第1回のマングローブ林の定点観測も実施。
 “東洋のガラパゴス”といわれる西表島に渡ってからは、サキシマスオウノキ群落の板根(ばんこん)の観察の後、浦内川を遡行(そこう)。 マリュードの滝、カンピレーの滝を見学し、周囲の原生林の特徴を学んだ。 まさに太古の自然を残す“生物進化の島”を、目で見、手で触(さわ)り、足で歩く充実した時を過ごした。
アンパル湿地帯
石垣島・アンパル湿地帯で、マングローブ林や野鳥についての説明を真剣に聴き入る
アカショウマ
浦内川を遡行(そこう)し、軍艦岩から徒歩約1時間。亜熱帯植物の生い茂るジャングルの中にあるマリュードの滝(西表島)
コバノクロヅル
巨大な板根(ばんこん)を観察したサキシマスオウノキ群落では、オキナワアナジャコの巣も
コバノクロヅル
OHPを使用しての大嶺教授の講座を熱心に受講

 これらの野外調査とともに、「八重山の自然」(大嶺教授)、「八重山の自然と鳥」(島袋事務局長)、「西表の自然と人間」(国定特別保護動物増殖検討委員会の親盛長明委員)、「琉球弧の謎(なぞ)、そのルーツを探る」(琉球大学の木村政昭助教授)の興味つきない講座も受講。
 ある時は、食事のオカズを取り上げて「みなさん、これは何でしょう」と大嶺教授。 “生きた講義”はいつでも、どこででも行われる。
 ある生徒は語っていた。 「自然は本当に偉大だと思います。 どんな環境にあっても素晴らしい知恵を出して、必死に生きていこうとしている。 ここにある同じ種類の植物でも、一つ一つが個性豊かに輝きながら生きていると感じます。 人間がいくら知恵をつけても、悪く使えばこの自然は破壊されてしまう。 “いかに自然を守り、自然と共生するか”−−このことを、体で実感しました」


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