第7回創価学園国内サマーセミナーから


海が、山が、大地が、教えてくれた!

「21世紀人」=大自然と生きる人


<聖教新聞 1994年7月26日> より引用 (地図・写真を含む)


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地図
 

 「ここには、本物の自然があります。 生きることの壮大さ、無限の生命の息吹に打たれます」−−創価学園(東京校・関西校)の国内サマーセミナーは、今年で7回目。 21日から25日まで、学園生は別海(北海道)、八重山(沖縄)、霧島(鹿児島、21〜24日)、霧ケ峰(長野=関西中、22〜24日)の各フィールドで、大自然を教室に学習した。




別海

北海道の原野をゆく /  ここは野鳥のパラダイス


無駄のない生命の連鎖

別海
草原の小道をゆく。見るものすべてが自然の贈り物――。野鳥たちの声に包まれながら、野付半島で動植物の生態を観察。生命の神秘に触れる瞬間
 道東の夏を彩(いろど)る花々に目をやりながら、野付半島の野を歩く(22日)。 潮風が、ハマナスの甘い香りを運んでくる。 細長い弧(こ)を描いてオホーツク海に突き出た日本一の砂嘴(さし)は、波の穏やかな湾をつくっている。
 湾側にできる干潟(ひがた)は、水鳥やゴマフアザラシ、魚介類の楽園。 シマエビ漁の打瀬船(うたせぶね)が静かに行き交う。
 「波打ち際には、アッケシソウ、シバナ、ウミミドリが生えています。 厳しい環境に、こうした塩生植物が息づいています。 目立たないが、その根が、砂の流出を防ぎ、湾を守ります。
 これが枯れると、豊富な有機物としてウミニナなどの魚介を育て、そうした魚介を食べる魚が水鳥やアザラシのエサとなるんです」(日本野鳥の会北海道ブロック協議会・三浦二郎事務局長)
 耳を澄ますと、オオジュリン、カワラヒワなど、野鳥の鳴き声が聞こえる。 フィールド・スコープで観察してみる。
 よく目を凝(こ)らして、ようやく見えてくる小さな生き物たち。 「どれ一つとっても、無駄なものはないんですね」――それまで何も見つからなかった生徒の目に、生命の神秘が映り始めた。


生きるものの“強さ”

別海
別海フィールドは、自然の宝庫。森林を歩けば、そこかしこに愛らしい野鳥たちの姿が
 「先生、このヨモギは、私たちが見るものより、だいぶ大きいようです」
 背丈ほどに伸びたヨモギ。 「その通りです。北海道では、同じ種でも、一般的に本州のものより大きくなるのです。 ここに、オオバコとエゾオオバコが並んで生息していますね。 葉の形がだいぶ違うでしょう。 エゾオオバコは、葉の裏に、びっしりと白い毛が生えています。 これは、寒さに耐える働きをすると考えられています」
 「塩分の高い湿地に生きる植物といい、このエゾオオバコといい、環境に適応しようと構造を変えてきた植物たち。 どこまでも生きようとする生命の“強さ” “負けじ魂”が感じられてなりません」。 ある学園生は語っていた。


自然を壊す人間、自然を守る人間

 野付半島では、タンチョウのつがいを至近(しきん)距離で発見。 肉眼でも、はっきりと、その美しい姿が確認できた。
 「タンチョウの生息数は増えています。 しかし、生息に適した場所は、年々、減っています。 つまり、一羽あたりの生息域が狭くなっているんです」。 翌日の講義で、動物写真家の福原幸昭氏が説明した。 自らがカメラに収めたスライドで、野鳥たちの現状を訴えた。
 「重油で真っ黒になったハクチョウの写真。 釣り糸が羽と脚(あし)にからまって動けなくなった水鳥が、死の瞬間を待つ姿。 どれも胸をえぐられる鮮烈な映像でした」
 大自然の中で学ぶ学園生。その自然の破壊も、身近なできごととして、とらえることができた。
 「自然を壊すのも、守るのも人間です。 北海道の大自然の前で、人間は小さな存在だと感じました。 でも、その人間の破壊の力は、あまりにも大きいと思います。 今回のセミナーは、まず、自分が変わるための大きな一歩でした」
フィールドの生き物たち
別海
特別天然記念物タンチョウ
別海
ゴマフアザラシ
別海
ハマナス
別海
クルマユリ

野鳥・植物・菌類・古代史 専門家とともに

別海  連日、夜には、専門家を招いての講義が。
<1日目>「道東の自然」三浦二郎氏…別海周辺の自然を学ぶ。
<2日目>「道東のキノコ」北海道教育大学・仁和田久雄講師…自然界で見直される菌類の働き。
<3日目>「オホーツク文化」常呂町教育委員会・武田修氏…道東に特有の古代文化に迫る。 「道東の動物」福原幸昭氏…動物写真家が見た生命の営み。
 この講師陣のほか、北海道大学の牛沢信人名誉教授(植物)、動物写真家・寺沢孝毅氏(野鳥)、高橋直氏(植物)とともにフィールド・ワークも。




霧ケ峰

湿原の夏を彩る植物相

霧ケ峰
日本を代表する高層湿原・八島ケ原湿原の植生について専門家の説明を受ける生徒たち
 「これ何の花かなぁ」。薄紫のふっくらとした花びら。 「きっとヤマホタルブクロや」
 生徒たちは、高原の植物の名を次々とメモに取っていく。 どれだけ見付けられるか、皆で競争だ。
 数歩歩くと今度はキリンソウ。そしてウツボグサ、シシウド……。 目を見張る植生の多様さ。40分余りで、メモには30種近くの名が記される。
 照り付ける日差しで皆の顔は赤みを帯び始める。
 長野・霧ケ峰高原での関西創価中学校のサマーセミナー。 2日目は、霧ケ峰湿原植物群落の一つ、踊場(おどりば)湿原を訪れた。
 前日は、八島ケ原湿原などを歩いた後、信州豊南女子短期大学の森本健一教授から「霧ケ峰の自然」と題する講義を受けた。
 動植物の精妙な調和が湿原を支えていること。 1,300種近くからなる植物相。 増え続ける帰化植物が高山植物の生態を侵していること。 観光道路など急速な開発の進行が、高原の様相を一変させてしまったこと――。
 予備知識は十分だ。学んだことを目で確かめる。肌で実感する。 そこには、掛け替えのない発見があり、成長がある。
 「ヒメジョオンが増えている。ここに、もともとなかった植物が生態系の調和を崩している」
 「開発で森が壊されている。 人間が真剣に自然を守ることを考えないと、このままでは、地球全体が危なくなる。 私も何か役に立ちたいと思う」
 生徒たちは、雄大な自然に抱かれながら、自然の発する声なき声に耳をそばだて始めた。




霧島

高原の植生、火山の特色を学習

霧島
雄大な韓国(からくに)岳を仰ぐ、白鳥山の展望台で、火口湖についての説明に聴き入る
 「見よう 聞こう 発見しよう!」を合言葉に、霧島フィールドでのサマーセミナーは幕を開けた。
 22日、霧島屋久国立公園内のえびの高原へ。 低地の暖帯から高地の温帯まで、変化に富んだ植物相の垂直分布を学んだ。
 「これはノリウツギ。本当の花はここだよ」。 花びらのように見える白いガクは装飾花で、小さなツブ状の部分が実際の花。 これは、虫などを引き寄せるための“飾り”であると、植物研究家の杉本正流氏の説明を受ける。 葉が亀の甲羅(こうら)に似ているオオカメノキ。 植物には語源があり、名前の由来に感心することしきり。
 イヌツゲの樹皮の根元の部分がはがれて白くなっている。 「これはシカが食べたんだよ。やがて、この木は枯れてしまう」。 シカがここまで出てくることに驚くとともに、シカのえさはどうなっているのだろう、と生態系にまで思いをはせる。
霧島
「ほら、ここに実がなっているよ」――えびの高原での植物調査
霧島
オオカメノキ
霧島
ノリウツギ
 森林のなかを歩き、急な坂を上り切ると、涼風が吹き抜け、一気に視界が開けた。 そこは白鳥山北展望台。眼前には霧島山の最高峰、標高1,700mの韓国(からくに)岳がそびえる。 火山ガスと水蒸気の爆発で山体が吹き飛んだ爆裂(ばくれつ)火口が見える。 ここ霧島火山群はコニーデ、ホマーテ、アスピーテなど、さまざまな形態が見られ、さながら火山の“見本市”。 眼下には、コバルトブルーの湖水をたたえた火口湖が。 「なぜ?」「どうして?」と、その生成過程にも興味を示し、“科学する心”を忘れない。
 23日早朝には、日本野鳥の会会員の石井久夫氏の案内で探鳥会を。 ヒヨドリ、ヤマガラ、エナガの鳴き声を確認した。 また、フィールド内の探索では、歩く道すがら、小さな花をつけた植物を見つけ、「これはキヌガサギクですね」と学園生。 たとえ、分からないことがあっても、すぐにその場で同行する講師に質問。 自分自身の目で見、手で触(さわ)り、足で歩く充実した時間。まさに大自然を“教室”に、野に咲く花、伸びゆく草木と楽しい“対話”を続けた。
木星  一方、夜間には天体観測も。 22二日、天体望遠鏡で、木星にシューメーカー・レビー第9すい星(SL9)が衝突した痕跡(こんせき)を確認。 “1,000年に一度の天体ショー”に、大きな歓声が上がった。 澄み切った空気のなか、宇宙へのロマンを感じさせるひとときとなった。
 これらの野外調査とともに、「霧島の自然」(谷山義則氏)、「火山灰土壌について」(柿田甲子郎氏)、「スター・ウオッチング」(今別府純雄氏)、「霧島の植物」(杉本正流氏)、「霧島の野鳥」(石井久夫氏)の興味つきない講座も。 日中のフィールドワークと相俟(あいま)って、更に理解を深めた。
 雄大な大自然を教室にしての感想を、ある学園生はこう語った。 「道端に咲く小さな花に目を向ける観察力が養われました。 身近な環境にも目を向け、自然保護の大切さを訴えていきたい」




八重山

自然が織り成す“神秘の世界”


石垣島

“海の宝物”サンゴを観察

石垣島
「こんなに甘そうなパイナップルが取れたよ!
石垣島
青く澄んだ“神秘の世界”。サンゴ群は、かけがえのない“海の宝物”
 「オーリトォーリ!(いらっしゃい!)」――太陽光線が燦々(さんさん)と降り注ぐ八重山群島の主島・石垣島。 オオゴマダラチョウやブーゲンビレアなどの歓迎を受けるなか、八重山フィールドでのサマーセミナーがスタートした。
 沖縄・那覇の南西約450kmの海上に浮かぶ石垣島は、周囲をサンゴ群に囲まれた、世界でも有数の隆起サンゴ礁の島。
 なかでも、エメラルドグリーンに輝く川平(かびら)湾で、学園生は「グラスボート」(床面がガラス張りになっている船)に乗り込み、サンゴを観察した。
 「すごい! 水が透き通っている。あっ、あのサンゴ、花みたい」
 「うん、それはサンゴの赤ちゃんだね。ところで、サンゴは動物、植物、どちらか分かるかな」
 沖縄大学の大嶺哲雄教授の説明に真剣に耳を傾ける学園生たちも、この質問には一瞬、「あれ、どっちだっけ?」。 しかしすぐに「動物です! サンゴは卵を産みますからね」と。
 グラスボートからは、川平湾特有の“ジャガイモサンゴ”(シコロサンゴ)をはじめ、エダサンゴなどが見られ、そのすき間からは直径30cmほどのシャコガイが、口をパクパク開けている。
 その横を通り過ぎるのは、青く輝くコバルトスズメダイ。 自然が織り成す死死神秘の世界死死に、学園生たちはすっかり魅了された。
 「サンゴは魚や貝の“アパート”です。 そして、魚の糞(ふん)や貝などの老廃物なども吸収している。 ここに、自然の共存の姿があるんです。 でも、サンゴが汚染で住めなくなってしまった海というのは、二度と美しい姿に戻らないんです」と同教授。 学園生たちも、“自然との共生”を、自分たちが真剣に取り組んでいかねば、と決意を新たにした。


西表島

サキシマスオウノキの“板根(ばんこん)”を調査

西表島
マリウドの滝を背に記念のカメラに
 見渡す限りの大自然が広がる西表島。 “動植物の宝庫”と言われ、沖縄本島に次いで、2番目の大きさ。
 島のほとんどがジャングルに覆われ、沖縄に残された“秘境”。 マングローブ林に囲まれた、巨大な屏風(びょうぶ)のような根(板根<ばんこん>)をもつ、古見(こみ)のサキシマスオウノキの群落に。
 「うわー、僕の背よりも高いや」
 地上高くせり上がった、その独特の奇観。なかには樹齢400年のものもある。
 「この根は非常に浅くてもろく、根としての役目を果たしていないんです。 また台風が来ると、すぐにバタバタ倒れてしまう」と説明する大嶺教授。
 ちょうど倒れているサキシマスオウノキを発見し、すぐに“根っこ”を観察。
 「本当に、根が浅いなあ。何でこんな奇妙な形をしているんだろう」
 未知な物に対する探究心で、死死豆学者死死たちの目が輝いてくる。 アオギリ科の植物で、「板根」をつくるのは珍しい。 西表ではサキシマスオウノキのみで、この原因はまだ詳しく解明されていない。
 「よし、それなら僕がその謎を解いてみせよう!」と、頼もしい発言も。 “東洋のガラパゴス”と呼ばれる大自然を“先生”に、「学びの青春」を誓い合うセミナーとなった。
西表島
「この根っこは、何でこんな形をしているんだろう」(サキシマスオウノキの群落で)

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