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創価学園

緑のオアシス求めて

別海フィールド研究グループ



<聖教新聞文化欄 1989年6月15日〜7月13日 毎週木曜日掲載 全5回> より引用 (写真を含む)


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  1. 湿原と森林
  2. 教育や学術研究に貴重な存在

    photo1
    フィールド内の「ヤチボウズ」
     創価学園別海フィールドは北西に当幌川が悠然と流れる。 北東は国道を隔て、オホーツク海に面したロマンと夢広がる大地だ。 ほとんどが湿原と森林で、まさしく“緑のオアシス”だ。
     このフィールド一帯は、その昔、海になったり、陸になったりしながら、約6,000年前に現在の地形になったといわれる。
     まずフィールドの正門から入って行くと、ミズナラの広葉樹林が左右に広がり、やがて湿原が現れる。 更に行くと火山灰等でできた標高23mの丘陵の高台だ。 そこから見た湿原は広大で、このフィールドの約1/3を占める。
     この湿原はまさに植物たちの宝庫だ。 特に子供の頭のような丸い形をしたヤチボウズは、群れをなして自然の不思議さを感ぜずにはいられない。
     そこにはヤチマナコとよぶ底なし沼もあるといわれ、ヨシ、ヤチスゲ、ツルコケモモ、ミスゴケ、ワタスゲなどの草本とヤチハンノキ、ヤチヤナギなどの灌木も勢力を誇示している。
     丘陵地の高台を通り抜けた、その奥に、涌き水によって形成された湿地帯がさらにある。 そこにはヨシが生い茂り、またミスバショウやヤチハンノキなどが密生して人の侵入をさえぎる。
     これら湿原は景観的にも、地史的にも、四季折々の環境の変化とうまくマッチし、このフィールドの“自然と緑”に非常に重要な役割を果たしている。 まさしく“大自然の博物館”だ。
     また湿原の周囲に広がる森林は、典型的な二次性の落葉広葉樹林で、湿原の周辺にはハンノキ、ヤチダモなどが、また丘陵地にはミズナラ、ヤマハンノキなどが立ち並ぶ。
     かつては、フィールド内の森林は、山火事で失われたり、薪炭材などに利用された。 今では防風林や防霧林として保護され、すっかり回復し、道東の森林を代表する植生となっている。
     また当幌川の河畔に立つと、300年を超すようなハルニレの巨木が何本も並び立つ。 遠い昔、このような巨木がこのフィールド内にもうっそうと生えていたのだろう。
     昨夏より、創価学園生は、このフィールげを訪れ、サマーセミナーを行っているが、自然に触れた喜びが今も、身に染みているようだ。
     北海道大学の伊藤浩司教授は指摘している。 「最近、湿原や森林の姿が少なくなっている中にあって、これだけの自然が残っていることは、学術的にも大変な価値があり、また教育の上からも、貴重な存在である」と。 それだけに私達は“緑のオアシス”ともいうべき、このフィールドを大切に守り、育てていきたいと思っている。


  3. 野鳥達の楽園
  4. 抜群の生息環境と自然度の高さ

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    エサ台にむらがるシメとカワラヒワ
     別海フィールドはさまざまな野鳥達にとってすばらしい楽園である。 まず青、白、黒の華やかな羽を広げ、ミズナラ林の中をふわふわと飛ぶミヤマカケス。 ジャージャーというしわがれ声を出しながら、とぼけ顔で地面をつつき、昆虫類や木の実を探す仕草は、いかにも愛嬌がある。 針葉樹で日光沿を楽しんでいるのはコムクドリだ。 また珍しいものにはホシガラス、ルリビタキ等も確認された。 昨夏のサマーセミナーで、創価学園生は牧口森林公園の中に巣箱を設置した。 先頃、その一つの巣箱にニュウナイスズメが巣材をくわえ、営巣を始めた。 生徒達の温かい真心が野鳥達に通じたのだ。 公園内を歩いていると、雛にせっせと餌を運ぶコアカゲラや巣穴を掘っているコゲラの姿も見られる。
     ところで野鳥達にとって辛いのは冬の食事。 そのために冬期間だけは給餌をしなければならない。 地元「野鳥を守る会」のメンバーが餌の補給をしてくれているが、そこにはシジュウカラ、ゴジュウカラ、ハシブトガラ等のカラ類をはじめ、スズメ、シメ、カワラヒワ、アオジ等がひしめき合って餌をついばんでいる。 時折“ぼくも仲間に入れて”と言わんはかりにアカゲラがやってきて、ヒマワリの種を横取りすることも。 しかし厳寒の冬を越すことができず、雪原に倒れてしまう鳥達もいる。
     フィールドの北側に広がる湿原も野鳥達の生息環境としては抜群だ。 ゆったりと羽を休めているアオサギやスズガモ、またズビヤーク、ズビヤークとやかましく鳴きながら盛んにディスプレー・フライト(求愛のための誇示飛行)しているオオジシギ等、いかにも楽しそう。 ノゴマ、コヨシキリもまた、夕方になると決まって水浴びにくるベニマシコの群れ等も、楽しそうにしている。
     西側の森林の鳥相の濃さ、自然度の高さもすばらしいの一語に尽きる。 人懐っこいヒガラや、頭が白く尻尾が長いシマエナガ、美しい歌声を披露するミソサザイ、くちばしが細長いキバシリ、ドラミングが得意なキツツキ等が決まって頭を出す。 いかにこのフィールドが豊かな自然であるかという証拠にほかならない。
     今、野鳥達にとっては繁殖の最盛期。 当幌川のほとりにはトビが、この5月上旬に抱卵し、6月中旬にその雛がたくましく育っている。 すぐ近くの木では、コゲラが卵を温め、時折、愛らしい顔を巣穴から見せてくれる。 今は子育てに忙しいが、このように大自然に生きる野鳥達の成長は実に早い。
     また川の流域は野鳥達にとって大事な聖域。 川面を元気に泳ぐカワアイサの親子やコバルトブルーのカワセミ、さらにはキビタキ等も元気だ。 さらに野鳥達の鳴く声も見事だ。 「チチヨチチヨジー」と可愛らしく鳴くセンダイムシクイ、「ヒッキービッキー」と声高のエゾムシクイ、「トッピンカケタカ」と独特の節回しのエゾセンニュウ、「チュルルチュカチュカ」と声量のよいシマセンニュウ、他にもウグイス等が鳴いており、まさしく野鳥達のコーラスであり、大自然にとどろくファンタジーだ。
     遠くからカッコウやアオバトの声も響き、コサメビタキやアマツバメの姿も見える。 ほんの30分間だけでいい、川のふちに腰を下ろしただけで、この野鳥達のさえずりの声を聞くことができる。 全身“音のシャワー”を浴びているようだ。 “別海フィールド”ならではのことだろう。


  5. タンチョウとシマフクロウ
  6. 営巣に適した素晴らしい森と川

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    フィールドの内外では端麗な
    タンチョウを観察できる
    (撮影は野付半島で)
     一時、絶滅の危機に瀬していた特別天然記念物、タンチョウ。 しかし最近は保獲の手が伸び、着実に増加しているようだ。
     大正13年、絶滅したと思われていたタンチョウだったが、人跡未踏の釧路湿原で十数羽が再発見されてからは、地元の農家や小・中学生の給餌活動によって増加の一途をたどり、現在、500羽近くまでに回復した。 営巣地も釧路湿原周辺の阿寒町や鶴居村、また別海フィールド周辺や十勝、根室地方にと広範囲にわたっている。
     しかしタンチョウの個体数、中でも成鳥は着実に増えてはいるものの、幼鳥の数はそれほど増えていないという。 これは営巣に適した湿原が少なく、タンチョウにとっては飽和状態なのかもしれない。
     昨年、サマーセミナーで生徒達は、別海フィールド近くの野付半島や風蓮湖でタンチョウを発見し、感動の声をあげていた。 また今年4月、別海フィールド内の湿原にタンチョウが6回も飛来し、地元の人達を喜ばせた。 新しい採食地、営巣地として探索にきているのだろうか。
     現在、植生調査のための永久方形区を8ヵ所、水位変化の調査地を2ヵ所設定し、創価大学と協力しながら湿原の推移を調査しているが、タンチョウが繁殖できるような環境として維持し、保護していきたい。
     一方、森の奥深くにひっそりと暮らす夜行性のシマフクロウであるが、タンチョウに比べ、その正確な分布や個体数ははっきりわかっていない。
     体長が70cm、翼を広げると2m近くにもなるシマフクロウ。 現在、道東を中心に数十羽、多くても100羽弱しか生息していないといわれている。
     北海道開拓以前は全道的に分布し、アイヌの人達は「コタンコロカムイ(村を守る神)」、あるいは「カムイチカップ(神の鳥)」と呼び、歌い続けてきた。
     しかし原始の森林はどんどん伐採され、畑や牧場に変わり、また河川は汚染され、シマフクロウの主食であるサケ・マスやウグイ等の淡水魚もめっきり減少。 「食」「住」両面にわたって、シマフクロウの生活の場は危機的状況に追い込まれているのだ。
     その点、フィールド内の北側の境界を流れる当幌川流域は、魚は豊富であり、シマフクロウの絶好のすみか。 昨年12月、環境庁の委託を受け、シマフクロウの保護、増殖事業に携わっている根室市の山本純郎氏らの協力でフィールド内に高さ80cm、幅60cmの木製の巣相を2個、設直し、すみかを用意した。 シマフクロウが今のところ、ここを利用した形跡はないが、将来が楽しみである。
     ところで山本氏の話によれば、シマフクロウがフィールド内に飛来するようなことがあれば、八割方繁殖するという。 シマフクロウにとって必要なのは、魚の住む川と大木のある森林だ。 そのためにもフィールド内の大半を占める二次林に手を加えず、このまま遷移を進行させていきたい。


  7. 野生のアイドル
  8. 愛されるキタキツネ、シマリス・・・・

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    フィールド内で愛きょうを
    ふりまくシマリス
     今年、別海フィールド内で“野生のアイドル”の代表格であるキタキツネが繁殖した。 巣穴の周りで3匹の子ギツネが楽しそうに遊んでいる。 人間の気配に気づくと、“おっちゃんこ”をし、首をかしげて困った顔をする。 まるで好奇心のかたまりみたいだ。 そのあどけない表情はとても可愛らしく、いくら見ていてもあきない。
     最近、キタキツネの個体数の増加に伴い、子ギツネが交通事故に遭うケースが日立っている。 せめてここだけは安心して暮らしてほしいと願わずにはいられない。
     北海道の動物達の中で忘れることのできないのがヒグマとエゾシカだ。 一般に猛獣と恐れられているヒグマもかつてはこのフィールドで生息していたはずだ。 周辺域の開発状況から考えると、ここではもう姿を見かけることはないだろう。
     一方、フィールド内の湿原や小川の側には、現在もエゾシカの“通り道”がくっきりと刻まれており、それを目撃する人も結構いる。 エゾシカは原生林の立ち並ぶ、しかも林床のササ原の中を、ほとんど音も立てずに歩く動物だが、いま通ったと思われる足跡も時折、見つけることができる。
     また冬のフィールド内の雪原にはたくさんの動物達の足跡も見ることができる。 それはエゾユキウサギのものだが、しかし、その姿を昼間はほとんど見かけることはできない。 キクキツネなどの天敵から身を隠しているからだろう。
     ところが最近、人間に多少慣れてきたのか、もしくは人間の近くが安全と思っているのか、今年5月、施設の近くでこのウサギがピョンピョン跳ね回る光景を見た。 ちょっと緊張ぎみに長い耳をピンと立て、下草を黙々と食べる様子は、なんとも可愛らしい。
     冬季間は純白な冬毛で、春になると茶灰色の夏毛に衣替えをする。 近頃、北海道全域でウサギの数がめっきり減ったと指摘する人が多い。 それだけにこのフィールドの自然度が高いことを証明している。
     フィールド内での動物の中で最も人慣れし、愛嬌をふりまくのがシマリスだ。 人間の両手ですっぼりと包み込めそうな、小さな体でちょこちょこと走り回る。 冬眠から覚めた春には必ず登場し、話題を呼ぶ。
     というのも野鳥用の餌台をすっかり占領するからだ。 すぐそばで小鳥達が怒って奇声をあげてもなんのその。 得意技の“頬張り”をフルに発揮し、おいしそうにヒマワリの種を食べている。
     つい先日、痩せて一回り小さくなったシマリスを見た。 ところが大きなカラスが、そのリスを狙って急降下。 何とか逃げのび、助かったものの、その光景を見て、生き物の世界の厳しさというものを改めて感じさせられた。
     それにしても野鳥への餌付けは冬季間に限られるため、どうしても餌は不足しがちである。 だからヒマワリの種が少しでもあれば、リスのために分けてあげたい気持ちでいっぱいだ。 これら愛する“野生のアイドル達”はみんなの友達である。


  9. 大自然の博物館
  10. 生徒たちにとって絶好の体験学習の場

    photo5
    そよ風に揺れるヒメワタスゲ
     別海フィールドは長い冬が過ぎたあと、あっという間に春から夏へ、夏から秋へと駆け足で通り過ぎていく。 北の大地は、野草たちにとっては特に花の季節が短い。 逆に、見る者にとっては密度の濃さを満喫できる。
     昨年の夏、創価学園ではサマーセミナーを行い、“大自然”を教室にした現地学習を体験した。 その時、フィールド内で確認された植物は、約53種。 フィールドに入って、すぐ左右に広がる湿原の中や、施設の立ち並ぶ丘陵地、その周辺の二次林、そしてフィールドの北側を流れる当幌川の川辺等に、それらの植物たちは精いっぱい生きていた。
     湿原の植物たちから見てみよう。 湿原の植物というのは、氷河期のツンドラ植物の生き残りといわれ、高山植物のコケモモやヒメシャクナゲがこの湿原の中に生えているのも、そのためである。
     湿原一帯の春は立ち枯れたヨシが一面に生え、その芽が出るのも雪が溶け、土の表面が乾く6月になってからである。 そのころになると、ワタスゲやヒメワタスゲが、その真っ白な綿毛を風になびかせる光景はとりわけ美しい。 そしてピンクの可愛らしいヒメシャクナゲやうつむきかげんに咲くトキソウが気品のある花を開く。
    photo6 鮮やかな
    橙黄色の花を
    満開にさせた
    エゾカンゾウ
     夏になると、橙黄色のエゾカンゾウ、紫のヒオウギアヤメなどが湿原を彩り、そして風と雲の動きに秋の気配を感ずるころになると、コケモモなどの実が真っ赤に色づき、そこから一気に秋が深まっていく。
     一方、当幌川の川辺や沼沢地では、まず雪どけを待つかのようにミスバショウが純白の花弁のような仏炎苞を立てて群生し、春の訪れを告げる。 その近くの林床には黒紫色のザゼンソウも姿をあらわす。
     両方とも独特の形をしている。 棒状の穂に小さな花を密生させ、純白と黒紫色の仏炎苞に包まれた様は、いかにも自然の不思議さを感じさせてくれる。 乾いた川岸には、クロユリの花も咲き誇り、夏が近づくと、淡紅色の花を穂のようにつけるホザキシモツケがビッシリと群生している。
     フィールドの中心部の丘陵地帯では、落葉広葉樹の自然林がうっそうと広がり、林内には、人間の背丈ほどもある巨大なフキの群落が見える。 豊かな自然環境を象徴する風景だ。
     特に春から夏にかけてはにぎやかだ。 オオバナノエンレイソウ、マイヅルソウ、オオアマドコロなどの白色の花をつけた植物達もそれぞれの群落を形成している。 さらに花火のような花を咲かせるカラマツソウや紅紫色のハクサンチドリ等が彩りを添えている。
     こうした四季折々の変化を見せる別海フィールドは、まさに“大自然の博物館”のようだ。 人為的に手を加えず、自然のままで観察できることは、学園生にとっても、絶好の体験学習の場。 「自然を体で感ずることができた」「素晴らしい自然環境を守り、育てていきたい」等の感想が、そのことをよく物語っている。


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