エゾシカ
動物の写真は、委嘱研究員・福原幸昭氏 撮影

創大自然植物園と野付半島の自然

三浦 二郎

豊かな自然教育のフィールド

タンチョウ、エゾライチョウ等生息


<聖教新聞 1988年1月7日 文化欄> より引用


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優れた環境が確保 下草はミヤコザサ

シマフクロウ  先日、初めて北海道別海町尾岱沼(おだいとう)にある、創価大学の自然植物園と創価学園の野鳥研究所の敷地を訪れた。
 実は、私は昭和50年春から、54年春までの4年間、尾岱沼の野付中学校に勤務していたので、この附近の自然についてはよく知悉している一人である。そこには、見渡す限りの広大な原野が広がっていたことに驚くと共に、これだけの広い面積があるということは、それだけ優れた自然環境が確保されることであり、自然教育の施設を設置しうる可能性が十分にある、と直感したものである。
 北海道には、まだ自然が豊かに残されているとされている。だが、実際には、さまざまな産業活動や開発行為が進んでいて、十分な面積を自然教育のフィールドとして確保されている場所はといえば、必ずしも多くはないのが現状である。
 敷地の北側に、別海町と標津町の町界になっている当幌川が流れている。この川はサケがそ上することでも知られている。その河畔までのコースを歩いてみると、下草はミヤコザサがびっしりと生えていた。
 このミヤコザサは積雪が60cm以下の地方に生ずる笹で(多雪地帯ではクマイザサが優先している)かつては放牧牛馬の重要な飼料にされていたものである。この敷地内も以前、放牧場であったのであろう。近くに土塁跡が見られる。これは牛馬が脱走しないように土を積み上げて囲ったものである。


ミズナラ、カシワ "落葉広葉樹林"が

ハシブトガラ  林の中には、シラカバ、ハンノキ、ミズナラ、カシワ、ヤチダモ等の木が枝を広げている。いわゆる落葉広葉樹林帯ということで、前記の土塁跡と考え合わせると牧野二次林ということになる。
 この地方では、ミズナラは300年の樹齢に達し、直径1mを超す大木になるが、そこでは見かけられなかった。もし、そうした大木に洞ができていると、今は全道で30羽ほどしか生息しない、とされている天然記念物のシマフクロウの生息営巣の希望がもたれるのであるが、それはちょっと望み薄のようであった。が、森林全体を観察すると、さまざまな野鳥の生息環境としては極めて良好のようである。
 たわわに実をつけたヒロハノキハダ(しころ)の枝先に、ハシブトガラという小鳥が来て、しきりに実をつついていた。ハシブトガラは本州では生息していない珍しい野鳥である。
 林には、エゾマツとかトドマツといった針葉樹は自生していない。ということは、これが根室地方の原生林の特徴で、人々はここを「落葉広葉樹の王国」とさえ呼んでいる。野付半島の景勝地・とどわらが、トドマツの枯木群であり、半島部は針広混交林を形成しているのと対比して考えてみるのも価値のあることである。


自然度の高さ証明 エゾユキウサギも

エゾユキウサギ  林から出て、別の方角に足を向けてみるとその地表には雪が冬の日ざしに輝いていた。その雪の上に、野うさぎ(エゾユキウサギ)の足跡が縦横に走っており、キタキツネの足跡と何回も交錯していた。
 そして更に、エゾライチョウの小股の足跡が道路を横切っているのも発見することができた。エゾユキウサギとエゾライチョウの生息の確認ができたことはうれしいことで、それはそのまま、同園の自然度の高さを証拠づけるものにほかならない。
 北海道の原野では、ひと昔前まではどこにでも見られたこれらの鳥獣類であるが、最近ではめっきり数が少なくなっていることを思うと誠に残念でならない。


素晴らしい"湿地帯" 計画に賛意と期待

タンチョウ  また、同園内にある広い湿地帯もきっとすばらしい環境であるに違いないと思った。湿地帯の中の水は、野鳥にとって水浴びをする等、大事な"聖域"だからである。今回は雪がかぶっていたため、詳しく見ることができなかったが、野付半島で3、4つがい繁殖している、特別天然記念物のタンチョウが遊びにくる可能性がある。
 また、今は野付半島と根室半島の一部にしか認められない大輪のネムロタンポポも春には咲くであろうと想像される。いずれにせよ、同園の、この豊かな敷地内の自然度はすばらしいの一語に尽きる。
 この自然環境を計画的に生かす方途に賛意を表すると共に、そのプランニングの中に、私共が昭和52〜3年度に実施した「野付半島総合調査」のデータを大いに参考にして頂ければ、と思っている。同園と野付半島の奥深い自然をセットしたならば、すばらしい自然教育の場が設営できるであろうと期待している。




三浦 みうら・じろう (日本野鳥の会理事)

 1925年生まれ。 京城師範学校卒。 小学校長、小中学校長を歴任。その間に、根室自然教育研究会を創設主宰。 北海道の野付中学校在勤中に「野付半島総合調査」を実施。 現在、「樽前自然教育研究所」を主宰。 北海道自然保護協会副会長。


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