

創価大学付属自然植物園と創価学園付属野鳥研究所の開設が予定されている別海町・北海道研修道場。 過日、同研修道場で「第1回植生・野鳥総合調査」が実施されたが、そこで明らかになった鳥相等について、参加者の一人、三浦二郎氏(日本野鳥の会理事)に聞いてみた。 今回はその内告を紹介する。
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| 鳥の写真は、委嘱研究員・福原幸昭氏 撮影 |
三浦 昨年11月に初めて研修道場を訪れ、今年7月には第1回野鳥研究サマーセミナー等、2度視察を行いました。
時期的には、11月は北海道で繁殖するほとんどの種類の鳥が本州以南の越冬地に向けて渡去し、わずかな留鳥が林内を巡回するだけです。
7月末はすべての野鳥が繁殖活動を終え、ひなを連れた家族群となってひな達の体力(飛翔力)育成に余念がありません。
8月も野鳥達にとって1年中で一番の大仕事である換羽期(夏までの羽毛がぬけかわり、渡りに備える時期)にあたっています。
今年生まれた幼鳥も衣替えをして成鳥と同じ羽毛に取り替えます。
この時期は、ほとんどの鳥が鳴き声を発することなく、ひそやかに緑陰で餌をとり、体力の補給に努めているんです。
ですから4回の視察とも野鳥の生息状況を調べるには、適さない時期での調査だったといえましょう。
――さて、第1回総合調査での調査方法について説明をお願いします。
三浦 調査方法としては双眼鏡等による視認と鳴き声で判別する方法を組み合わせてのいわゆるバードウォッチングが一般的ですが、今回は鳥類標識調査を加えました。
鳥類標識調査法とは、環境庁の委託を受けた山階(やましな)鳥類研究所が実施している調査で、網等で捕獲した鳥の脚に記号番号を刻印した足環をつけて放鳥し、そのバンディング(標識調査)された鳥が再捕獲されることによって、渡りの経路や年齢が確認されるという方法です。
現在の野鳥の行動のいろいろな謎とされる部分を解明する最も有効な方法です。
――今回、ハシフトガラ、ビンズイ、アオジ、アリスイの4種類の野鳥に標識調査をすることができましたが……
三浦 特にキツツキ料のアリスイは北海道以北で繁殖し、冬季は本州以南で越冬する普通のバードウォッチングでは発見しにくい鳥です。 渡りの前に捕獲し、バンディングしたことによって、来春、再捕獲または観察できたら、この鳥が研修道場のフィールドで生息し、繁殖することが立証されるでしょう。
――研修道場の主だった地域を歩かれての感想は?
三浦 牧草地その他の開発が進んだ根室地方にあって、広大な原生林が残された研修道場のフィールドは、根室地方の原野、湿原の原形を学ぶためにも、また、野鳥の生息環境として、更に渡り鳥の中継点として極めて貴重なものでサンクチュアリ(聖域)的存在です。
――フィールドの特徴と鳥相の関係について、どのように考えることができますか。
三浦 研修道場のフィールドは、ミズナラ、ヤマハンノキ等の広葉樹林で、このような森林には森林性の鳥類の大部分が生息します。
更に、一部にアカエゾマツ、トドマツ等の針葉樹が植林されているので、針葉樹林を好むヒガラ、キクイタダキ等の小鳥も生息する可能性があります。
根室地方は針葉樹林が少なく、ヤマガラの生息はまれですが、植林地のマツ類が生長すれば、この鳥もすみつくと思われます。
また、広大な湿原と境界を流れる当幌川があるので、湿原・河川性の野鳥もセットで生息していると思われます。
カワセミの生息が確認されたそうですが、研修道場の地域が温帯性のカワセミの生息限界といえます。
――何種類の野鳥が研修道場に生息すると考えられるでしょうか。
三浦 四季を通じての生息種類はその環境の多様性から推察して100種類を下回ることはないと考えられます。 これは根室管内で記録された300余種のうち、水鳥類と迷鳥を除く普通種のすべてに相当する鳥相の豊富さです。 ぜひとも鳥獣保護区に指定することを提案します。
――こうしたフィールドを自然教育に活用していく上でのアドバイスをお願いします。
三浦 この研修道場内に自然植物園と野鳥研究所が設置されることによって、学会員の皆さんが自然の営みを学びとれるということは、本当に素晴らしい。 そのためには森林と湿原に適切な林内散策路と木道を組み合わせたネイチャー・トレール(自然観察路)が設置されなければなりません。 今回の調査で、その基本的な考え方について検討されたことは喜ばしいことです。 また、散策や観察にはコースを逸脱しないことが望まれます。 これは繁殖期の野鳥の巣に思いがけずにニアミスすることになるからです。
――自然植物園・野鳥研究所開設の構想に対する要望を。
三浦 施設完成後には学会員以外の地域の一般住民や児童、生徒にも解放する機会を与えてほしいですね。
なぜならば、根室管内には自然教育の場が乏しく、指導者も少ないからです。
また、施設を活用できるかどうかは人で決まることを力説したい。
広いとはいっても研修道場は限定されたフィールドです。
その中の自然観察だけのガイドにとどまらず、それには地球的なマクロな視点が必要であるし、北海道とか根室地方とかのバックグラウンドの理解がなければ近視眼的な解説に終わってしまいます。
それだけの力量を備えたレンジャー(指導員)の配備を望みたいし、後継者の育成にも創価大学・創価学園の努力が必要でしょう。
今回の第1回総合調査のあと、苫小牧で行われたバンディングの講習会にアシスタントとして参加しましたが、やはり最低5年間程度の野鳥観察の経験がなけれぜライセンス取得は困難だと痛感させられました。
研修道場はバンディング実施のフィールドとしても極めて魅力でありますが、何事も「ローマは一日にしてならず」です。
――最後に研修道場内でのタンチョウの餌付け、営巣の可能性についてはいかがでしょうか。
三浦 現在、北海道に生息する特別天然記念物のタンチョウの生息数は400羽の大台を超えています。
しかし、繁殖能力のある雄雌のカップルがテリトリー(縄張り)として確保できる湿原は、湿原の開発等によって限界に達しつつあります。
テリトリーをもてないカップルはかなりの数になろうと推測されます。
まずここのフィールドヘの餌付けによる誘致から始めれば、それは何年後になるかは予測しにくいですが、必ずやこの湿原に端麗な親鳥と可憐なひなの姿が観察できる日がくることでしょう。
