タンチョウ
このページの写真は、委嘱研究員・福原幸昭氏 撮影

稀少鳥復活への願い

高田 勝

創価学園「別海フィールド」に                
タンチョウ・シマフクロウ、定着の可能性

大規模な開発や漁法の発展で姿消す鳥たち


<聖教新聞 2000年9月19日 文化欄> より引用


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根室支庁の管内に350種が生息

シマアオジ  北海道東部の自然環境は、ここ20年ほどの間に大きく変わり、動物たちには住みにくい場所が大半を占めるようになってしまいました。
 約30年にわたって、私や仲間たちが根室支庁の管内で記録してきた鳥類の種類数は350種と日本全体の三分の二にも達します。
 根室支庁というのは、北海道全域を管轄(かんかつ)する北海道庁に属する14の支庁のうちの一つで、創価学園の野鳥・自然環境研究所「別海フィールド」のある別海町も、この中に含まれます。
 そもそも、別海町の面積だけでも四国の香川県に匹敵するほど広い所ですから、鳥の種類が多いのは当たり前と思われるかもしれません。 しかし、面積さえ広ければさまざまな種類の鳥が住めるかというと、そうではありません。 もし、根室支庁全域が畑であったり、あるいは針葉樹ばかりの森であったとしたら、種類数はせいぜい数十種にとどまるでしょう。
 つまり、多くの種類の鳥が住めるということは、環境が極めて変化に富んでいるということを証明しているのです。 それが、350種という驚異的な数字となって表れ、私たちは無邪気に喜んできたのでした。
クマゲラ  しかし、大規模な開発や、漁法の飛躍的発展といった人為的な影響をまともに受けて、すでにこの地では姿を消してしまった、あるいは消そうとしている鳥が、何種類も出てきています。
 海鳥のチシマウガラスやエトピリカ、ケイマフリ、草原の鳥であるシマアオジやマキノセンニュウ、森の鳥のシマフクロウ、クマゲラ、ヤマゲラなどです。
 そんな中にあって、最近「別海フィールド」で記録された鳥が100種に達したことを聞きました。 なんと根室支庁全域の三分の一近くをたった十年ほどで記録してしまったのです。 「別海フィールド」がいかに広大とはいえ、支庁全域から見れば点にすぎませんから、これには正直驚きました。


100種類がフィールド内で記録される

シマフクロウ  私は何度か「別海フィールド」にお邪魔させていただいていますが、確かに素晴らしい環境の中にあります。 湿原、草原、河畔(かはん)林、蛇行する川……訪れるたびに、昔なつかしいという感慨にとらわれます。
 そして、嬉しいことに「別海フィールド」では、シマフクロウとタンチョウという、北海道いや日本を代表する二つの巨鳥が、将来的に定着する大きな可能性を秘めています。
 シマフクロウは、全長70cm、翼を広げると1.8mにも達する、世界最大のフクロウで、魚を主食とする変わった習性を持っています。 しかし、巣穴にする大きな樹洞を持った巨木はとんどん伐(き)り倒され、川も汚れや乱獲で魚が減り、今では北海道全体でわずかに120羽ほどしか住んでいません。
「別海フィールド」周辺では、近年目撃例が増えていますが、一羽なのかペアなのか、そして定着しているかどうか、まだはっきりしていません。 それに巨木も少ないのです。
 しかし、フィールドに接して、当幌(とうほろ)川という魚の多い川が流れています。 これを見逃す手はないと、昭和63年、シマフクロウ用の巣箱が河畔林に設置されました。
タンチョウ  一方、タンチョウもフィールド内の湿原で餌をとる姿が目撃されるようになったそうです。 そして、近いうちに、湿原の機能や周辺環境に影響を及ぼさないやり方で、餌場(えさば)となる広い池が造られると聞きました。
 この池に水生昆虫や魚がたっぷり増えれば、タンチョウが定着し、周りの湿原で子育てを始めるのも、夢ではありません。
 そしていつかある日、シマフクロウも魚に気づき、巣箱にも気づいてくれるでしょう。
 彼らを絶滅の淵に追いやってしまった私たち人間の、せめてものお詫びの印が受け入れてもらえることを願い、この活動が復活へのシンボルとなる日を心待ちにしています。




たかだ・まさる (日本鳥類標識協会会員、作家)

 1945年、名古屋市生まれ。 早稲田大学卒。 雑誌記者を経て、根室市で民宿を経営する傍ら、野鳥に囲まれて執筆活動を続ける。 主な著書に『ニムオロ原野の片隅から』『ある日、原野で』『コンチネンタル・バーディング』『飛びたてシマフクロウ』など。


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