INSTITUTE of NATURAL SCIENCE and EDUCATION in SOKA SCHOOL SYSTEM

野鳥・自然環境研究所報告

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第2巻第1号 (通巻第5号)

2002年5月15日 発行


万物共生の沃野を求めて
創価高校環境委員会の活動を中心にして

創価高等学校教諭  照井 優子
(地歴公民科・研究員)


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  1. はじめに
  2.  創価高校では、平成5年度に環境委員会を発足して以来、環境問題に対する意識の啓発や古紙回収を中心に地道な活動を続けてきました。その環境委員会が、全ての学園生を巻き込んで革新的な行動を開始したのは、「学園から断じて『ダイオキシン』を出してはならない」と、ゴミ集積場のゴミの分別を始めた時からのことです。
     平成11年度の活動は特に活発で、環境委員会では「情熱の日」の記念行事に「万物共生の沃野を求めて」と題して展示を行っています。この展示をご覧になった小平市の職員の方が、市の広報紙に、創価高校のゴミの分別や清掃・リサイクル活動を紹介してくださいました。本校の生徒会誌「渓流」には、その時のことが次のように記録されています。
    「9月の半ば頃から準備が始まり、日頃出るゴミから展示を作ろうという方針が決まりました。計算用紙を貼り付けて(展示用の)模造紙を作り、捨てられるゴミから使えそうな物を探し出しました。ダンボールや発泡スチロール、体育大会で出てきたすずらんテープや百足競争のひも、借りてきた机とカーテンで展示場の壁やのれんなどを作りました。落ち葉をひろってきたり、(鳥などの)はく製を借りたりもしました。模造紙をおにぎりの包みを止めているシールで貼り付けたものも登場しました。最終的に、借り物とカラーコピー以外はゴミから作るという展示が完成し、(実行委員会より)『ウィズダム賞』を受賞しました。20名ほどの労作業でした。 その展示を市役所の人がご覧になり、小平市で発行している広報紙『ごみらいふ』に創価高校を取り上げたいという連絡がありました。それを受けて、ボランティア委員会、美化委員会と協力し、『ごみらいふ作成委員会』が発足しました。潮流会(通学生の生徒組織)の地域清掃も交えて、ゴミの分別や割り箸・牛乳パック・紙の回収といった環境委員の仕事も掲載しました。」(一部加筆、筆者)
     このレポートでは、平成11年度からの活発な環境委員会の活動、創価高校のゴミの分別とリサイクル活動について報告させていただきます。


  3. 「ゴミ」と「資源」の分別について
  4. 「ゴミ」と「資源」の分別の種類
    (1)焼却ごみ(燃やせるごみ)
    (2)埋立ごみ(燃やせないごみ)
    (3)
    (4)ペットボトル
    (5)再生紙
    (6)紙パック
    (7)コンテナごみ(危険物等)
    (8)乾電池
    (9)割り箸
    (図1)
     私たちの捨てるゴミはどうなるのでしょう。創価高校では、ゴミの分別・リサイクルを通して、自分の捨てるゴミに生徒一人一人が責任を持つようにしています。環境委員会を中心に美化委員会が協力して、ゴミの分別に番号制を導入し、ゴミ箱に蓋を付けて、そこに分別表を貼ったのもその一環です。(図1)
     捨てる時には蓋を見て、どのゴミがどこかを判断できるようにしてあります。掃除のゴミ捨ての時間には、環境委員が交代でゴミステーション(ゴミ集積所)に立ち、ゴミの分別がスムーズにいくよう声をかけています。(写真1,写真2)

    写真1 写真2
    (写真1)ゴミステーション前でゴミの分別を呼びかける環境委員 (写真2)分別用のゴミ箱

    (1) 焼却ごみ
    ○ コンビニ袋 ○ 紙パック(中が銀色の物)
    ○ ヨーグルトの紙カップ ○ 引っ張ると伸びるビニール    
    ○ パンの袋 ○ おにぎりの袋
    ○ 傘袋 ○ ガム
    ○ 紙のガムテープ ○ ストローの袋
    (2) 埋立ごみ     
    ○ プラスチック ○ ちり取りに残った細かいゴミ
    ○ ペットボトルのふた   ○ 引っ張るとブチッと切れるビニール
    ○ ストロー ○ 内装が銀色の菓子袋
    ○ 消しゴムのカス ○ チョークの粉(袋に入れて)
    (図2)
     ゴミの分別で難しいのが、(1)焼却ごみと(2)埋立ごみの区別です。ゴミ箱の蓋には、次のような分別表(図2)が貼ってあり、ゴミを捨てる時にどちらに捨てればいいのか確認できるようにしています。各教室には、(1)焼却ごみ、(2)埋立ごみ、(3)(4)を一緒に入れられるようにした缶・ペットボトルの三種類のゴミ箱を置き、更に(5)(6)(9)の再生紙・紙パック・割り箸等リサイクルできるものが入れられる「リサイクルBOX」を設置しています。(図3・写真3)

     ゴミの分別をしていると、いかに資源を無駄にしているかに気が付きます。ダイオキシンの発生を防ぐという目的の他に、使える物を捨てているのに気付くのもゴミの分別であるといえます。

    図3
    (図3)リサイクルBOX

    写真3 写真4
    (写真3)各教室のリサイクルBOX (写真4)紙パックなどの洗浄作業


  5. 徹底した紙のリサイクル
  6.  各クラスには、環境委員が作った再生紙BOXと呼ばれるダンボールの箱が二つ置かれていました。一つは裏が白い片面印刷の紙、もう一つは両面印刷の紙や新聞・雑誌・その他(ティッシュ・紙袋等)を入れるものです。図4のように、無駄のないリサイクルが行われています。

    図4
    (図4)紙の分別

     一昨年度の卒業記念製作で、高校31期生が各クラスに木とアクリル板を使ってリサイクルBOXを作り、設置してくれました。現在は、より進化した形のリサイクルBOXを利用しています。
     紙パックと割り箸については、環境委員が洗浄して、業者に引き取っていただき、洗浄後の水は、植物にかけています。地道な作業ですが、毎日ゴミステーション当番の時に、交替で行っています。(写真4)
     紙のリサイクルについては、生徒の中にかなり定着しており、「全ての紙をリサイクルに」を合い言葉に、リサイクルBOXが利用されています。生徒の中には、リサイクルBOXの中の片面印刷の紙を利用し、リサイクルノートなるものを作成して、授業で使用する姿も見られました。


  7. 環境啓発活動
  8.  環境委員会では、平成10年11月から、「環境問題を考える」と題する環境啓発機関紙の発行を行ってきました。この機関紙で、環境問題の具体的な内容や、なぜゴミの分別が必要なのか、リサイクルの意義等を、学園生に訴えています。ここで、「環境問題を考える」の第1号〜第12号(平成10年11月〜平成11年3月)の内容の要約を紹介します。(図5)

    図5
    (図5)「環境問題を考える」第3号

    <第1号>ダイオキシン(1)平成10年11月14日
     ダイオキシンの毒性を紹介し、一度体内にたまると、排出されにくいことや、どのような危険性が指摘されているかを述べ、ダイオキシンの発生を防ぐために、「小さなビニールでも埋立ゴミにする」と、ゴミの分別が必要なことを訴えている。
     
    <第2号>ダイオキシン(2)平成11年1月25日
     環境ホルモンが、体の正常な働きを狂わせる危険性があることを指摘し、動物への影響や人間への影響について述べている。
     
    <第3号>ダイオキシン(3)平成11年3月12日
     ダイオキシンの汚染が、深刻な社会問題になっている今日、どうしたらダイオキシンから身を守ることができるかを、「ゴミを分別する」「ゴミを減らす」「塩ビ製品を買わない」の3点から訴えている。
     
    <第4号>森林の消失平成11年5月11日
     「このまま熱帯林の破壊が進むと、あと50年でアマゾンの熱帯雨林が絶滅する」とのイギリス政府発表の見解を示し、アマゾンや、東南アジアから日本への木材の輸入量の数値をあげて、森林伐採の実態を訴えている。
     
    <第5号>森林の消失による悪影響平成11年6月15日
     前号に続いて、森林がなくなると地球上の二酸化炭素の量が増える、土地の不毛化が進む、動植物の絶滅する可能性について説明し、その中で、紙のリサイクルの必要性や貧困の問題の解決を訴えている。
     
    <第6号>オゾン層の破壊平成11年7月19日
     太陽からくる紫外線のうち、DNAを傷つけてしまう紫外線UVBの恐ろしさと、その侵入を守っているオゾン層がフロンガスによって破壊されている状況、また80年代に大量に放出されたフロンガスが成層圏に到達するこれからが危険であることを訴えている。
     
    <第7号>地球温暖化平成11年9月22日
     地球温暖化が進むと、気象の変化、海面の上昇、絶滅種の増加など、様々な変化が引き起こされる。産業革命以後、二酸化炭素濃度が急激に増加し、今や地球温暖化の問題は、待ったなしの課題となっていることを訴えている。
     
    <第8号>砂漠化平成11年10月14日
     砂漠化の原因を、人為的要因と気候的要因との二つに分け、砂漠化を防ぐために緑の大切さを訴えている。
     
    <第9号>野生生物の危機平成11年11月17日
     野生生物が減少するのは、生物の移入や生息地の破壊、乱獲や狩猟など、人間の活動によるもので、「自然は人間の生活に役立つために存在する」という思い上がりを捨て、自然との共生の道を探すことが急務であることを訴えている。
     
    <第10号>最終的な解決法(1)平成12年1月19日
     自分たちにもできることを考え、割り箸、紙、ペットボトル、その他のリサイクルが環境保護に確実に繋がることを訴えている。また、将来環境保護に関わる進路として、理系ならば、汚染物質の除去・破壊技術や省エネやリサイクル技術の開発など、文系ならば、新しい経済システム作りや環境保護に関する法整備、国際協力などが考えられることにも触れている。
     
    <第11号>最終的な解決法(2)平成12年2月23日
     共存・共生型社会、循環型社会を築くことを訴え、地球が人間に属しているのではなく、人間が地球に属しているという視点を強調している。
     
    <第12号>総集編平成12年3月15日
     「この一年を通して」と題して、環境問題啓蒙機関紙「環境問題を考える」でとりあげてきた様々な問題について要点を解説している。
    写真5
    (写真5)牛乳パックの滑り台と環境委員

     月1回の割で発行されたこれらの機関紙を通じて、学園生の環境問題に対する意識は確実に高まり、小さなことでも自分にできることがあれば取り組もうとの流れがでてきたことは確かです。また、「情熱の日」記念行事には、毎年環境委員会展示が行われています。(写真5,写真6,写真7)
     「はじめに」で述べたように、小平市の「ごみらいふ」に取り上げていただくきっかけになったのも、「情熱の日」の環境展示でした。平成13年度も、環境委員会では、牛乳パックを利用して滑り台を作るなど、ユニークな展示を行っています。
    写真6 写真7
    (写真6)環境委員会の仕事 (写真7)環境委員会の取り組み


  9. その他の活動
  10.  環境美化やリサイクルの活動には、美化委員会を中心に生徒全員で行われる通常の清掃活動の他に、学校行事前に行われる特別清掃、ボランティア委員会による柔道着のリサイクル活動、潮流会(男子通学生)や栄光会(女子下宿生)・寮生による学校周辺の地域清掃などがあります。
     ボランティア委員会では、体育の授業や部活動などで使い終えた柔道着やジャージを回収しきれいに洗濯してから、ジャカルタ・ジャパンクラブ(日本とインドネシアとの親善や文化交流に活躍している団体)に寄贈したところ、とても喜んでいただくことができました。日本では簡単に手に入る柔道着も、インドネシアではとても高価なもので、これを着ることは、インドネシアの青年たちにとって大きな喜びだそうです。また、ボランティア委員会では、使用済みテレカを回収し、その資金化に協力することで、国際協力や障害者への援助に役立てています。
     潮流会では、月1回、学校周辺や鷹の台駅前、通学路となっている「哲学者の道」を中心に地域清掃を行っています。放課後の時間を利用して、潮流会生に呼びかけ、希望者全員で行っています。栄光会も、月1回、日曜日の午前中に全員で下宿や学校の周辺の地域清掃を行っています。
     これらの活動は、学園の伝統として先輩から後輩へと受け継がれ、学園生同士の対話の機会となるばかりでなく、学園生と地域の方々との対話や交流の場としても大切な役割を果たしています。


  11. 環境委員会アンケートより 〜生徒の声〜
  12.  平成13年度の環境委員に、環境委員会の活動についての率直な声を聞いてみました。アンケートでは、次のような設問に答えてもらいました。代表的な声を紹介します。

    設問1.環境委員会に入ろうと思ったきっかけや理由。
    設問2.環境委員会の仕事内容について、
    (ア)委員会で現在行っていること、
    (イ)自分自身が行っていること、
    (ウ)将来委員会で行っていきたいこと。
    設問3.環境委員として、学園(生徒や教員・学校)に期待すること(改善・努力して欲しいこと)。
    設問4.環境委員会の活動を通しての感想。


    設問1.環境委員会に入ろうと思ったきっかけや理由

    • 一年の時は何となく入ったが、一年間の活動を通して現代の環境問題に関することを学び、自分の意識が高まった。それで、二年になってからも続けた。(2年男子)
    • 環境委員会の先輩の姿に惹かれて、自分も活動してみようと思った。(2年男子)
    • 環境問題解決のために、自分にできることがあれば是非やりたいと思った。(3年女子)
    • 環境問題について関心があったから。(1年女子)
    • 学園に奉仕したいと思ったから。(3年男子)


    設問2.環境委員会の仕事内容について

    (ア)委員会で現在行っていること、
    (イ)自分自身が行っていること、
    (ウ)将来委員会で行っていきたいこと。


    設問3.環境委員として、学園に期待すること


    設問4.環境委員会の活動を通しての感想


  13. おわりに
  14.  「万物共生の沃野を求めて」とは、平成11年度に環境委員会が行った「情熱の日」記念行事の展示のタイトルでした。これが、小平市の広報紙「 ごみらいふ」で紹介された時の題字のとなりには、
    "We should never forget that we are living on the earth that is blessed from nature."
    〜私たちは決して忘れない、地球の恵みを受けて生きていることを〜
    とありました。環境委員会の活動は壮大な地球を意識したものですが、その取り組みは地道なものです。今回、このような機会をいただき、環境委員会の活動を中心に紹介させていただく中で、様々なことに気が付きました。
     正直なところ、ゴミの分別はめんどうで、清掃時のゴミ捨てには大変時間がかかります。クラス担任になると、清掃時間になったら、まず、ゴミ捨てにいくよう指示します。そうしないと、清掃後のSHRに、ゴミ捨てに行った生徒は間に合いません。その日の清掃で出たゴミは、翌日捨てることになります。そこまで時間をかけて厳密に分別をする必要があるのかとの声もあります。しかし、環境委員会の取り組みを調べる中で、ゴミの分別は、決して過剰な要求ではないことがよく分かりました。ゴミ箱にゴミを捨てる時点で、焼却・埋立・リサイクルの三つの分別に、一人一人がほんの少し気を使えば、かなりのことが解決できるのです。ゴミ捨てもすぐに終わります。覚えてしまえばそんなに難しいことではなくても、分別に無関心な一部の生徒は、平気で焼却ごみと埋立ごみをごちゃまぜに捨てます。生徒だけではなく、教員も同様です。この点は、生徒からかなりの批判があるところです。そのため、ゴミ捨て当番は、時間をかけてゴミを捨て、環境委員は、自らの手を汚して、ゴミの分別をします。
     環境問題の解決を考える時、何といっても大切なことは、皆が支持できるかどうかです。どんなにすばらしい取り組みでも、複雑であったり、無理を強いるものであれば、長続きしません。ゴミの分別も、(1)誰にでもできる、(2)納得してできる、この2点に留意し、できるだけ単純で、どう分けるのか、なぜ分けるのかを、生徒も教員も、もっと知っていく必要があると思います。
     生徒の感想にあったように、「決められているため」に分別するのではなく、「環境のため」にするとの意識をどう育てるか、また、ゴミを出す人全員が一度はゴミステーションでゴミの分別をしながらゴミ捨てを経験してみることが必要だと思います。環境委員だけが苦労するのではなく、誰にでもできる、納得してできるゴミの分別とリサイクル活動を、学園生全員のほんの少しの知恵と努力で確立し、環境保護へのささやかな流れを大きな流れへと変えていけるよう、教員がしっかりと理解し支えていきたいと思います。そして、ゴミの分別とリサイクルの活動は、他の環境問題解決への取り組みへと、必ずや広がりを見せていくきっかけとなることでしょう。ゴミの分別とリサイクルが、「万物共生の沃野を求めて」活動する学園生一人一人の、環境保護への取り組みの第一歩となることを、確信しています。この運動を通して、「ゴミを出さない学園生活」への広がりが、静かに生徒の中に浸透し始めていることが、とても嬉しいことです。
     最後に、日々目立たないところで地道に活動を続けてきた環境委員会及び関係の皆さんに感謝し、このレポートを終わります。

    以上

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