INSTITUTE of NATURAL SCIENCE and EDUCATION in SOKA SCHOOL SYSTEM

野鳥・自然環境研究所報告

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第1巻第4号

2002年2月11日 発行


 ハス保存会が、環境教育の一環として、ハスの栽培・研究に関わって19年が経過しました。 ハスのことが少しずつわかってきました。ハスの栽培が楽しくなり、世界のハスが一堂に咲きそろう日が 楽しみです。 この度の野鳥・自然環境研究所報告(第1巻第4号)では、関西創価中学・高等学校のハス保存会の地域に開いた活動を報告いたします。


蓮の研究 ハス保存会の活動と地域貢献

関西創価中学校・高等学校ハス保存会      
野崎尚夫・加藤 健・西田修英


Bar


  1. はじめに
  2. 一、 開いた開いた
    なんの花が開いた
    れんげの花が開いた
    開いたと思ったら
    いつのまにかつぼんだ
          二、 つぼんだつぼんだ
    なんの花がつぼんだ
    れんげの花がつぼんだ
    つぼんだと思ったら
    いつのまにか開いた

    りりしく咲く大賀ハス
    大賀ハス

     これは江戸(東京)を中心に歌われてきた、わらべうたの『ひらいた ひらいた』の歌詞と曲です。
     ハスの栽培を始める以前は、この歌の「れんげの花」は春になって田に咲く「レンゲ草」のことと思いこんでいました。しかし、栽培して初めて「れんげの花」は「蓮華の花」で、「ハスの花」であることがわかりました。これに限らず、ハスに対する事柄で一般世間の認識と事実との差は結構あるようです。
     ともあれ「ハスの花」は、太陽の光を受けて午前5時ごろから少ずつ開花します。午前11時すぎから閉じはじめ午後3時ごろには、つぼみます。このくりかえしを2日から3日繰り返して散ります。しかも花が咲いた時に実が生じるという不思議な花です。仏法でいわれる因果倶時の比喩に引用され、花(華=因華)と実(菓=菓台)、すなわち因華と菓台を同時に生ずるので、不思議の法たる「妙法蓮華」に似ております。従って、ハスも「蓮華」と名づけられております。
     「妙法蓮華経と申すは蓮に譬えられて候、天上には摩訶曼陀羅華・人間には櫻の花・此等にはめでたき花なれども・此れ等の花をば法華経の譬えには佛取り給う事なし、一切の花の中に取分けて此の花を法華経に譬へさせ給う事は其の故候なり<中略>蓮華と申す花は菓(み)と花と同時なり」(日蓮大聖人御書全集、1580頁)とあります。


  3. ハス保存会の発足
  4.  関西校でハスの栽培が始まったのは、1982年(昭和57年)5月のことです。3月、創立者池田先生より「学園にハス池があったらいいね」との御提案があったのがきっかけです。同年、男女共学もスタートした4月から5月にかけて、休日返上で、生徒や教職員とその家族、地元の有志の方のご協力を得ながら、ハス池作りの作業が始まりました。永村保校長先生(当時)の陣頭指揮のもと、大澤時男さん(当時、四条畷市)所有の小型ブルドーザーも活用し、2週間ほどで見事なハス池が完成いたしました。その後、二度ほど移転し、現在は学園ビクトリーグラウンド(野球場)の側に落ち着きました。この間、七つの蓮池に「南蓮池、妙蓮池、法蓮池、華蓮池、経蓮池、白蓮池、青蓮池」、もう一つの大きなハス池は「白鳳の池」と創立者は命名してくださいました。また、二度にわたり、ハス池を視察してくださり激励していただきました。 それ以来19年間、私たち「ハス保存会」に創立者は激励を続けて下さいました。生徒達はその使命と誇りを受け継ぎながら、「創立者に代わってハスの栽培と研究をさせていただいている」という精神で活動に取り組んでおります。

    現在のハス池全風景(1)
    ハス池全風景

    現在のハス池
    現在のハス池(2)
    花と果托
    花と果托

    プランター栽培の作業風景
    作業風景1 作業風景2 作業風景3

     なお、草創期の保存会をリードしたインチョン(仁川)市在住の鄭宣子(旧姓、華山)さん、当時の図書館司書教諭としてハス関係の専門書籍やハス栽培農家を探してくださった西澤富美(旧姓 栄)さん、多くの卒業生・在校生の保存会メンバーの皆さん、作業に協力してくださった多くの方々の労に対し心より感謝いたします。
     昭和51・52年の1期生・2期生卒業指針で、創立者は次のようにハスのことにふれられておりました。
     「園子よ いかなる厳しい生活と社会の中にあっても 蓮華の花の如く 美しき心だけは 絶対に勝ち取れ」と。(昭和51.3.13)


  5. 花ハスを通して地域貢献の活動
  6.  花ハスの栽培を通して、関西校と各地にハスネットワークが広がってきました。こうした数々の交流を支えてくださったのは、愛知県立田村で食用ハス栽培をされ、地域の中心者でもある鷲尾さんご夫妻の協力のお陰です。
     創価大学の文学の池にハス池をとの思いは、関西校のハス保存会出身で16期木村拓磨君、立花伸男君、17期満田剛君を中心に実現することが出来ました。さらに創価大学職員の小杉さんの応援が大きな支えとなりました。今では創価大学の夏季のスクーリングに来学される、多くの通教生の方々の目を楽しませているようです。
     日蓮大聖人ゆかりの千葉県・茂原文化会館とはそれぞれ手持ちの品種を交換して、お互いに栽培方法の情報交換をしています。現在、千葉文化会館に勤務されている田丸さんが中心になって茂原にハス保存会も結成されました。その他に京都フラワーセンター、静岡の富士美術館、東京校とも情報交換をしています。関西創価小学校との交流では、学園スティの学習タイムにも「ハス学習」が組みこまれています。
     本年1月、デンマークSGIの神尾さんを通じて、アスコー国民高等学校の「池田池」に関西校の睡蓮を贈呈しました。そして、インドのバスカラ学園のクマナン理事長から錦織さん(在インド)を通して、インドのハスの種をいただきました。2月に東海さん(在台湾)を通して台湾・台北植物園のハスの種をいただき、海外との交流も少しずつ拡大してきました。
     さらに、身近な地域との交流についても、急速に拡大しています。学園の地元で交流を進めている諸施設・団体・個人の方は、以下の方々です。
    1. 交野市立藤ケ尾小学校
    2. 大阪府立交野高校
    3. 寝屋川市立第7中学校
    4. いきいきランド交野
    5. 梅が枝地域
    6. 向井田地域
    7. 星田(笹島宅)
    8. 天野が原(中内田宅)
    9. 梅が枝(妻鳥宅)
    10. 梅が枝(中向宅)



  7. ハスの歴史と仏法
  8.  日本で最古のハスの出現は、ここ河内国(大阪)であります。『古事記』の赤猪子の段には、「日下江の 入江の蓮(はちす) 花蓮 身の盛り人 ともしきろかも」 という歌があります。そして、世界の多くの国でも紀元前の昔から、ハスの花を愛でたという記録が多く残されております。
     中国では黄河の流域でも数多くのハスが咲いていたようです。約三千年前の昔、『詩経』にもハスを尊ぶ詩がみられ、「君子の花」として今でも多くの人に愛されています。古代エジプトのピラミッドや王家のミイラからハスの種子がでたり、王家の紋章にハスを使用したことは良く知られています。
     インドではハスの歴史は更にさかのぼり、約五千年前のものと思われるハスの女神像が発見されています。インドの釈尊は、人間生命の哲学的な表現をハス(蓮華)に譬えました(青色のスイレンの花にも喩えました)。バラモンの根本聖典の一つの『ウパニシャッド』の中にも「浄化せる者たりとも、未だ浄化せざる者たりとも、聖典を恒に念誦する者は、罪悪に染まらざること、しかも蓮華の汚れにおけるが如し」と説かれています。
     釈尊の数々の説法の中には、蓮と水のたとえが頻繁に用いられております。「たとえば蓮の葉の上の水滴、或いは蓮華の上の水が汚されないように、それと同じく聖者は見えたり、学んだり、思索したどんなことについても汚されることがない」「修行完成者は諸々の偏見を離れて世間を遍歴するのであるから、それらを固執して論争してはならない。たとえば睡蓮や棘のある蓮が水にも泥にも汚されないように、その聖者は平安を説く者であって貪ることなく、欲望にも汚されることがない」と、水が蓮の葉につかいないように、貧欲に染着しないことを説いています。ここに仏教と蓮とのつながりの原点を見いだすことができます。
     後世に大乗仏教が興隆し最も優れた経典として、『妙法蓮華経』 (法華経) が成立しました。この経典は梵語のSaddharma-pundarika-sutra(サッダルマ=プンダリーカ=スートラ)の訳で、直訳すると、「白蓮のごとく正しい教え」ということになります。これが中国(後秦)の鳩摩羅什(344〜413年)によって『妙法蓮華経』と訳されたことは周知の通りです。

     日本全国には蓮華にちなんだ地名が、数多くあります。
     大蓮(おおはす:大阪府東大阪市)、蓮池町(京都・滋賀)、蓮原(はすはら:鳥取)、蓮台野(れんだいの:京都)、蓮(はちす:三重)、蓮見町(三重)、蓮見(はすみ:鳥取)、蓮池(はすいけ:神戸・三重・石川・岐阜・香川・高知・佐賀)、蓮川(はすかわ:三重・青森)、蓮沼(はすぬま:東京都大田区・茨城・埼玉・富山)、蓮沼村(千葉)、蓮田(はすた:埼玉・北九州)、蓮太郎温泉(はすたろうおんせん:宮崎)、蓮華温泉(れんげおんせん:新潟)、蓮沼新田(はすぬましんでん:埼玉)、蓮根(はすね:東京都板橋区)などです。
     この中でも珍しいのは、千葉県の「千葉」ですが、この名称の由来の一つに、「千葉(せんよう)の蓮華」からきているという説が有力です。「千葉の蓮華」の由来は日蓮大聖人御生誕の地「千葉県」とあいまって何か不思議な縁を感じます。さらに千葉県といえば東京大学の検見川農場内の遺跡から、大賀ハスの種子が発掘されました。上記の地名の多くは古い時代に、湿地帯か湖沼であったと考えられます。
     ハスは植物学的に言えば、赤・白の花色を持つ東洋産種と、黄の花色を持つアメリカ産種の二種があります。化石については、主に北半球が多く、とりわけ欧州やカナダから出土しています。中には、一億三千五百万年前(恐竜時代)の化石も発見されているようです。
     日本では福井県からも化石が出土しており、第三氷河期の最後にあたる洪積世のハスで現在のものと同じと考えられ、ハスの在来説の裏付けとなるとも言われております。検見川出土の大賀ハスや『古事記』、『風土記』の記録からみても、ハスは古くから在来していたのではないかと思われます。もっとも、仏教の伝来以後、中国より宗教的意義から僧侶や留学生が日本にもたらしたものも多いようで、現在のハスの起源は多源的であると思われます。
     仏法では「八葉の蓮華」とは、単に八枚の花弁をもつハスのことをいうのではありません。ふつうハスの花弁は二十枚から二十五枚といわれ、一重の花もありますし、八重(やえ)の花もあります。一般的に、八重というのは「八」という実数ではなく、数多くあるという意味です。
     そこで仏法上の「八」という数字の意味は、一義として「たまをひらくと詠むなり」というそうです。「たまをひらく」とは一念、一心の生命を無限に開いていく意味といわれております。歴史的にみて古代エジプト・バビロニア・アラビアでは、「8」が「太陽」を表す意義の数字として使われてきたようです。「完全」、「豊饒」、「光輝」などを意味する聖なる数字でもありました。
     古代ギリシアにおいては「8」は「all」つまり「すべて」を意味したようです。また、有名な数学者ピタゴラスの著書の中に、太陽が生み出す「増大」、「知恵」を表す数字として記されております。他に、「8」を「聖数」とする例で、音楽でも爛クターブ瓩あり「八音階」ということで、初めの音階が一段と高くなることから「蘇生」を意味するようであります。仏法では「八葉の蓮華」とは、単に八枚の花弁をもっているハスという意味でなく、人間の胸間にある心臓が二つの肺臓に包まれ、その形が、ハスに似ていることから、これを象徴的に「胸間の八葉の蓮華」というものと思います。
    昭和60年、月刊誌「潮」の9月号の連載『生命と仏法を語る(7) 生命の法理「蓮華」』に、創立者は蓮の育成・研究について対談にとりあげて頂きました。(一部抜粋)

    ---世界の蓮華を一堂に咲かせる夢--- 分布図
    ハスの分布図
    碓 井  そこで、各地でハス便りを聞きますが。
    池 田  ま、花が開花するのは、六月中旬からこの七月になるでしょう。私は、この不思議なハスを研究したいのですが、多忙でできないもんで、ハスの好きな、関西創価学園の野崎教諭にお願いして、研究していただいております。いまでは、そのハスの池は八つになっています。
    屋嘉比 いいですね。
    <中略>
    池 田  もうひとつ、ついでに申し上げます。八王子の創価大学の「文学の池」には、睡蓮がかなりあります。先日、満開の写真を送ってくれました。高貴な花ですね。
    碓 井  ああ、そうですか。たびたびお邪魔しておりますが、そのことは見落としておりました。
    池 田  それにしても私は、因果倶時の法に譬えられる蓮華が好きで、世界の蓮華の花を一堂に集めて咲かせたいという夢もあるんです。


    ハスの構造
    ハスの構造

  9. ハスとその名称・構造
  10.  ハスの和名の語源は、果托の形が蜂の巣に似ているので、万葉名は「ハチス」(蜂巣)または「ハチノスハイ」と呼び、その後に「ハチス」が転訛して「ハス(蓮)」となったようです。
     漢字では蓮、別名は万葉名の「ハチス」の他に「イケミグサ」があります。

    和名ハス(蓮)、別名:ハチス
    中国名荷「ホォオ」
    英語名 Lotus, Pink Lotus-lily,
    East Indian Lotus

     ハスは、スイレン科ハス属に分類されている大型の抽水植物(根と茎の一部が水中にあり、茎の一部や葉の多くが水面から上に伸びている植物)です。ハスもスイレン(睡蓮)も地下茎で増えます。一部の熱帯性スイレンが夜に開花するのを除いて、ハスもスイレンも朝から開花し、午後には閉じる共通性を持ち、同じような水生植物として多くの人々に愛されてきました。スイレンは、スイレン科スイレン属に分類されます。古代には、ハスもスイレンと同じようの扱われました(例として青蓮は青色のスイレンのことです)。
    果托と実
    ハスの果托と実
    睡蓮
    睡蓮
    白蓮
    白蓮

            

  11. 大賀ハス、実生(みしょう)の育成記録
  12.  関西校で毎年行っております市民講座などを通じて、ハスの種子から育てたいという要望が結構ありますので、関西校で57日間(1985年7月2日〜8月27日)にわたり大賀蓮の実生栽培した記録を紹介させていただきます。創立者池田先生から頂いた大賀ハスを実生から育成したもので、その概要は、以下の通りです。

    1. 第1葉から第3葉まで、発芽(巻葉)から展開(浮葉)までの葉柄の成長は、1日平均4センチ以上であった。特に第17葉は、1日で15センチも伸びた。
    2. 第1葉の発芽から第17葉の発芽まで50日間で、思ったよりかなり早い発芽・成長であった。
    3. 発芽から展開までの日数は、第1葉は14日、第2葉7日、第3葉4日・・・第9葉3日、第10葉3日、第11葉3 日・・・第16葉2日、第17葉2日、第18葉4日、第19葉2日。
    4. 立葉の前後に発芽した浮葉の葉柄の太さは3〜3.5ミリで、第1葉から第3葉は1.5ミリ。
    5. 立葉の発芽する前後に、大半の浮葉が出芽した。
    6. 土壌から出る「あく」やゴミ、カビの除去のため、そのつど水槽の水を3分の1ずつ入れ替え、極端な水温の上昇や水の汚濁を抑えた。
    7. プラスチック容器の壁面ごしに、地下茎の生育状況が部分的に観察できた。

     一日一日、葉も葉柄も地下茎も著しく成長しており、目を見張る毎日でした。短期間の育成記録でしたが、簡単なスケッチを添付しておきます。 但し、このままでは容器が小さいので、翌年4月初旬には大きめのプランターに移植しました。分根して栽培すれば2年から3年で開花します。


    【実生の記録のスケッチ】

     昭和60年6月26日に創立者から大賀ハスの種子20粒を頂き、7月2日から実生栽培を開始してから、8月27日までの記録の抜粋を示します。

    7月 2日 大賀ハスの種子の先の凹部分に、5ミリ程の穴をあけ水槽に入れた。
     
    3日 水槽に入れた種子が、水を含み種皮が変形した。
     
    4日 種子が水を含み、膨張してきた。
     
    5日 種子の先の凹部分から、少し泡が出だした。
     
    6日 うすい緑色の芽が出る。

    6日
     

    9日 水温25度。水面から芽が出る。先端に小さな葉がついている。1日で5cm伸びた。水槽に泥を入れた。

    9日
     

    12日 気温27度。水温26.2度。
    第1葉26cm、第2葉1.5cm。

    12日
     

    17日 第1葉43cm、第2葉17cm、第3葉1.5cm。

    17日
     

    22日 第1葉の巻葉が完全に開き、浮葉となる。
    第1葉50cm、第2葉37cm、第3葉2.3cm。

    22日
     

    29日 気温33.6度。水温36.1度。
    第1葉から第4葉まで巻葉は開き、浮葉となった。

    29日
     

    8月 13日 気温29.1度。水温27度。
    浮葉の成長は大変に良い。

    13日
     

    15日 気温31度。
    第10葉、11葉が発芽した。特に第10葉は葉柄の直径が3mmの立葉。

    15日
     

    24日 待望の第17,第18葉は立葉として、逞しく成長。

    24日


    「ハスの種子の育て方」

    1. ヤスリ等で種皮(凹部)の一部(凸の下部は胚芽を傷つけるおそれがある)を白い部分が見える程度削る。削った穴の大きさは、5mm程度になる。
    2. 水を張ったコップ等に入れておくと、その後芽が出る。
    3. 第1、第2の芽が出た頃、5〜6号鉢に半分ぐらいの用土(水田の土または畑の土に腐葉土を混ぜた土)を入れ、その上に幼苗を置き、用土をかぶせる。
    4. 水を入れた容器の中に入れ、鉢の上まで水を張っておく。
    5. 鉢は、日当たりの良い場所で育てる。
    6. 冬越しが重要で、室内の暖かい所におく。
    7. 翌春(3月下旬〜4月上旬)に、大きい容器(プランターなど)に直接植え替え、水を張って育てる。
    8. 春になってから、7のような処置をすることで、翌年の冬越しが容易になり、大きく育つ。
      開花するのは、早くて3年目です。温室ならば、2年目に咲くこともあります。容器は大きめのものがよく、毎年春の植え替えが必要です。用土は、毎年交換した方がよい。


    大賀ハスについて

     昭和26年(1951年)3月30日に、故大賀一郎博士らにより、千葉県検見川の泥炭層下4.8mの青泥層から古代の丸木舟と一緒に3粒の蓮の実が発見された。古代蓮と共にあった丸木舟の材片を米国シカゴ大学原子核研究所のリビー博士のラジオ・カーボン・テストで調査した結果、2000年以上も前の古いものであることが証明された。
     このハスの実の1粒が大賀博士により同年5月に奇跡的に発芽し、翌年7月19日には、2000年の眠りよりさめた見事な桃紅色の花を咲かせた。花は一重咲き(22弁前後)の大輪で、花径は25cm前後。大型品種で、花茎は1.5mほどに伸長する。この大賀蓮を別名、2000年蓮ともよぶ。(東京都府中市教育委員会「花蓮」より)


  13. ハスの科学
  14.  この1.2.のコーナーは、毎年8月に開催される市民講座で参加者の方と実験をしているものです。

       
    1. ハスの葉は、なぜ水をはじくのでしようか。

       蓮の葉には、水面に浮かぶ浮葉(水葉)と水面から立ち上がる立葉があります。 葉の表面には1mmの数十分の1の細かい毛(じゅう毛)が、張りめぐらされており、水を押し上げる働きで空気がたまり葉面が濡れず、水自身が丸くなる表面張力とがあい絡まって水や汚れをはじき飛ばし、雨水を受ければ丸い水玉となって白く光り風情を醸し出します。
       泥中の蓮根より発芽した葉や葉柄は、その泥や水をよせつけない不思議さが、『法華経湧出品』の中に「如蓮華在水」という含蓄のある言葉で表されています。
      表面拡大図
      葉の表面の拡大図
      成葉
      成葉

    2. ハスの葉や葉柄は、風に吹かれてもなぜ折れにくいのでしょうか。

      成葉の葉心角(a)を示す
      成葉葉心角
       ハスの葉はその幅が1mを越えるものもあり、雨水を受けた重みを支えたり、強い風が吹くとき相当の風の抵抗をうけます。葉は平たい円形で、楯形に柄がつき、葉自身が右図のようにつくる角度を葉心角といいますが、通常は120度から138度あります。この微妙な角度によって、溜まった雨水の重みで、水が下に落ちやすくなり、葉自身も柔軟に曲がります。
       また、強い風が吹いてもこの微妙な角度で、葉自身が柔軟に二枚に折りたたまれるようになり風の抵抗を減らしています。この大きな葉自身を支えるのが葉柄で、中には長いもので高さが2m30cmを越えるものもあります。葉柄の径は2cm程度で大変に華奢です。しかし、実際は強靱でめったに折れることはありません。その理由は、葉柄の中に大小20前後の空洞(道管)があり、柔軟な構造になっております。
       さらにその空洞の周辺には、ハス糸が空洞と平行して螺旋状に長く張り巡らされております。これが一種のバネの役割と、コンクリート建築の鉄筋のような働きをしていると思われます。本当にすごい智恵の機能であると思います。
       ちなみに、このハス糸はかなり強く、2mの葉柄から50〜60cmの糸がとれ、それらを上手に重ねあわせて撚っていくと5〜6mの糸がとれる場合があります。その昔、韓半島から養蚕が伝わる以前から、ハス糸の織物が作られていたという説もあります。

    3. ハスは花が開花する時に、「ポン」という音がするのでしょうか。

       盛夏のほの明るい早朝、そよそよと風にゆられるハス葉に囲まれて、開花まえの蕾が「ポン」と音をたてて咲けばこれほど優雅な風情はありません。多くの文人や愛好家たちの夢だったと思います。 関西校のハス保存会もこれに挑戦しました。1983年7月のことですが、初めてハスの開花を見るための合宿を行いました。早朝の2時より目をこすりこすり、生徒たちは蚊の攻撃もなんのその、ハスの葉の香りをいっぱい吸いながら、カセットテープレコーダーの集音器に注目しました。4時から5時ごろ微妙に開花する花弁を見つめながら、ひたすら息をこらしての格闘でした。しかし音はまったく耳には聞こえませんでした。NHKの実験でも同様の結果が報告されておりました。多分、池にいた鯉が水面近くで口をパクパクあけた音や、カエルが池にチャポンと飛び込んだ音が、ハスの開花の時と絡まってのことと言われています。音は鳴らないとしても、鳴りそうな風情がハスにあるのはなぜでしょうか。古来からなんとしても音がして欲しいとの願望かと思うと夢があります。


  15. ハスと文学
  16.  わが国の文献にハスが最初に出てくるのは、4.で述べましたように『古事記』(712年)にある、雄略天皇記(457〜479年)の赤猪子の段の歌が最初です。

     『万葉集』にはハスを詠んだ長歌一首、短歌三首があります。
    「 御はかしを 剣の池の 蓮葉に 澑れる水の 行方無み わがする時に 逢ふべしと あひたる君を な寝そと 母聞せども わが心 清隅の池の 池の底 吾は忘れず ただに逢ふまでに 」 (巻十三、三二八九)
    「 蓮葉は かくこそあるもの 意吉麻呂が 家なるものは 芋の葉にあらし 」 (巻十六、三八二六)
    「 勝間田の 池は我れ知る 蓮無し 然言ふ君が 髭無き如し 」 (巻十六、三八三五)
    「 ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉に 澑れる水の玉に似たる見む 」 (巻十六、三八三七)

     『古事記』、『日本書紀』、『万葉集』などに詠まれるハスは、いずれも花や露の美しさを取りあげました。仏教伝来とともに、ハスは文学の中でも仏教的シンボルとなり、『梁塵秘抄』、『古今集』、『枕草子』、『源氏物語』、『凌雲集』などにも取り入れられています。そして奈良、平安王朝文学以後のハスを歌うものには、周茂叔が『愛蓮説』で、蓮は「花中の君子」と賛美したような、明るくのびのびとした表現の歌は、なぜか日本では生まれていないように思います。

    『古今集』 「はちす葉の 濁りにしまぬ 心もて 何かは露を 玉とあざむく」 (巻第三・一六五) 僧正遍昭

    『枕草子』 「草は(中略)蓮葉、よろづの草よりもすぐれてめでたし。妙法蓮華経のたとひにも、花は仏にたてまつり、実は数珠につらぬき、(中略)また、花なき頃、みどりなる池の水に紅に咲きたるも、いとをかし」(六十六段)

    『源氏物語』 若菜・下(紫上と源氏がハス露をとりあげて自分の思いを詠んでいる)
    紫上が「消えとまるほどやは経べき たまさかに 蓮の露のかかるばかりを」と詠むと、源氏は「契りおかむ 此の世ならでも蓮葉に 玉ゐる露の心隔つな」と和している。

    『徒然草』 「家にありたき木は」の中で、池には蓮をあげている。 (百三十九段)

    『蕪村』 「蓮の香や 水をはなるる 茎二寸」

    『一茶』 「雀らが 浴びなくしたり 蓮の水」

    『愛蓮説』 周茂叔(1017〜1073年)は北宋の学者で、中国における花の文学史の決定版として記した比較的短い名文をのこしている。茂叔は『愛蓮説』の中で、菊を隠逸の花、牡丹を富貴の花といい、蓮は「花中の君子なり」といって称えている。
    『水陸草木の花 愛す可き者甚だ蕃し 晋の陶淵明は独り菊を愛せり 李唐自り来 世人甚だ牡丹を愛す 予は独り蓮の淤泥より出づるも染まらず 清漣に濯はるるも妖ならず 中通じ外直く 蔓せず枝せず 香 遠くして益々清(あお)く 亭亭として浄く植(た)ち 遠観す可くして 褻翫(せつがん)す可からざるを愛す 予謂らく「菊は花の隠逸なる者なり 牡丹は花の富貴なる者なり 蓮は花の君子たる者なり」と 噫、菊を之愛するは 陶の後聞く有る鮮し 蓮を之愛する 予に同じき者何人ぞ 牡丹を之愛するは 宜なるかな衆きこと』

     今日の中国では、ハスはおめでたい花として、便箋・筆墨印材の飾りや婚儀の用具の絵となり、日本とは異なります。東南アジア、インドの各地では生活に根付いたハスがよく見られます。


  17. ハスに思う
  18.  ハスは、古来、寺社や貴族・諸大名の特権階級の観賞用の花として栽培されました。しかし、お盆の花としての印象から敬遠され、一般庶民の目から離れていったようです。観賞用の花としてのハスは、江戸時代の元禄期と昭和20年代後半、大賀一郎博士の発掘した二千年ハス(大賀ハス)が世界的な話題となった以後に登場してきました。最近、園芸ブームやガーデニングにより、ハスは観賞用の花として見直されております。さらに身近な花として、また仏法上の意義のある花としての理解を拡大するために、花蓮の小型化を促進できるような栽培に取り組みたいと思います。
     夏季市民講座や関西創価小学校の学園スティなど、さまざまな機会を通して、ハスの花を見ながら仏法の「如蓮華在水」の譬えを実物に即して話しますと、殆どの方は大変に驚かれます。実際に葉や葉柄に水や泥がつかずその汚れに染まらないハスの機能に、保存会の生徒や私自身もあらためて感動し、ハスと仏法との関連に納得します。ハスはいちばん盛夏を好む花であります。多くのハスが熱帯産であり、その生まれ故郷を恋しがって、高い気温や水温と高湿度に適応性を発揮するものと思います。
     蓮根の植え替えをする4月初め、浮き葉の出る5月、立て葉の発育する5月の下旬、いよいよ蕾の立ち上がる6月初めとなると、毎日、胸がワクワクしてきます。蕾が出て開花するまでの2週間くらいは、赤ん坊の出産のようで落ち着きません。
     早い季節で6月の中旬に開花、遅い季節でも7月の初旬が開花の時期です。花は平成13年の夏のような猛暑の年は8月の中旬で咲き終わり、涼しい夏の年は9月の初旬まで咲く時もありました。学園育ちの花ハスを各地にお裾分けするたびに、ハスの取り持つ縁で学園と地域の方とのハスネットワークが拡大してきました。そのことが学園理解ネットワークになっており、環境保全の意識高揚にもつながると思われます。
     毎年8月の市民講座「万葉のロマン求めて─蓮・人と自然」を担当させていただいて5回目を数え、多くの 方とハス談義を楽しみながら、毎回、創意工夫を凝らしております。開花する7月から8月の間には、地元の方や遠くは兵庫県から写真愛好家の方が、早朝より来校されることもあります。
     地域の方や諸施設から栽培の要望が寄せられる度に、ハス保存会の生徒達は汗と泥作業の中で丹誠こめて育てたハスが、これほど愛されることを肌で感じ、あらためてハス保存会の活動意義を再認識しております。そして毎年、ハスが開花するたび活動に携わった生徒達が、ハスの花の如く馥郁たる人材に成長していくことを確信しています。 

    「花蓮の 姿と香りに さそわれて かわす笑顔に 朝風やさし」


    ハス保存会 生徒の声

     一言で「きれい」、 心がとても温かくなりました。ハスの花が開いたときの気持ちです。自信満々に咲くハスを見て、勇気をもらいました。私もハスのように自分のすべきことに真っ直ぐに進んでいきます。
    (高校3年 安住陽子)
     
     私は、2年間ハス保存会の部長をさせていただきました。美しいとは言えない泥の中から、懸命に開く大輪のハスを見たとき、人間は今再び美しい心を取り戻し、真剣に世界平和のことを考えて行かねばならないと、自然に思えてきました。
    (高校3年 那須 伸勝)
     
     私は、ハス保存会に入ったばかりです。ハスの花を見ていると心が和みます。花は人の心を和ませるのだと思います。世界平和のために、もっともっと花を増やそうと思います。
    (高校1年 李 珊)
     
     7月の中旬のことです。私は、学園の蓮を育てていただいている地域と学校を見て回りました。多くの方々に喜んでいただいていることに驚き感動がこみ上げてきました。
    (高校1年 森 正伸)
    ハス保存会のメンバー
    メンバー


    【贈呈者名簿】

     環境教育の一環として、ハス保存会の活動をまとめさせていただきました。この間の活動20年間、栽培のもととなりますハスの蓮根や種子を贈呈してくださった方々のご協力に感謝して、お名前を留めさせていただきます。


    【参考文献】

    『蓮の話』第2号(1997.6) かど創房
    『蓮の話』第4号(1999.7) かど創房
    『ハスを語る』(1954) 大賀一郎著 忍書院
    『蓮の文華史』(1994.4) 三浦功大著 かど創房
    『日本唱歌全集』(昭和53.7) 井上武士編集 音楽之友社
    『花蓮』(1972.11) 阪本祐二・北村文雄共著 講談社
    『魅惑の花蓮』(1990.3) 渡辺達三著 日本公園緑地協会
    『ハスの実の研究』(1967.7) 豊田清修著 井上書店
    『ハスの研究』(昭和56.11) 豊田清修著 有明書店
    『ものと人間の文化史21・蓮』(1977.4) 阪本祐二著 法政大学出版局
    『潮』(昭和60.9) 潮出版社
    『生命と仏法を語る』上巻(昭和61.11) 池田大作著 潮出版社
    『法華経の智慧』三巻(1997.7) 池田大作著 聖教新聞社
    『蓮と法華経』(2000.8) 松山俊太郎著 聖教新聞社
    『大白蓮華』(1997.1) 聖教新聞社
    『日蓮大聖人御書全集』(昭和35年7月) 創価学会
    『仏教哲学大辞典』(昭和44.3) 創価学会
    『原色園芸植物図鑑』(昭和59.5) 林 弥栄・古里和夫共著 北隆館
    『原色世界植物大図鑑』(昭和61.4) 林 弥栄・古里和夫共著 北隆館


    (なお、この報告は、夏季市民講座の内容に加筆・修正したものです。 文責 野崎尚夫)

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