創価教育研究所通信

 第3巻第5号 2000年8月24日 発行

野鳥・自然環境研究所報告 (1)


 2000年4月より「霧島フィールド」(九州研修道場)が名称を改め、自然と人間の共生の場として一層の充実を図っていくものとして「21世紀自然研修道場」としてスタートいたしました。 この自然研修道場一帯は、植物から野鳥に至るまで、豊かな自然環境が広がる動植物の貴重な研究フィールドでもあります。 これまでも創価学園 野鳥・自然環境研究所のフィールドとしてサマーセミナーなどで生徒たちに自然環境保護の意識を啓発する教室となってきました。 石井久夫研究員より、霧島フィールドの野鳥調査報告が届きました。 今後、別海・霧島・八重山・霧ケ峰等の委嘱研究員からの報告を、随時掲載してまいります。

霧島フィールドにおける野鳥生息調査について
(第2次中間報告)

霧島フィールド 石井 久夫(委嘱研究員)


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  1. はじめに

     霧島フィールドは、鹿児島県姶良(あいら)郡牧園町の東部に位置し殆どが霧島屋久国立公園指定区域内にあり、豊かな南九州の自然に恵まれた環境である。
     標高700mから1100mに位置し、常緑広葉樹林(ヤブツバキクラス)を主体として標高の高いところには夏緑広葉樹林(ミズナラ・ブナクラス)が広がり、一部にスギ、ヒノキの造林地をもち周囲を国有林に囲まれた素晴らしい立地条件をもつフィールドで豊富な植物相、動物相にささえられ、鳥についても四季を通じていろいろの種が観察されている。
     創価学園の野鳥研究所準備委員会の発足以来調査が続けられ、1991年6月に霧島フィールドの植物・野鳥調査報告(第1次報告)をまとめた。その後1998年から現在まで第2次の野鳥調査を実施している。今回はその中間報告という形で2000年5月までの約2年間の成果を報告いたします。


  2. 調査の方法

     今回の調査は、前回同様に旭日道場の柿の実公園を基点(地図参照)として池田庭園より仏界台を経由して久遠庭園入口まで、そこから経の滝、再び仏界台より総合案内所を経て牧口公園までのコースを設定して観察を行った。
     主として、点調査・線調査で、点調査は牧口庭園と仏界台の上部を定点として20分間を観察時間とし、あとは上記のコースを時速2kmのロードサイト調査として確認できた鳥類の種名、個体数、さえずり等を特に観察幅は定めずに記録するようにした。

    霧島フィールド(21世紀自然研修道場)
    地図


                               

  3. 調査の結果

     今回の調査のまとめとして調査野帳に記載された感想を先に挙げると次の通りである。

    1. カラ類(特にシジュウカラ、ヤマガラ)とウグイスの個体が多い。
    2. オオルリの育雛、コシジロヤマドリの親子が観察できた。
    3. カラ類の混群(シジュウカラ、ヤマガラ、コガラ、ヒガラ、エナガ)にであった。
    4. カッコウの声が良く聞こえた。
    5. メジロとヒヨドリの数が非常に多い。コルリとコガモを観察した。
    6. 窓に飛び込んだトラツグミが失神し,回復後に放鳥(1999年4月16日)した。
    7. 繁殖期のため鳥種が多く、アカショウビンが良く鳴いていた。
    8. 渡りの途中のエゾヒタキを多数観察した。雄のコシジロヤマドリを観察した。(1999年9月6日)
    9. 気温6℃まで下がり寒かった。カワラヒワの集団を観察する。
    10. ミヤマホオジロ多数渡来する。ツグミ類の渡来数が少ない。
    11. 今回はウグイスが確認できなかったが、寒さで餌がなく里に降りたものと思われる。
    12. 2000年4月26日、キビタキ、オオルリのさえずり(囀り)が始まる。 ミヤマホオジロの居残りがあった。キツツキの声がいつもより多く聞こえる。

     このようにいろいろのトピックスがあったが、今回の調査を通して一番の話題はコシジロヤマドリの出現だと思う。 それも雛が観察され、一家で我々の前に現れ初披露という感じで一同大いに喜びにわいた。 コシジロヤマドリは近年山林の開発に伴い、伐採や、スギ・ヒノキの植林のために森林の構成樹種が単一化され九州の南部だけにすむコシジロヤマドリの生息に適する広葉樹の林地が少なくなり、著しく個体数が激減している。 (一部は、ヒノキの密林にすむこともある)
     ヤマドリについては、各亜種を野生の個体群として保護していくことは、種と種分化の問題を研究する上で貴重な存在であり、コシジロヤマドリにとっても大事なことで、本フィールドでは雛も確認され、確実に繁殖していることの証である。 今後とも個体の増加を視野に入れたフィールドの運営を考えなくてはならないと思っている。
     今回の中間報告の野鳥リストを見ると、やはりカラ類の出現頻度が高い。例えば、コガラ(1.13)、ヒガラ(1.25)、ヤマガラ(8.20)、シジュウカラ(9.60)、 ゴジュウカラ(0.70)で調査の度にカラ類は常時出現していることになり量的にも数が多い。 特にヤマガラ、シジュウカラは全域に生息して、このフィールドの主たる鳥種ということになる。
     この他にウグイスの個体数が多い。 前回の調査リストになかったワシタカ類のハイタカと渡りの途中立寄 ったと思われるヒタキ科のノゴマが牧口庭園に見られたのは嬉しい限りである。 加えて仏界台の上空を採餌に向かうカモ類(こがも)の通路になっていることが判明し、今までカモ類の確認がなかったので特に冬場の観察の楽しみが増えた。時間帯によっては、多数のカモ類の通過が見られるのではと思っている。
     今後の持続的な観察により、霧島国立公園内に生息する野鳥種を全て観察できるものと確信している。


  4. 考察(反省と今後の課題)

     この度、本格的に野鳥・自然環境研究所として発足を見たので自然環境と野鳥の関係を鳥の立場に立って調査研究を行うことが大切であり、それが自然保護の立場から見ると環境保全に役だち、研究所としての役割は重大なものになる。 現在、定点の観察は20分で実施しているが環境庁の調査要領のとおり30分に改正したらと思っている。 調査の結果にも記したとおり、カモ類の採餌通路があるので、特に冬の夕方の5時30分頃の観察を強化すればいろいろのカモ類の確認ができるのではないかと思う。 本フィールドでは地理的・地形的な要因もあり、池がないのでカモ類の観察は皆無であったので上空通過を観察するのも一方法であると思う。 加えて、九州の西海岸はアカハラダカの渡りのコースとして有名で、本フィールド上空も最近の調査で,白鳥山から南下するコースでアカハラダカが観察されているので、調査日時を渡りの9月中旬から下旬にあわせると、アカハラダカの南下が観察できると思う。 事実、韓国岳の上空を南下するコースが確認されている。 余裕ができたら夜間の調査(フクロウ類)も必要となるだろう。


  5. あとがき

     最近、自然環境破壊や悪化に伴って自然環境を保全することがいかに大切かということが力説されている。 本フィールドの恵まれた自然のなかで野鳥たちが生き生きと生活していることは、自然の調和がとれていてバランスよく食物の連鎖が機能していることだと思う。 野鳥を育む自然条件が豊かで自然の生態を学ぶのに適した環境といえよう。 将来を見据えて若者達に地球環境の大切さを理解させ、自然・人類にする思いやりを培う環境教育の場として大いに利用されなければならない。 21世紀の次代を担う若者達に自然の大切さを体験させ、その微妙な自然のバランスの仕組みを会得させる勉学の場としての野鳥研究となるべくその基礎を作らねばならない。 豊かな野鳥の生息するバックグラウンドをもつ本フィールドの存在価値は高まり期待されるものであろう。


  6. 参考文献

    1. 別海・霧島フィールドにおける、植物鳥類等の概要(調査報告書)
      創価大学付属自然植物園準備委員会・創価学園付属野鳥研究所準備委員会編
    2. フィールドガイド「日本の野鳥」 高野伸二著 日本野鳥の会
    3. 日本鳥類大図鑑  清棲保之著  講談社
    4. 宮崎の野鳥  日本野鳥の会宮崎支部編  宮崎県
    5. 日本産鳥類の繁殖分布  環境庁編


    霧島フィールドの鳥類リスト(1998.5〜2000.5)

      ガンカモ目 ANSERIFORMES
        ガンカモ科  ANATIDAE
    1. (88) コガモ  Anas crecca

      ワシタカ目  FALCONIFORMES
        ワシタカ科  ACCIPITRIDAE

    2. (124) ハイタカ  Accipiter nisus
    3. (128) サシバ  Butastur indicus

      キジ目  GALLIFORMES
        キジ科  PHASIANIDAE

    4. (146) コジュケイ  Bambusicola thorasica
    5. (147) ヤマドリ  Phasianus soemmerringii
           (コシジロヤマドリ  P.s.ijimae

      ハト目  COLUMBIFORMES
        ハト科  COLUMBIDAE

    6. (288) キジバト  Streptopelia orientalis
    7. (290) アオバト  Sphenurus sieboldii

      ホトトギス目  CUCULIFORMES
        ホトトギス科  CUCULIDAE

    8. (293) カッコウ  Cuculus canorus
    9. (295) ホトトギス  Cuculus poliocephalus

      ブッポウソウ目  CORACIIFORMES
        カワセミ科  ALCEDINIDAE

    10. (312) アカショウビン  Halcyon coromanda

      キツツキ目  PICIFORMES
        キツツキ科  PICIDAE

    11. (319) アオゲラ  Picus awokera
    12. (325) オオアカゲラ  Dendrocopos leucotos
    13. (327) コゲラ  Dendrocopos kizuki

      スズメ目  PASSERIFORMES
        ツバメ科  HIRUNDINIDAE

    14. (335)  ツバメ  Hirundo rustica

        セキレイ科  MOTACILLIDAE

    15. (342)  キセキレイ  Motacilla cinerae

        サンショウクイ科  CAMPEPHAGIDAE

    16. (353) サンショウクイ  Pericrocotus divaricatus

        ヒヨドリ科  PYCNONOTIDAE

    17. (355)  ヒヨドリ  Hypsipetes amaurotis

        モズ科  LANIIDAE

    18. (357) モズ  Lanius bucephalus

        カワガラス科  CINCLIDAE

    19. (363)  カワガラス  Cinclus pallasii

        ミソサザイ科  TROGLODYTIDAE

    20. (364)  ミソサザイ  Troglodytes troglodytes

        ヒタキ科  MUSCICAPIDAE

    21. (373)  コルリ  Erithacus cyane
    22. (374)  ルリビタキ  Tarsiger cyanurus
    23. (375)  ジョウビタキ  Phoenicurus auroreus
    24. (383)  トラツグミ  Turdus dauma
    25. (389)  シロハラ  Turdus pallidus
    26. (392)  ツグミ  Turdus naumanni

        ウグイス亜科  SYLVIINAE

    27. (396)  ヤブサメ  Cettia squameiceps
    28. (397)  ウグイス  Cettia diphone

        ヒタキ亜科  MUSCICAPINAE

    29. (414)  キビタキ  Ficedula narcissina
    30. (417)  オオルリ  Cyanoptila cyanomelana
    31. (419)  エゾヒタキ  Muscicapa griseisticta

        エナガ科  AEGITHALIDAE

    32. (422)  エナガ  Aegithalos caudatus

        シジュウカラ科  PARIDAE

    33. (425)  コガラ  Parus montanus
    34. (426)  ヒガラ  Parus ater
    35. (427)  ヤマガラ  Parus varius
    36. (428)  シジュウカラ  Parus major

        ゴジュウカラ科  SITTIDAE

    37. (429)  ゴジュウカラ  Sitta europaea

        メジロ科  ZOSTEROPIDAE

    38. (431)  メジロ  Zosterops japonica

        ホオジロ科  EMBERIZIDAE

    39. (435)  ホオジロ  Emberiza cioides
    40. (442)  ミヤマホオジロ  Emberiza elegans
    41. (447)  アオジ  Emberiza spodocephala

        アトリ科  FRINGILLIDAE

    42. (456)  アトリ  Fringilla montifringilla
    43. (457)  カワラヒワ  Carduelis sinica
    44. (471)  イカル  Eophona personata

        ハタオリドリ科  PLOCEIDAE

    45. (474)  スズメ  Passer montanus

        カラス科  CORVIDAE

    46. (481)  カケス  Garrulus glandarius
    47. (488)  ハシボソカラス  Corvus corone
    48. (489)  ハシブトカラス  Corvus macrorhynchos

(石井久夫:環境庁自然公園指導員、日本野鳥の会会員、日本山岳会自然保護委員)

以上


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