INSTITUTE of NATURAL SCIENCE and EDUCATION in SOKA SCHOOL SYSTEM

野鳥・自然環境研究所報告

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第5巻第4号(通巻第20号)

2006年2月11日発行


(理科環境クラブ報告)

環境が植物に与える影響について

関西創価中学・高等学校教諭 小西 弘子


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 本校の理科環境クラブ(中高合同)は、主に「環境」をテーマに取り組んでいる。毎年の流れとしては、学生科学賞、化学研究発表会、太陽電池工作コンクール、サイエンス・フェスタ等の発表やコンクールの場を目標にして、活動している。その成果として、これまでに各種の賞を受賞しており、部員たちの励みとなっている。
 本年は、第49回大阪府学生科学賞(大阪府教育委員会、大阪府科学教育振興委員会、読売新聞大阪本社主催)に、研究題目「環境が植物に与える影響について」の作品を応募したところ、中学校の部で「最優秀賞」を初めて受賞することができた。今回は、その研究内容を報告させていただく。


  1. 研究の目的
  2.  植物が育っていくのに環境がどのように影響するかを調べようと思い、いろいろな性質の水溶液で植物を育てる実験をした。また、植物が育つには、どんな性質の水溶液がよいのかを知りたいと思い実験した。そのために、「I.生活排水の実験」、「II.金属イオンの実験」、「III.pHの実験」、「IV.ブドウ糖の実験」を行った。


  3. 準備
  • 実験器具
  • 実験条件
    実験室内で行った。(気温:25〜29℃、湿度:45〜70%)


  • 実験方法

  • 実験結果
    1. 生活排水の実験

      3日目
      3日目
      7日目
      7日目
      グラフ
       米のとぎ汁で育てたカイワレダイコンには、全く成長しなかった種が10粒のうち、3粒もあった。それが、偶然なのかはわからない。
       水で育てたカイワレダイコンは全部育った。

    2. 金属イオンの実験

       初め、5%の水溶液で実験したが、2週間経っても水以外は、どれも全く発芽しなかった。そこで、3%、1%と濃度をうすくして実験してみたが、これも発芽しなかった。次に、0.1%で実験してみると、金属イオンの種類による育ち方のちがいが見られた。

      3日目
      3日目
      7日目
      7日目
      グラフ

      1. カリウムイオンで育てたカイワレダイコンには、実験を始めて4日目ぐらいから緑色のカビができ、その後、カイワレダイコンの成長が遅くなり、やがて、カビにおおわれ成長しなくなった。

      2. マンガンイオンで育てたカイワレダイコンにもカビが少しできたが、カリウムイオンとはちがって茶色っぽいカビだった。

      3. マンガンイオンで育てたカイワレダイコンには、葉の緑色がなく白っぽかった。

    3. pHの実験

      • カイワレダイコン

        3日目
        3日目
        7日目
        7日目
        グラフ

        1. pH7がいちばんよく育つことがわかった。その次がpH9、5、11、3の順であった。pH1と13は全く育たなかった。

        2. pH3で育てたカイワレダイコンは、葉が茶色っぽくなった。また、実験を始めて5日目ぐらいから緑色のカビができはじめた。

        3. pH3、5は根が細く、だんだん茶色っぽくなったが、pH9、11は根がしっかりした感じであった。

      • ソラマメ

        6日目
        6日目
        (左からpH3、5、7、9、11)
        グラフ
         カイワレダイコンで全く育たなかったpH1と13を除いたpH3、5、7、9、11でソラマメの実験を行った。
         全体的にはpH7がいちばんよく育った。茎の長さはpH5、9、7、11、3の順、根の長さはpH7、3、9、11、5の順であった。pH5は、茎はいちばん長いけど、根は他に比べて短かった。


    4. ブドウ糖の実験

      • カイワレダイコン

        7日目
        7日目
         まず、カイワレダイコンの実験を行ったが、この実験は始めて5日目ごろから、ブドウ糖を与えたカイワレダイコンに 白いカビができはじめ、それからあとはカビでおおわれて測定ができなくなった。そこで今度は、ソラマメをバーミキュ ライトで育てる実験をすることにした。

      • ソラマメ

        6日目
        6日目
        (左から0、0.2、0.4、0.6、0.8、1%)
        グラフ


  • 考察
    1. 生活排水の実験

      • カイワレダイコンの実験
        米のとぎ汁の方がよく育った。


    2. 金属イオンの実験

      • カイワレダイコンの実験
        水がいちばんよく育った。次に、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオンの順であった。銅イオンは、全く成長しなかった。
        今回実験した金属イオンは、植物にとって必要なイオンである。しかし、1種類ずつの成分では育ちが悪いことがわかった。どの成分も必要であることがわかった。


    3. 酸性・アルカリ性の実験

      • カイワレダイコンの実験
        pH7がいちばんよく育った。酸性、アルカリ性が強いと育ちにくかった。
        カイワレダイコンは、酸性やアルカリ性の影響、特に酸性の影響を受けやすいことがわかった。

      • ソラマメの実験
        全体的にはpH7がいちばんよく育った。
        茎の長さはpH5、9、7、11、3の順、根の長さはpH7、3、9、11、5の順であった。
        ソラマメも、酸性やアルカリ性の影響を受けることがわかった。


    4. ブドウ糖の実験

      • ソラマメの実験
        3日目ごろまではブドウ糖水溶液の効果があるように思ったが、あとになると育ちにくかった。


  • まとめ
    1. 金属イオンや酸性・アルカリ性の水溶液は、植物の成長によくない影響を与えていることがわかった。しかし、植物に金属イオンを1種類ずつの成分で与えた場合は育ちが悪かったが、幾つかの成分を組み合わせて与えると、違う結果があらわれたかも知れない。また、実際の土や肥料に含まれている金属イオンの濃度を調べてみて、それに近い濃度で実験してみたいと思った。酸性・アルカリ性の水溶液についても、実際の土や肥料を調べて、実験の条件を考えてみたい。

    2. 僕たちは、植物の成長を促進する物質はないかと思い、ブドウ糖水溶液で植物を育てた。それは、植物は自分でブドウ糖をつくって生きているから、そのブドウ糖を外から与えてやるとよく成長すると思ったからだ。しかし、今回の実験でははっきりと確かめられなかった。

    3. 植物は、動物と違って自分では移動することができない。その環境がどんな状態であっても、そこで生きていくしかない。そんな植物はたくましいなと思った。植物が充分に育っていけるような環境にしていきたいと思う。

    4. 地球の温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨、森林破壊、砂漠化、生物の絶滅など、地球規模での環境問題が大きくとりあげられている。また、日本でも湖沼の水質汚染や都市部の大気汚染の問題など、解決すべき環境問題が数多くある。これらは、人類や地球の将来を危うくするほどの重要な問題である。環境問題を自分たちの問題としてとらえ、大切な生命を守っていきたいと思う。


     以上が、研究の主な内容である。この研究は、今年の夏休み前にテーマを決め、夏休みから9月にかけて行ったものである。ほぼ毎日行う植物の観察・測定など、根気を必要とする実験であったが、部員たちの努力でよい成果を得ることができた。
     今回の大阪府学生科学賞は、予備審査に合格した167点(小学校115点、中学校41点、高校11点)の応募作品に対して、10月下旬に大阪府教育センターで本審査が行われた。公開された作品はどれもすばらしい出来で圧倒されたが、本校の作品が中学校の部の最優秀賞作品6点の中に選ばれたのである。11月5日、読売大阪ビルで表彰式が行われた。部員たちは、「最優秀賞を受賞できて、とてもうれしい。」(1年生)、「毎日の測定など、苦労した甲斐があった。」(3年生)「中学校最後の時に、創立者に良いご報告ができてよかった。」(3年生)などの感想を語っていた。また、同伴の保護者の方々もたいへんに喜んでおられた。これからも、生徒の無限の可能性を導く、責任と使命を自覚しながら自分にできることは何でもしていきたいと思う。

    作品
    作品
    表彰状と盾
    表彰状と盾


    【参考】審査員による講評(要旨)

     植物が成長していく時に、環境がどのように影響するかしらべようとした本研究は、中学生らしい研究として評価できる。カイワレダイコンの発芽成長を金属イオンの水溶液のpHを変えて定量的に解明しようとした工夫や、光合成でできるブドウ糖に注目してその溶液でも成長できるのか調べたことは面白い発想である。植物の成長にそれぞれの条件が与える影響をグラフ化し、明確に考察しようとしたことも評価できる。
           (中略)
     環境が植物に与える影響をしらべるため、たとえば生活排水などひとつの要素についてだけでも多角的な視点で追求すると発展した研究とすることができる。本研究が、更に継続した研究となるよう期待する。


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