INSTITUTE of NATURAL SCIENCE and EDUCATION in SOKA SCHOOL SYSTEM

野鳥・自然環境研究所報告

title.gif

第6巻第1号 (通巻第21号)

2006年7月31日 発行


「桜保存会」の活動

関西創価高校教諭  永田 容子


Bar


  1. はじめに
  2. またや見む
       かた野のみ野の桜狩り
          花の雪ちる春のあけぼの

     関西創価中学校・高等学校は大阪と京都の中間、交野の地にあります。交野はその昔、古代日本の文化揺籃の地であり、平安時代には桓武天皇が交野の一角に離宮を造っており、また、大宮人たちが観桜、観月、観風の宴を張る地であったとも言われています。古今集や新古今集にも冒頭の和歌のように、交野の桜を詠んだものも多く、特に伊勢物語には、惟喬親王の御催による交野での最初の桜狩りの様子が詳しく記されています。これらのことからも、交野が古より桜の名所であったことがわかります。
     ここ交野の地に創立された学園に、創立者池田先生の提案により桜保存会が発足したことは、、深い意味を感じます。活動開始より28年が過ぎ、改めて桜保存会の活動についてまとめてみたいと思います。


  3. 保存会の発足と基本精神
  4.  1978年(昭和53年)4月、来阪された創立者と教職員との懇談会の折りに、学園をとりまく豊かな自然環境について語り合われました。そして、いろいろな保存会の提案があり、「万葉の昔から桜で有名であった交野に桜を甦らせて、春は桜の名所にしよう」との話があり、「桜保存会」が発足しました。
     基本精神の一つは創立精神そのものです。
     創立者の心を教師と生徒が真剣に受け止め、創立者の構想を即実践し、そして実現していく。1978年、さっそく取り組みました。共鳴して集まってきた人たちは、桜が美しいからとか好きだからと言う以前に、創立者を求めてきているのです。
     二つには、人を育てると言うことです。桜を守り、育てると言うことは地味で、時間のかかる作業です。1年の作業のほとんどが、目立たないけれど大切な仕事です。厳しい自然との戦いの中で、あるいは自己との戦いでもあるのです。「創立者に喜んでいただくために、桜を立派に守り育て、そして学園を、交野を、桜で満開にしよう」との誇りがあるから、保存会の生徒たちは厳しい自然の辛さの中での仕事に、充実感さえ見出しています。


  5. 桜保存会の活動と研究
  6.  発足当時の桜は10年〜15年もので、直径10cm位のまだまだ小さい木でした。そして1974年(昭和49年)10月17日、創立者が来校の折りに開園式が行われた「交野自然公園」に足を踏み入れてみると、桜は、大人の背丈ほどもあるセイタカアワダチソウなどに埋もれ、クズが巻き付き、雑草の林と化していたのです。そこからの作業開始でした。
     保存会の作業には、下草刈り、クズ取り、枝払い、害虫駆除などがあります。
     自然公園に入って、慣れない鎌を持ち、草刈りから始まり、桜に巻き付いたクズを退治しながら、土を耕し、そしてそこに桜の苗を植樹していくと、少しずつ元の姿に戻っていきました。自然公園が昔の姿を見せていく中で、一つ一つの場所にみんなで名前を付けていきました。「萌黄の池」、「園子の庭」、「紫陽花園」、「桜源郷」、「展望の丘」等、創立者との思い出が胸の中で大きくふくらみ、そして世界が大きく開けていくようでした。

    1. 桜を守る作業
      1. クズ取り
      2.  2mもあるセイタカアワダチソウを刈っていくと、埋もれた桜を発見します。喜ぶのもつかの間、クズがしっかりと巻き付いているのです。桜は泣いていたのです。移植してから5年もこの状態だったのですから。一本一本根元からつるを払い、下草を払い、土を耕していきました。しかし、クズは生命力が強く、しばらくするとまたすぐつるが出てくるのです。そこでいろいろ思索検討し、根元の切り口にキリで穴を開け、薬を塗ったケイピンを一本ずつ差し込んでいく。大変な作業ですが、根気強くやっていきました。そしてうまくいったのです。

      3. 下草刈り
      4.  広い敷地でもあり、特に梅雨時は雑草の生長も盛んなので、草取りというよりむしろ雑草との戦いです。しかし、これをやっておかないと、栄養分を全部とられるのです。ちょっと油断すると、雑草が人間の背丈以上になるのです。従って、桜の作業に行くときは必ず、片手にカマ、軍手というスタイルになるのです。

      5. 枝払い
      6.  昔の人は言いました。「桜切るバカ、梅切らぬバカ」と。桜は他の木より木質部が腐りやすく、放置すれば大切な幹まで枯れ込み、取り返しのつかぬ大きな傷跡を作ることになります。従って、樹形を整える意味と、病気の枝、弱っている枝、枯れ枝等を11月〜3月までに剪定します。枝を切り取った傷口には、癒合剤を必ず塗っておきます。
         なお、現在は桜の木が大きくなったので、専門の業者の方にお願いしています。

      7. 害虫駆除
      8.  季節により発生する害虫の種類は様々ですが、害虫はなんといっても早期発見、ただちに処置することが大切です。ただし、薬剤を使用しますので、業者の方にしていただいています。私たちはもっぱら、目に見える毛虫を割り箸ではさんで取る程度です。
         その他、肥料と土の入れ替えの必要な場合も、業者の方のお世話になっています。


    2. 学園の桜の本数
    3.  校内の桜の本数を数えることになりました。学園敷地の全面図を用意し、分割しながら3〜4人一組で桜の本数を数え、図面に位置も確認しながら書き込んでいきました。開校当時約2000本あった桜が、保存会発足当時は1200本になっていました。現在では、校舎の拡充、校内庭園や自然公園の整備等で、約600本になっています。
       学園に来校された方々(ゴルバチョフ元大統領夫妻等)や学園に縁のある方々の記念植樹も25本になりました。

      sakuramap
      学園の桜分布図

    4. 学園の桜の種類
    5.  学園の桜の種類を調べると言っても、まずどんな桜が何種類あるのか、ということからの勉強でした。桜の花の咲く時期を待って、専門書を手に種類を見分け、分布図を作成していきました。そして、珍しい品種も植えながら、現在では16種類の桜が学園にはあります。3月末から4月末までの約1ヶ月間、次々と咲いて目を楽しませてくれます。

      学園の桜の主な系統と品種
      名称・品種花色花型、花弁数、花径(cm)開花期花と葉の関係若芽樹姿など主な分布場所本数
      自生種(原種)大島桜一重、5枚、3.5cm、微香有4月上旬花が先行淡褐色大木性、直立斜上開張形学園池田会館裏7
      山桜一重、5枚、3cm4月上旬葉が先行赤褐色大木性、直立斜上形裏山14
      江戸彼岸白または淡赤色一重、5枚、2.5cm、やや盃型3月下旬花先行または同時淡緑色中木性、斜上形、細枝ミルキーウエイ1
      寒桜系寒緋桜緋紅色から濃紅色一重、5枚、1.5〜2cm、下向き筒咲き2月中・下旬花が先行黄緑色中木性、斜上開張形ロマンの丘1
      冬桜白、中心淡紅色一重、5枚、2.5cm、花弁はごく短い1月〜3月花が先行緑色中木性、直立斜上形ミルキーウエイ1
      彼岸桜系彼岸桜淡々紅色一重、5枚、2cm3月下旬同時淡緑色中木性、直立斜上形ミルキーウエイ2
      彼岸枝垂淡紅色一重、5枚、2.5cm3月下旬花が先行緑色大木性、枝垂れ形、細枝玄関ロータリー、 ビクトリーグラウンド6
      彼岸紅枝垂紅色一重、5枚、2.5cm4月上旬花が先行緑色大木性、枝垂れ形、細枝白鳥の池、万葉の池10
      八重紅枝垂紅色八重、15枚、2.5cm4月上旬花が先行緑色大木性、枝垂れ形、細枝白鳥の池、万葉の池、記念植樹等46
      サトザクラ系関山濃紅色千重、30枚余、4〜5cm、葉化弁がある4月下旬葉が先行赤褐色大木性、開帳形傘状枝、太枝第一駐車場、ビクトリーグラウンド29
      松月外弁淡紅色、内中心白色八重、20〜30枚、4cm前後、弁先2〜3の切れ目4月中旬花がやや先行淡緑色大木性、開帳形傘状枝、太枝第一駐車場3
      菊桜濃紅色で中心は赤菊咲き、120枚前後、3.5〜4cm4月下旬葉が先行緑褐色中木性、直立斜上枝形ワールドホール東2
      菊枝垂淡紅色、蕾は濃紅色千重、90枚前後、3cm、細弁菊咲き4月中・下旬葉が先行淡緑色小木性、枝垂れ形、樹性はやや弱いミルキーウエイ1
      上匂白色一重丸弁、5枚、4cm4月上旬花が先行帯褐色中木性、太枝は横に曲がる中央ロータリー3
      御衣黄淡黄緑色地に緑絞り赤条線八重、15枚前後、3.5cm、ねじれ弁4月中・下旬葉がやや先行淡褐色中木性、直立斜上形ミルキーウエイ1
      染井吉野淡々紅色一重、5枚、3〜3.5cm4月上旬花が先行緑色大木性、直立斜上開張形校内全般456
      16種 計583本

      sakura11
      大島桜
      sakura12
      山桜
      sakura13
      彼岸枝垂
      sakura14
      彼岸紅枝垂
      sakura15
      八重紅枝垂
      sakura16
      関山
      sakura17
      松月
      sakura18
      上匂

    6. 桜まつり
    7.  桜保存会が一番楽しみにしているのが「桜まつり」です。発足して間もなく、創立者が随想「恩師と桜」を発表されました。そこでみんなで検討し、4月の第一日曜日に「桜まつり」を開くことにしました。
       毎年、卒業生も楽しみにして帰ってきます。桜の花(時には蕾の時もありますが)の下で、思い出の豚汁を食べながら、学園時代の苦労話やそれぞれの思い出を懐かしそうに語ります。そして近況報告をして、創立者に感謝しながら、また新たな出発の決意をして帰っていきます。
       それが発展して、現在の地域に開放して、全校あげての恒例の「桜まつり」になっています。


    8. 「学園のさくら」のアルバム
    9.  草創期の4月、創立者が桜の満開の時に来校されたことがあります。それ以来、いつも「交野の桜は今年もきれいだろうな」と話されていたとお聞きしていました。そこで、毎年学園の桜の写真を撮って、アルバムにしてお届けしています。毎年ごらんいただき、様々なご伝言をいただいています。

      sakura01
      校門より「紳士の道」を望む
      sakura02
      正面玄関ロータリー
      sakura03
      「勇者の獅子」像と桜
      sakura04
      「平和の鐘」と桜
      sakura05
      「山辺の道」
      sakura06
      「桜源郷」

    10. 農園の作業
    11.  これまでにあげた作業の他に、農園の作業があります。桜の生長は1年単位では目に見えません。作業の合間を利用して、農作物(サツマイモ、ダイコン、ニンジン、トマト、キュウリ等)を栽培しました。
       当時の農園もビクトリーグラウンドに変わり、今は「桜源郷」の下に移って規模も小さくなりましたが、そこで季節の野菜を育てます。
       土を耕し、作物を植え、その生長を実感しながら、自然の恵みや自然との共生を学んでいきます。桜の作業の後、収穫した野菜で豚汁、焼き芋等にしてみんなでいただきます。交野の街を望む桜源郷で、自分たちで作った新鮮なものを食べるのは格別です。


  7. おわりに
  8.  創立者は、2003年4月の「入学式」のスピーチの中で、関西校の桜保存会の話をしてくださいました。その年、保存会のメンバーの中から8人がSUA(アメリカ創価大学)に合格したことを称えてくださいました。
     保存会の中には、いろいろな生徒がいます。“勉強があまり得意ではないけれども、自然は好き”とか、人と話をするのはあまり好きじゃないけれども、桜の仕事をするのは好き"勉強が忙しくてクラブをやる時間がないけれども、保存会だったらやれるかもしれない"等々。創立者は、自然環境に興味を持ち、創立者が作られた保存会に心を寄せてくれたことをとても喜ばれ、すばらしい人間教育だと言ってくださいました。
     2002年(平成14年)からの中学校の総合学習でも、桜の知識を一緒に学びながら本校の豊かな自然を生徒たちに知ってもらいたいと思い、「自然に親しもう」というタイトルで行っています。
     最近の子供たちの、自然とのふれ合いのない生活、意識の希薄さには驚かされます。保存会設立より満28年を経て、桜の木も驚くほど大きくなりました。学園の歴史と、ここで育っていった卒業生の世界を舞台にした活躍が、重なって見えます。これからも人材育成とともに、桜を守っていきたいと思います。

    以上

Bar

Home Back