INSTITUTE of NATURAL SCIENCE and EDUCATION in SOKA SCHOOL SYSTEM

野鳥・自然環境研究所報告

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第4巻第4号 (通巻第16号)

2005年2月26日 発行


別海フィールドにおける巣箱かけを中心とした環境教育の実践

関西創価高等学校 理科 久米 宗男(研究員)


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  1. はじめに
  2.  今回は、創価学園 野鳥・自然環境研究所 別海フィールド(北海道野付郡別海町)で2001年より毎年夏休みに行われている未来部サマーセミナーでの野鳥の巣箱かけと、昨年はじめて行ったドングリの苗木の植樹の様子を紹介します。
     なお、本稿の作成に当たっては、関西創価小学校津瀧丈史教諭・小野里聡教諭、東京創価小学校半杭克巳教諭・栗林誠教諭(いずれも、巣箱作成時の野鳥・自然環境研究所研究員)並びに地元の別海高校松浦賢一教諭(創価大学自然環境研究センター客員研究員)らに資料の提供など、多大なご協力をいただいたことを感謝します。


  3. 巣箱について
  4.  野鳥保護というとすぐに巣箱が思い出されるように一般にも広まり、「愛鳥週間」の恒例行事にもなっています。確かに巣箱を作ってかけることはだれもが手軽に実施でき、成果が具体的にわかること、野鳥観察や調査・研究がしやすくなるなどの利点がありますが、巣箱かけにあたっては注意しなくてはならないことがあります。それは、巣箱を利用する野鳥が、スズメ、ムクドリ、シジュウカラ、ヒガラ、ヤマガラ、ゴジュウカラ、ムクドリなど樹洞性のものに限られているため、特定の種をふやすことには役立っても、そのためにかえって生態系全体のバランスをくずすことが考えられるからです。
     野鳥の巣箱かけは、ツバメ用の巣台や巣材を束ねた巣ポケット設置、藪で巣を作る野鳥のための枝の剪定あるいは餌台や水場(バードバス)の設置などとともに、野鳥の生息環境整備の一環として位置づけたうえで、野鳥保護を考える教材の一つとして利用していきたいものです。
    写真1 巣箱の製作例
    (図1の設計図のもの)
    写真1
     巣箱の形や大きさは、利用する野鳥によって様々なタイプがありますが、一般的には表1に示した大きさのものがよく利用されています。この中で最も大事なのは、出入口の穴の大きさを野鳥の種類に合わせることです。たとえば、穴の直径が2.8cmではシジュウカラがよく営巣しますが、3.0cmになるとスズメがシジュウカラを追い出してしまいます。さらに、5.5cmのムクドリ用のものでは、シジュウカラやスズメが営巣しても、卵をムクドリにくわえ出されたりしてしまいます。また、雨水が入らないようにすると同時に、底板に水ぬき穴をあけておくことも大事です。比較的簡単に製作できるスズメやシジュウカラ用の巣箱としては、写真1・図1のようなものがあります。

    表1 主な野鳥の巣箱の大きさ (単位:cm)
    野鳥の種類穴の直径底面から穴
    までの高さ
     高さ   幅   奥行 
    ヒ ガ ラ2.71520〜241515
    シジュウカラ2.81520〜241515
    ヤ マ ガ ラ2.81520〜241515
    ス ズ メ3.21824〜281818
    ム ク ド リ5.51824〜281818
    *唐沢 孝一 1973、BIRDER 2004などをもとに作成


    図1 スズメ・シジュウカラ用巣箱の設計図
    (庭に小鳥を 1977 より)
    図1


  5. シマフクロウの巣箱かけ
  6. 写真2 シマフクロウの巣箱かけ
    (2000年12月6日)
    写真2
     1988年12月上旬、創価学園 野鳥・自然環境研究所の希少鳥類の保護活動の一環として、別海フィールドに、絶滅危惧IA類(CR)−ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種−に指定されているシマフクロウの巣箱を2個、エゾフクロウ用の巣箱を2個設置しました。シマフクロウの巣箱利用の痕跡や観察はまだ得られていませんが、1998年8月にはエゾフクロウを観察することができ、少なからず効果があることが確認できました。
     その後、巣箱が老朽化したのに伴い、2000年12月と2001年12月にそれぞれ1個ずつ、シマフクロウ用巣箱のかけ替えを行いました(写真2)。

  7. 2000年度 野鳥・自然環境研究所冬季全体会議
  8.  2000年12月下旬、本研究所冬季全体会議が下記のような内容で行われました。
    1. 活動報告−研究所ホームページの開設、関西創価学園のアースカム参加報告、別海フィールドでのシマフクロウ用巣箱のかけ替え など
    2. 検討事項−研究所ロゴマークの作成、フィールド紹介パンフレットの作成、各フィールドの調査計画、創価大学との合同調査、別海フィールドでのドングリ拾いとポット栽培による苗木の植林計画 など
     出席者の関西創価小学校の津瀧教諭(当時、研究所研究員)からは、環境教育を推進するうえで、同小学校で行っている総合学習の時間である「創価タイム」を利用し、シマフクロウやエゾフクロウの巣箱かけを通して鳥類保護、自然保護に関心を持たせる環境教育に取り組んでみたいという提案がありました。また、ドングリ(主にミズナラ類の堅果)の植林計画や研究所のロゴマークの募集についても、関西創価小学校で積極的に取り組んでいきたいとの申し出がありました。


  9. 関西創価小学校での巣箱製作の取り組み
  10.  翌年(2001年)、関西創価小学校4年生3学期の創価タイムの実践として、「フクロウの巣箱をつくろう」が始まりました(写真3)。授業では、インターネットを活用した鳥類保護・自然保護の学習、壁新聞の作成等に取り組むと同時に、同学年児童全員の手作りで巣箱を製作しました。児童が作った「野鳥新聞」(壁新聞)の出来栄えもよく、これらの学習を通して、自然保護・野鳥保護への理解が十分に進んだことがうかがわれました。
     「フクロウの巣箱をつくろう」ということで始めましたが、フクロウ用巣箱では児童が作るには大きすぎることなどから、最終的にはシジュウカラ用巣箱の製作になりました。ノコギリや金槌を使ったことがない児童相手の作業は大変だったようですが、表面に思い思いの彫刻をほどこしたり、木の枝で飾り付けをしたりして、同じ設計図のものとは思えない大変個性豊かな巣箱ができあがりました。
     また、「ドングリの植林計画」についても検討され、秋に別海で拾ったドングリを送っていただき、それをポットに植え、学年を引き継ぎながら2〜3年育てて苗木にする案を考えて下さいました。

    表2 関西創価小学校4年生3学期創価タイム 「フクロウの巣箱をつくろう」 指導案
    単 元時間備 考
    野鳥・自然環境研究所の説明1時間学年での全体指導
    ビデオによる野鳥学習1時間学年での全体指導
    児童一人ひとりが野鳥・自然環境研究所のHPをインターネットで見る1時間 
    野鳥・自然環境研究所のHPからすきな写真画像をプリントアウト1時間 
    図書館、インターネットから野鳥新聞の資料探し2時間 
    野鳥新聞作成2時間 
    野鳥の巣箱設計図作り1時間各班1個(8×3班)
    野鳥の巣箱を作ろう4時間*
    *150mm×1200mm×14mmの板を利用し、高さ250mm、幅178mm、奥行き150mmの巣箱を製作

    写真3 関西創価小学校での巣箱の製作
    写真3 写真4 写真5

     フクロウ用からシジュウカラ用の巣箱に変わったあたりから、できあがった巣箱をどこにかけるかが話題となりました。普通でしたら、作った児童たちがいる関西創価小学校の敷地内にかけるのですが、シマフクロウの巣箱かけの学習から始まったこともあり、児童たちからはシマフクロウのいる別海にかけたいという希望が強くありました。そこで、地元の創価学会未来部(小・中学生、高校生がメンバー)と連絡を取り、夏休みに行う予定の同地域未来部サマーセミナーの行事に、巣箱かけを入れていただくことにしました。 児童たちは巣箱をかけてくれる北海道の未来部員たちに、野鳥保護の夢を託す手紙を全員で書き、巣箱に同封しました。そして、巣箱をかけた北海道の子どもたちから返事が届き、そこから新しい交流の芽がふくらむことを期待しています。


  11. 別海での巣箱かけ
  12.  2001年8月上旬に行われた、第3回「創価学会道東池田圏未来部サマーセミナー in 別海」には、未来部員14名を含め全部で43名の人々が参加しました。そして、野鳥保護や巣箱かけの意義などを学習した後、広大な別海フィールドに散在する樹木に、関西創価小学校の児童が作った23個の巣箱をかける作業を行いました(写真4)。午後からは、創価大学の北野日出男教授によるセミナー「虫はみんなの友だち・環境教育の視点から」や広いフィールド内を回る「自然探検セミナー」も行われました。
     実際に巣箱かけを行ってみると、北海道の子どもといっても意外と自然体験が少ないことが分かりました。木に登ったことのない子が多く、はしごに登るのもこわごわの様子でした。また、巣箱を取り付けるひもを固く結ぶこともなかなかできませんでした。それでも、自分の足で木に登り、自分の手で巣箱を取りつけられたことを、大変喜んでくれました。また、林内にあまり入らずに道路近くの樹木に取り付けたので、彼らが再度別海フィールドを訪れた際に、野鳥が巣箱を利用しているかどうか、確認する楽しみも増えたと思います。

    写真4 未来部サマーセミナーでの巣箱かけ (2001年8月)
    写真6 写真7 写真8

    野鳥の繁殖期にあたる2002年5月、未来部サマーセミナー担当者の松浦氏(別海高校教諭)らが現地調査を行った結果、2個の巣箱をゴジュウカラが利用しているのが確認されました(写真5 左と中の写真)。また、落下していた1個の巣箱にも利用の痕跡が見られました(同 右の写真)。この数は少ないようですが、短時間の観察での23巣中2例の観察例であり、巣箱かけは成功したと言っても良いと思います。

    写真5 ゴジュウカラの巣箱利用 (2002年5月13日)
    写真9 写真10 写真11

     「フクロウの巣箱をつくろう」で始まった巣箱作りでしたので、出入り口の穴を含めやや大きめの巣箱となりました(穴の大きさは問題なので、小さい穴を開けた板を内側から貼り付けて対応しましたが、板が削られ穴が大きくなっていました)。そのため、体の大きなゴジュウカラが利用したものと思われますが、過去の創価学園サマーセミナーでの巣箱かけでも、ゴジュウカラの利用が確認されています。


  13. 2年目以降の取り組み
  14.  翌2002年も別海フィールドで第4回「サマーセミナー in 別海」が7月下旬に行われることになり、巣箱かけの作業が計画されました。前年の巣箱製作は関西創価小学校の児童が作ったので、今回は東京創価小学校の児童が作ってくれることになりました。作り始めたのが遅かったにもかかわらず、児童たちは慣れない作業に熱心に取り組んでくれ、12個の巣箱が完成しました。これらと、ヒモが古くなって脱落した昨年の巣箱7個を加えた合計19個を、地元の未来部員たちが3グループに分かれ、真心込めて牧口・戸田森林公園内の樹木に取り付けてくれました。また、創価教育・自然環境セミナーや自然観察・自然探検セミナーも行われ、参加した未来部員など160名の参加者は、有意義な一日を過ごすことができました。
     2003年は、2001年と2002年にかけた巣箱の脱落したものから状態の良いものを12個選び、掃除して再利用しました。また、2004年は再び関西創価小学校に巣箱製作をお願いし、14個の巣箱をかけました。

     巣箱かけに参加した未来部員の感想をいくつか紹介します。

     私は、このサマーセミナーに参加できたこと良かったと思います。まず、朝にこの別海に来ました。初めは、鳥の巣箱を取りつけました。この巣箱は、関西創価小学校の子たちが作ってくれたものです。すべて木で作られたもので、かわいい模様で作られていたものを私たちが取りつけました。とてもやさしい先生がつけ方を教えてくれました。私もつけてみました。「どんな鳥が来てくれるんだろう」と、わくわくしながらやっていました。お昼を食べた後には、「虫」についての講座、「ゴキブリはきれいずきなんだ」とかおもしろいお話、「虫」のイメージが変わった気がします。講座が終わった後は、別海フィールドのまわりを、巣箱の時の先生と、「虫」のことについてお話をして下さった先生とで見てまわりました。短い時間でしたが、桜の木、クモをさわったり、小さな経験だったけどいろんな花を見れたりと、自然に対する姿勢が変わったと思います。そして、もっともっと、山やいろんな所に行ってみたい。いろんな先生の話をもっと聞きたいと思います。これからも、この好奇心を伸ばしていきたいです。
    (2001年・中3女子)

     巣箱(関西創価小の小学生が作ってくれた)を木に取り付けたのが、なかなか楽しかった。ちゃんと鳥が巣を作ってくれるのか?と少し不安ナリ。ドキドキ。創大教授北野先生の「虫はみんなの友だち」のお話はとても興味深い内容だった。あまり虫は好きではないけれど、青虫に卵を生む蜂とか、自然界はすごいことが色々あるんだなと思った。ゴキブリも本物を見たことがないから、見てみたい。来て良かったと思う。

    (2001年・高3女子)

     僕は初めて巣箱かけを体験してみて、巣箱を木に取りつける作業がとても大変でした。脚立の上で木に麻ひもをしっかりとくくりつけるとバランスがとれず、何回か脚立の上から落ちそうになりました。とてもこわかったです。だから、巣箱かけが終わった後はとても安心しました。今回のサマーセミナーで、自然と触れ合うことができて、とても良かったです。

    (2003年・中2男子)

     今年で6回目ということでしたが、ぼくが参加するのは始めてで、「何をするんだろう」と不安や期待にかられながらいきました。友達も連れてこなく、一人でいた僕が最後に振り返ってみて最も印象に残り、楽しかったのが、「鳥の巣箱かけ」でした。この作業に使う巣箱はもう作られていて、ぼくたちの作業はその巣箱の後ろに、しばるためのひもをとおすのと、木にかける仕事でした。ひもをかけるのは簡単でしたが、問題は、その巣箱を木にかける仕事でした。最初は木に登るのも大変でしたが、だんだん慣れてきて、担当の人にも手伝ってもらいながら、なんとか立派な巣箱をかけることができました。今回、僕は自然とふれあう体験ができてとても良かったとおもいます。また、その巣箱に鳥がはいってくれたら、なおさらうれしいので、巣箱に鳥がはいってくれればいいと思います。

    (2003年・中2男子)


  15. ドングリの苗木育て
  16. 写真6 ドングリ拾い
    (2001年11月23日、聖教新聞11/30付より)
    写真12
     「別海フィールドのミズナラを自分たちの手で育ててみたい」という東京・関西創価小学校の児童らの希望を受けて、2001年11月、地元の小学生を中心とした未来部員が別海フィールドでドングリ拾いを行いました(写真6)。
     参加したメンバーは、「とても楽しかった。毎年、続けていきたい」、「落ち葉の中を探してドングリを見つけた時はうれしかった。大きく育ててください」などの感想を語り、巣箱やドングリを通しての東西の創価小学校児童との交流を喜んでくれました。このドングリ拾いは、毎年秋の恒例行事として続けて下さっています。
     また、ドングリ拾いをサポートするために、地元の大人のメンバーが「どんぐり・ネット 北海道」という団体を作られ、2003年11月には根室森づくりセンター主査の菅崎治宏さんを講師に「どんぐりの森をつくろう!」との題で第1回の研修会を行いました(写真7)。ドングリの種類や育て方などを学習し、自分たちが拾ったドングリをポットに植えたりしました。そして、今後は地元でもポット苗を生育し、将来のミズナラ類の植林計画に備えることになりました。
    写真7 「どんぐり・ネット 北海道」研修会 (2003年11月26日)
    写真12 写真13

     東京・関西創価小学校では、毎年秋に送られたドングリのうち、虫に食われたものを取り除き、ポットに植えて大事に育てましたが、発芽率はあまり高くなく、特に関西創価小学校では十分に生育しませんでした。原因ははっきり分かりませんが、大阪の夏の気温と湿度が、冷涼な別海の気候と比べて高すぎるためではないかと考えています。
     東京創価小学校で育てたミズナラは何本かが大きく生育したので、何年生の苗木が移植に適しているかの試験も兼ね、育てた苗木を別海フィールド内に仮植えすることになりました。2001年秋に植えた3年生苗(高さ50cm程度)を5本、その後の2年生苗(同30cm程度)12本、1年生苗(同10cm程度)15本、合計32本を、2004年7月の第6回「サマーセミナー in 別海」の際に記念植樹しました。(写真8)

    写真8 ドングリの苗木の記念植樹 (2004年7月30日)
    写真14 写真15

     今後もドングリの発芽率向上やポット苗の上手な育て方を工夫し、北海道と東京・関西の子どもたちのネットワークによるミズナラの森林作りを進めていきたいと思っています。


  17. 参考文献
  18. 唐沢 孝一、1973、グリーンブックス4 野鳥の観察と調査、ニュー・サイエンス社
    文一総合出版、2004、特集「巣箱と野鳥」、BIRDER Vol.8 No.11
    山階 芳麿、1977、庭に小鳥を、(財)日本鳥類保護連盟

    以上


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