INSTITUTE of NATURAL SCIENCE and EDUCATION in SOKA SCHOOL SYSTEM

野鳥・自然環境研究所報告

title.gif

第4巻第3号 (通巻第15号)

2004年11月3日 発行


生命の尊さを学ぶ

---- カイコの飼育と観察「カイコとの対話」記録より ----

東京創価小学校 環境部会


Bar


  1. テーマ設定の理由
  2.  本校では3・4年生の総合的な学習を「環境」とし、「しぜん」と「くらし」の領域として取り組んでいる。とりわけ「しぜん」の分野にあっては、栽培活動をしたり、身近な自然に触れたり、動植物を育てたり、本物を手に取り観察するなどの活動を通して、「生きものを慈しむ心」「生命の尊さに思いをはせ豊かな感性を育みたい」と願ってきた。
     カイコの飼育・観察については、理科分野が本校発足当初から取り入れてきた学習課題の一つである。対象学年は、3年生である。例年、児童らはカイコを飼育し、成長の過程や変化を細かく記録してきたが、この方法だと「ボクとカイコ」の域に留まり、「生命の尊さ」や「慈しみの心」を伸長させようとする課題を満足し切れていない。「ボクのカイコ」として、命ある物の仲間としての一体感の中で飼育観察ができないものかと話し合った。このような意図を持って観察用紙「カイコとの対話」など工夫した。

    photo1  photo2

    楽しい授業(カイコの飼育と観察)


  3. 「生命」についての児童の意識
  4.  児童は、「生命」についての認識はいつ頃で、どのように感じているかについてアンケート調査をしてみた。中学年の頃をある程度客観視できる5年生(120名)を対象にした。
    質問内容と結果については、大要次の通りである。
    質問(1) 生命いのちについて考えたのは、何年生(何歳)頃でしたか。
    質問(2) それはどのようなことですか。
    質問(3) 考えたきっかけとなったことがあったら書いて下さい。
     結果は、質問(1)では幼稚園の頃が10名、1年生の頃が21名、2年生の頃が24名、3年生の頃が29名、4年生の頃が20名、5年生の頃が16名。児童が生命に目を向け、命を意識する年齢にはかなりのばらつきがある。(2)の問いについての解答項目数は、幼稚園が5項目、1年生が4項目、2年生が永遠の眠りって何だろうなど8項目、3年生が人はなぜ自殺するんだろうなど11項目、4年生がどうして自分は生きているのかなど4項目、5年生が銃犯罪などで人は死ぬなど3項目。質問(3)の考えるきっかけとなったことでは、家族の中での弟妹の誕生、祖父母の死、交通事故や病気の体験、可愛がっていた動物や昆虫の死などが主な理由である。テレビや読書の影響も見逃せない。日常的に接している立場からも生命を意識する学年は2・3年生の頃からといってよいだろう。
     この調査結果は、小学校の低・中学年の頃に、命あるものを育てる経験が極めて大切なこと。また、人間は何のために生まれてくるのか、なぜ死ぬのか、死んだらどうなるのかといった根本命題にも関心があることも浮き彫りにした。身近な生きものを育て、生命の不思議さや成長の過程や変化を知り、生命ある物を慈しむ心が芽生え、ひいては自らの生き方に思いをはせることにつながるのではないかとの手応えも得られた。


  5. 「カイコ」についての児童の認識と意識
  6.  「カイコの飼育と観察」の対象学年3年生・117人の児童の実態は以下の通りで、想像以上に「カイコ」に対する期待感は大きいといえる。
    (1)カイコを知っていますか?
     知っている(カイコをテレビや本などで見たことがあるものも含む)が94名、知らないが23名。
    (2)これからカイコを育てていきます。どんな気持ちですか?
     ドキドキ、ワクワク、ウキウキ、楽しそうなど積極的が98名、虫は好きじゃない、気持ち悪い、育てたくないなど否定的が11名、残りの8名が不安、心配、できるかななど中間的な反応を示した。
     児童の実態については、94名のうち91名が実際にカイコを知っている、見ている児童たちである。知っている内容は、カイコが繭を作ること、糸を吐くこと、蛾になることなどである。カイコの飼育と観察についての期待感は大きい。これは、開校以来取り組んできた結果といえよう。


  7. 私たちの実践「カイコの飼育と観察」 --- カイコとの対話から ---
  8. photo3
    1令幼虫(毛子)
    photo4
    幼虫の観察
    photo5
    photo6
    うちわ作り
    photo7
    たくさん蛹になりました

  9. 観察記録「カイコとの対話」
  10. graph1 graph2
    graph3 graph4
    graph5 graph6
    graph7 graph8


  11. まとめと今後の課題
  12.  本校が過去26年間継続してきたカイコの飼育と観察は、昆虫の学習としては、十分な成果があったと思う。しかし、今日までの学習を積み重ねてきて、振り返ったときに、カイコの体の仕組みや成長の様子を理解し、飼育の体験をできるものの、もう一歩生命ある物に対する慈しみの心は育っているかと自問したら、何か物足りなさを感じた。そこで今回のように工夫したのが「カイコとの対話」を取り入れた観察・記録であった。事柄の学習や知的な観察だけではなく、五感を使う学習によって生命の尊さに気づかせたいと考えた。今後の継続と工夫がさらに求められる。
     5年生のアンケートからも分かるように、児童が生命について考えた時期は、中学年といってよい。しかもストレートに感情移入ができるのは4年生までのように思う。
    そう考えると、生命の大切さを学ぶ時期は、3年生〜4年生時代が適切ではないだろうか。この時期にこそ生きものとふれあいの心を通わせる体験学習は、子供たちの心に生命を慈しむ豊かな感性を培うことになるだろう。
     先に述べたように、本校の取り組む中学年の環境科の学習には、武蔵野という自然環境そのものの存在と体育館横の「おとぎの森(雑木林)」、「玉川上水とその緑道」などが隣接している。全校の児童が喜々として取り組むサツマイモの植え付けと雑草取りから収穫まで各学年が参加する農園もある。低学年、中学年、そして高学年へとなにをどうするかをさらに検討し続けたいと思う。


    追記 「カイコの飼育と観察」の導入については、元飯田女子短期大学の斉藤貞美先生の変わらぬご厚情と指導を仰ぎながら、開校当初から今日まで26年も継続しています。毎年、4月も終わろうとする頃、斉藤先生からカイコの卵が届きます。特別に工夫された茶封筒に、400〜500個の卵が入っています。約1个曚匹領海任后
     「5月の連休明けにふ化するように調整してあります」と丁寧なお手紙も添えてあります。早速シャーレに移し替え、教材室に保管します。すると、予定通りに5月の連休明けの8日頃には、真っ黒な1令幼虫の毛子が生まれます。丁度そのころ、校庭や農園の桑の木はふくらんで芽がはじけ、黄緑色の柔らかい葉っぱが伸び始めます。班ごとに飼育箱を用意し、当番を決め世話をします。卵→幼虫→さなぎ→まゆ→成虫(カイコガ)と育っていく様子を記録し、一生を観察して終了します。カイコの成長に合わせるように、児童らのいきいきと取り組む姿が 今でも忘れられません。
    (元東京創価小学校教諭 米沢信明談)

    以上

Bar

Home Back